繰り返される卒業式
卒業証書を手に校門を出る。
出たのに……俺の前には新入生を歓迎する垂れ幕が掲げられた、中高一貫校の校舎があった。
何度卒業しても校門を出ると新入生として学校に戻って来るんだ。
此れは現実なのか? それとも夢? どれだけ考えても答えは出ない。
中高一貫校の校舎の前で悩んでいる男だけでは無かった。
数万の老若男女が卒業と入学式を繰り返していて同じように悩んでいる。
違うのは学校だけ、ある女性は女学校の卒業と入学式を繰り返し、ある男性は職業訓練学校の卒業と入学式を繰り返す。
大宇宙を数万年前に太陽系から出発した巨大な移民船が漂流している。
コンピューターの制御で航行していた巨大な移民船は、太陽系を出てから約500年経ち移民先の惑星まであと半分の道のりを残したところで遭難。
それから漂流を続けていた。
移民は積荷として冷凍睡眠装置内に寝かされている。
その移民たちは全て地球の下級市民でまともに教育を受けて無い者が殆どだった為に、冷凍睡眠装置内で眠る移民たちは皆、移民先の惑星で必要とされる知識や技術を夢として教育されていた。
その知識や技術を夢として見せていたプログラムを運営していたコンピューターが、数万年の漂流中に劣化して移民たちに同じ夢を繰り返し見せていたのだった。