ドラゴンの里、突入大配達
「――というわけで、若き配達人よ。わしの親戚に、この手紙を届けてくれんかね?」
ドラルド=ドラゴニクス三世は、紅茶を啜りながら言った。
「ドラゴンの里って、あの、火山地帯の空飛ぶ島にある……?」
「そうじゃ。火山が三つ、毒ガス地帯を越えた先の、雷雲の上じゃ」
「……やめようよ、普通に郵便のルートとして詰んでるって」
「いや、これはあくまで配達なのじゃ。冒険ではない」
「いやいや、どう見ても冒険だよ!?」
翌日。
カズトは空飛ぶ巨大トカゲの背に乗っていた。
「うー……なんで僕が空を飛んでるの……?」
「特別に、飛行トカゲ『メイルくん』を貸し出そう。空便専用じゃ」
ドラルドの飼っている(?)郵便用飛行生物だ。尻尾に鈴がついていて、飛ぶたびにチリンチリンと鳴る。
「なんか……可愛いじゃん、メイルくん……」
「チリン(照れ)」
火山地帯は、熱かった。
「く、くっそあつい……これもう配達じゃなくて修行じゃん……!」
汗だくになりながら、カズトは背中の郵便カバンを抱え直す。
「でも、ここを越えなきゃドラゴンの里には行けない……!」
メイルくんがチリンと鳴いて、さらに高く飛んだ。
次に現れたのは、雷雲地帯だった。
「あっぶね!? 雷近ッ!!」
「チリィィィィン!!(スレスレ)」
「メイルくん、絶対避けたよね!? 回避性能高すぎでは!?」
空を駆け、風を切りながら、カズトは一歩一歩、目的地へ近づいていく。
そしてついに――
ドラゴンの里・ドラヴァニア高地。
石造りの荘厳な街並み、飛び交うドラゴンたち、そして驚きの表情のドラゴン親戚たち。
「……郵便配達人?」
「まさか、ドラルド様の知人か……?」
「おお、懐かしき文の香り……これは間違いなく、あの紅茶好きのドラルドの字だ!」
「紅茶好きって呼ばれてるの、あの人……」
手紙を渡すと、ドラゴンたちの間に、ゆっくりと笑顔が広がっていく。
「手紙って……温かいな」
「こうして人間がわざわざ届けに来るとは……感謝しよう」
そしてドラヴァニアの長老が、静かにカズトに頭を下げた。
「そなたは風の使い……。我らの時代では、そういう者を英雄と呼んだものじゃ」
「え、いや僕、ただの郵便配達人なんで……」
「それでよい。それがよい」
配達を終えて帰り道。
カズトはメイルくんにまたがりながら、呟いた。
「なんかさ。配達って、ただ物を運ぶだけじゃないんだよな……」
メイルくんが優しくチリンと鳴いた。
ソリオ村に帰ると、ドラルドがいつものように紅茶を淹れて待っていた。
「無事に届けてくれて、礼を言う。彼らもとても喜んでおったぞ」
「うん、こっちこそ、なんかいい経験になったよ」
カズトは手帳を開き、今日の配達記録に「ドラゴンの里・成功」と記した。
そして一言、呟く。
「配達って、やっぱり……ロマンだな」
背後でトゴロが感動して叫んだ。
「隊長ぉ! 配達はやっぱりロマンっすよねぇぇ!」
「いや、君は隊員でしょ……」
「そこはノリでいいじゃないですかァ!」
村の空に、また今日も郵便局の鈴の音が響いた。
⚫︎ 郵便局日報(抜粋)
・新ルート「空便:ドラゴンの里」開通!
・郵便用トカゲ「メイルくん」、村のアイドルに
・カズト、空飛ぶ冒険で地元の子どもから尊敬を集める(※リゼはツンデレ中)




