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11/12

明日も、届けにいくよ

朝日がソリオ村を優しく照らしていた。


木々の間を抜ける光が、まだ少し眠たい村を起こしていく。

カズトは、いつものように郵便所の扉を開けた。


「さて、今日も配達だ」


それだけで、村が少し動き出す。

鶏が鳴き、パンの匂いが漂い、村人の声がちらほら聞こえてくる。


今日という日が始まったのだ。




「おはよう、兄貴! 今日の配達先、もう地図に印しておいたっす!」


元盗賊団リーダー・トゴロ、今では立派(?)な見習い配達人。

今日も全力で朝から騒がしい。


「ありがと。じゃ、分担しよう。山側は任せた」


「了解っす! 配達こそ、男のロマン!」


「それ、まだ言うんだ……」




郵便所には、新しい仲間も増えていた。


かつての盗賊団の数人が、「郵便って面白そう」と残り、雑務や仕分け、配達補佐を担当。

元倉庫だった建物も少し改装され、カウンターができ、掲示板には手紙イベントの案内が並ぶ。


「今月の『手紙の日』は、テーマが、ありがとうだってさ」


「あたし、おばあちゃんに書こうかな」


子どもたちが楽しげに話す声。

それを聞いて、カズトはほほ笑む。


――この村で、何かが少しずつ、確かに変わってきた。




ドラルド=ドラゴニクス三世からは、新たな定期配達依頼。


「この間の紅茶、実に良かった。次はバタークッキーの詰め合わせをお願いできるかな?」


それが、ドラゴンのセリフとは思えないほどの優雅さ。


「毎週この山登るの、さすがにキツいんだけど……」


そうぼやきつつも、カズトは結局、来週の配達予定にしっかり記入していた。




陶芸家として隠居中の元魔王・ラミリスからは、毎月のように新作の陶芸カタログが届く。


「そろそろ郵便所に『壺コーナー』を設けたまえ」


「断るよ」


そんなやりとりも、すっかり日常だ。




夕方。仕事を終えたカズトが郵便所に戻ると、ひとつ、封筒がポストに入っていた。


差出人は――リゼ。


「……また恋文の誤配?」


封を開けると、中にはシンプルな文字が並んでいた。




「ずっと、そばにいてくれたら、嬉しい」




それだけの、短い手紙。


でも、読み終えたあと、カズトはしばらくその場から動けなかった。




その夜。星空の下、リゼの家の前。


「……手紙、届いたよ」


「うん。遅配してない?」


「ばっちり。ちょっと照れくさかったけど」


リゼは目をそらして、小さく言った。


「ねぇ、カズト。これからも、毎日――ただいまって、言ってくれる?」


カズトは少し驚いたように目を見開き、

そして、照れくさそうに笑った。


「……うん。行ってきますの後には、ちゃんと、ただいまって言うよ」


「そ、そっか。なら、いい」


月明かりの下、ふたりの影が重なっていた。




次の日。


カズトはいつものように、カバンを背負い、帽子をかぶる。


「じゃ、行ってきます。約束の時間、守らないとね」


――今日も彼は手紙を届ける。


人と人を、村と世界を、

少しずつ、ゆっくりと、つないでいく。


スローライフで、ちょっと騒がしい、

けれど温かい毎日が、これからも続いていくのだ。




【おわりに】


郵便配達は、ただの仕事じゃない。

それは「想いを運ぶ」こと。

届けるたびに、何かが始まり、誰かとつながっていく。


――そしてその真ん中には、いつも、彼がいた。


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