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第20話 神獣たちのお昼寝タイム

 グリフォンとの空の散歩を楽しんだ、数日後の午後。

 その日は風もなく、空はどこまでも青く澄み渡っていた。

 柔らかな日差しがサンクチュアリの全てを優しく包み込んでいる。

 まさにお昼寝日和、というやつだ。


 私はコテージの近くにある大きな樫の木の下に、敷物を広げていた。

 木陰が涼しくて気持ちがいい。

 新しいお菓子のレシピ本でもゆっくりと読もうと思ったのだ。

 だが私の計画はすぐに、可愛らしい訪問者たちによって中断されることになった。


 最初にやってきたのは先日、パン食い競争を繰り広げた銀色の子狐たちだった。

 彼らは私がお菓子を持っていないことを確認すると、少しがっかりしたような顔をした。

 だがすぐに気を取り直したらしい。

 一匹が私の膝の上にちょこんと頭を乗せてきたのだ。

 そしてそのまま、すうすうと気持ちよさそうな寝息を立て始める。


(……ええと?)


 私が戸惑っていると他の子狐たちも次から次へと私の周りに集まってきた。

 私の足に寄りかかる子。

 私の背中にもたれかかる子。

 あっという間に私はふわふわの銀色の毛玉たちに包囲されてしまった。


 ◇     ◇     ◇


 だがそれはまだ始まりに過ぎなかった。

 子狐たちの安心しきった寝息が他の神獣たちを呼び寄せたらしい。


 翼の生えた子猫のような聖獣が、私の肩にふわりと舞い降りて丸くなる。

 宝石のような鱗を持つ小さなトカゲが、私の広げた本のページの上で日向ぼっこを始めた。

 そして極めつけは聖狼フェンリルだ。

 彼は私の背後にどすんと巨大な体を横たえると、私を背もたれ代わりにして目を閉じてしまった。


 気がつけば私は四方八方を温かくて柔らかい、もふもふの毛皮に完全に囲まれていた。

 右も左も前も後ろも、もふもふ。

 もふもふのハーレム状態だ。


 神獣たちの穏やかで規則正しい寝息が、心地よい子守唄のように耳に響く。

 彼らの体温がじんわりと私に伝わってくる。

 なんて幸せなのだろう。

 これ以上の贅沢がこの世にあるとは思えない。


 もはや本を読むどころではなかった。

 私もこの究極の癒やしの空間に身を委ねることにした。

 背中にはフェンリルの頼もしい体温。

 膝には子狐たちの愛らしい重み。


 私もいつの間にか、うとうとと微睡み始めていた。

 意識が遠のいていく。

 夢と現実の狭間で。

 私は自分がこの楽園の本当の一部になれたような気がした。


 遠くでフィオナさんとエレノア様の話し声が聞こえる。


「あらあら、リリアったら。すっかり神獣たちの、お気に入りの、お昼寝クッションになってしまいましたね」

「はっ。あいつら、一番気持ちのいい場所をよく知ってやがるぜ」


 二人の楽しそうな笑い声を聞きながら。

 私は幸せな温かい眠りへと落ちていった。

 私の周りにはたくさんの愛おしい寝息。

 この平和な午後がいつまでも、いつまでも続けばいい。

 そう心から願いながら。

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