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青い目の男の子

作者: ポン酢

近所に青い目をしたヤツが引っ越してきた。

なんかヤベーの。

肌とか何か、ビニール1枚被ってんのかって感じで変に透明なんだよ。

女子共はキャーキャー言って騒ぎになった。


登校班が一緒で、俺は仕方なく毎日迎えに行った。

朝は弱いらしい。

日本語はちゃんと喋れるのに、朝は英語で何かむにゃむにゃ言ってた。


「タイガー、コレ、何?」


そんなそいつが、俺に聞いた。

お正月が終わった始業式の日だった。


「ああ、お正月飾りな?後、タイガーじゃなくて、大河。ちゃんと言えよ、名前なんだから。」


「お正月飾りはわかってる。何で捨ててある?ドーソージン、困ってる。」


「道祖神!後、捨ててあるんじゃなくて!どんど焼きに使うから皆がここに置いてるの!!」


「Don't……ヤキ?ヤキって何?」


「Don'tじゃなくて~!も~!皆、行っちまったじゃんか!とにかく行くぞ!!」


俺はそいつの手を引いて学校に向かった。

日本語はできるが、まだ日本文化の事はチンプンカンプンらしい。

毎朝、日に日に増えるお正月飾りにそいつは興味津々だった。


けれど……。


「……え?お正月飾り、無くなった……。」


日曜が終わって月曜日。

そいつは唖然として道祖神の前に立ち尽くした。


「ああ、昨日、どんど焼きで燃やしたからな。」


そういえばこいつは来てなかったなと思いながら、俺は答えた。

途端、その海みたいに青い目から水が溢れた。


「え?!何?!」


「ボク、見たかった……。」


「知らなかったのか?!」


びっくりした。

そいつがそんな事で泣き出した事にも、誰もこいつにどんど焼きの日を教えていなかった事にも。


べそべそ泣くそいつの手を引いて登校すると、俺が泣かしたのだと噂が立った。

先生にまで呼ばれるし、いい迷惑だ。


だから……。


「いいか?!今年のどんど焼きは14日だからな?!10時からだからな?!俺は教えたからな?!」


年が明け、あいつに会った瞬間、新年の挨拶よりも先に俺は言った。

あいつはニカッと笑って頷いた。

家の玄関扉には、去年はなかった豪華な正月飾りが飾ってある。

今時、こんな派手な正月飾りする家なんてないってのに。


そして当日。


そいつはど派手な正月飾りと大きなダルマ、そして白と濃いピンクのマシュマロがたくさん入った袋を抱え、俺の家に呼びに来た。

まだ8時だってのに、朝は弱いんじゃなかったのかよ?


「タイガー!!ドンド・ヤキに行こう!!」


「……お前さ、まさかとは思うけど、マシュマロ焼く気じゃないよな?!」


「何で?ドンド・ヤキ、写真で見たら、皆、マシュマロ焼いてたよ??」


俺は頭を抱えた。

しかし、ニコニコ笑うそいつに俺は何も言えなかった。


確かに写真じゃなんだかわからないだろうが、マシュマロはないだろう?!

文化の違いもここまで来ると逆に面白くなってくる。


「あ~、もういいや。」


「早く!早く行こう!!」


急かされるまま、俺は仕方なく靴を履き家を出た。

この時間じゃ、まだ準備が始まったばかりだろう。

しかし早く早くとそいつは俺の腕を引っ張る。

1日長そうだなぁと俺はため息をついた。


でもまあいいさ。

とりあえず今年は、こいつの海みたいに青い目から水が溢れる事はないだろう。

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