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召喚

俺は伊藤史也(いとうふみや)、普通のサラリーマン。


歳は30を超え部下も複数人いる。


仕事も順調だ、子供は居ないなんなら妻もいないが俺は幸せだった。


そう。妻はいないが嫁はいる!!


そんな感じで隠れた趣味でゲームのキャラが嫁だったりするが普通の人間だ。


だがこんな俺が今目の前に広がる光景が信じられない。


知らない空が知らない建物が知らない自分がそこにいた。


そう、俺はこの状況を知識として知っている。



異世界転生いや異世界召喚である。



「ここは...どこだ...?」


近くにある建物の窓ガラスに映る自分の姿を見る


「俺は誰だ...?」


道行く人々は史也を見てどうしたのだろう?と少し気にかける程度で誰も声は掛けなかった。


そのうち史也は気が動転し何も考えず走り出した。


(なんなんだここは??さっきまでディスクに向かってたのに...なんだこの感じ...気持ち悪い感じがする。)


そして近くの人気のない裏路地へ入って、その気持ちの悪さから嗚咽し吐き出す。


「おえっ...っ!!」


膝を地につけ吐いていた


少し落ち着いた頃、突然顔を蹴り飛ばされた。


「ぐぁっ...」


突然のことで混乱していたが


「おい、てめぇ見ねぇ顔だなここに来るってことなんか用があるのか?」


そのガタイのいい大男を見て一瞬で冷静になり言葉を返す


「...こんな裏路地誰のでもないだろ。」


「なんだ、お前本当にここを知らねぇみたいだなここは裏豹のテリトリーだ。」


「裏豹?」


「あぁ、聞いて驚けエイデンの生き残りが創った新しい組織だ。」


「なんだそりゃ、厨二ごっこ丸出しで歳考えろよ!キツイなお前!」


見知らぬ言葉と先程蹴られた怒りで強い言葉を吐いた。


だが相手からしてみれば虚ろな目でキレる史也は弱いものにしか見えず、その呆れから魔法を放つ


「ふん、死ね雑魚が。」


氷の氷柱が自分に向けられて発射された。



魔法を知らない史也でもなにか危険と感じて体を思っきり捻って避けるがぐしゃぁと左腕を氷柱が思っきり刺さる。


「あ”ぁ”ぁ”ぁ”」


その突然の痛みに耐えきれず絶叫する。


「何だおめぇ、今にも死にそうな顔してたのに死ぬ気はねぇのか?」


(なんだこいつ...今何をしたんだ、いや、そんな事より左腕がっ!死ぬ程痛てぇ!!)


相手の言葉が耳に入らないくらいの痛みが腕を襲い地面でくるまるように自分の傷口を抑えながら痛みにもがいた。


そこに騒ぎを駆けつけ一人の人がやってきた。


「おいお前らここで何をやっている!!」


「っち」


黒豹と名乗るものは舌打ちをしてパッパと逃げてしまった。


「おい、待て!」


駆けつけてくれた人が逃げた相手を追いかけようとするが地面に転がる史也を見て、追うのをやめた。


「大丈夫か!?」


(警察かなんかか...やばい意識があっ...。)


「おい、返事しろ!」


その声は届かず意識は落ちていった。









史也は裏路地でエイデンの生き残りが作った黒豹というグループのメンバーに左腕を損傷させられたが王国騎士な1人が助けてくれた


そして今俺、史也いやこの名前を使うとなにか怪しまれそうな気がしたので偽名を使う事にした。


「知らない天井...はぁ」


「起きたか。」


「うおっ、びっくりした。いたのか」


「もちろん、怪我をした市民を放置するほど俺は落ちていない。」


「それで...」


「あぁ、俺の名前はカイ=トロイメアだ」


(助けてくれたこいつに嘘つくのは心苦しいが。)


「俺は王国騎士の1人テレル=レイエントだ。」


「それで、君はどこから来たんだい?」


(あー、確かに偽名を使ってもそういう問題はあるもんな。)


と少し考えながら自分の左腕を見る。


傷一つなく治ってる腕を見て少し怖くなるが、そこでひとつ思いついた。


「すまない、あの時俺は記憶を失って...名前しか覚えてないんだ。」


「なんだって!...やっぱりあいつを...くそ!」


(すまんな、正義感の強い男よ全然現実味の無い嘘を信じてくれて。)



「君、住む場所もないということだな!なら俺と一緒に住もう。いや、別にそういう趣味は無いんだが!無性に困ってる人がいると助けたくなるんだ」


「そうだな、俺は何も覚えてないここでこの提案を無下にしたら困るのは俺だ。」


「もちろん一緒に住む案は賛成するよ。だけどいいのか?お前みたいなイケメンが女とか居ないのか?」


「俺も女は欲しいが、仕事が忙しいからな出会いが無いというかなんかな、まぁそんな事はいいだろ今から行こう。」


「おう。」


(異世界に来て一番最初にやることが男と住むことだとは思わなかったよ。)


(てか、王国騎士って言ってたけどそれってどう言う職業だ?なんか名前だけ聞けばいい職業ぽそうだ。)



ーーーーーーー


テレルの家


さっきいたのは国の管理する病院のような所だったらしい。

そこから20分程歩いたところに彼の家はあった。


「うぉーーっ」


そう、バカでかい家が現実世界で言うところのサ〇エさんの家を3階建てにして庭もそれに合わせて3倍位にした位にの大きさだ。


「ここが俺の家だ。」


「いいところ住んでるんすね。」


「まぁ、俺の親は王国第十貴族の1人だしな。」


(なんだそのバカ強そうな肩書きは、こいつ思ったよりすごいやつなんじゃないのか??)


「遠慮しないで過ごしてくれこんな大きな家を貰っても中にはメイドさんと俺しかいないからさ。」


「お、おう。」


(メイドさんだと!?確かにこの大きな家を1人で掃除とは疲れるというか重労働だろとは思ったがやはりメイドがいるのか!素晴らしい異世界のメイド本物のメイドが見られるのか!!)


「お帰りなさいませご主人様。」


「ただいまリーシャ」


「あぁーこの方は、少し事情があって記憶を失って自分の帰るところもわからなくなってしまったんだ。」


その言葉にメイドのリーシャは本当ですか?と言わんばかりに俺の顔を除くが俺がサラリーマンで習った営業技術の感情操作で忘れていた悲壮漂う顔を引っ張り出した。


「そうですか。分かりました部屋はあいてますので私が案内致します。」


「ありがとうございます。リーシャさん」


「それじゃ俺は少し自室でやる事があるから家の中の案内はリーシャに聞いてくれ。」


「あぁ、ありがとうテレルこんなに良くしてくれて。」


「あぁ、俺は困ってる人がいたら助けたくなる性格だからな!気にするな!」


(こいつ良い奴すぎるな、変な詐欺に引っかからなければいいのだが。)


そうしてリーシャに連れられ2階の部屋に案内してもらった。


部屋は予想通り俺が上京して借りてたアパートの一室よりもデカくて綺麗だ。さすが金持ち


「さてと、少し落ち着ける状況になって情報を整理しよう。」


まず異世界なのは間違いないだろう


俺が見慣れたスマホやpcなどは見当たらないしそもそも服装がかなり古いような気がする。


決定打は襲われた時の氷の氷柱あれは多分魔法かなんかだろ。


そんなものは無いって思ってたが実際に怪我までしてるし認めるしかない。


...ところで俺は魔法とか使えるんだろうか?


後でテレルに図書館の場所とこの街の地図でも教えてもらおう。


「はーっ、俺が思い描いてた異世界召喚とは違うけどまぁなんとかなるだろ。」



こうして俺の異世界生活は始まった。



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