メモ機能の此のメモ一ヶ月で消えるでって項目を即消ししてしまう悪習が治らない
リンドウのリングに通知が来た。開いてみれば嬉しい情報、ママルイーター小隊の機体改修通知である。
モーターアーマータロスペルセウススリー。略してMAtペルセウス3は3Gプロジェクト上での名称であり正式採用されるにあたってMAt1ペルセウスA型と呼称された。
略さずに言えばはモーターアーマータロスファーストペルセウスタイプAだ。直訳すれば対宇宙戦艦機械化歩兵装甲一号機ペルセウスA型である。
要は戦場に出せる完成度の試験配備機がペルセウスA型。ハナゾノの嫁取りでの戦闘情報と敵の対応が有る程度判明した事を参考に改修したのがホログラムに写るB型だ。余計な情報だが空挺艦隊用のC型も生産も決定されていた。
「俺達のタロスもやっとB型に改装か。まぁ情報秘匿とプロパガンダの両立クソ後に回されただけだけど」
対宇宙戦艦機械化歩兵装甲は現状で戦車のタンク、戦艦のバトルシップ、戦闘機のファイターの様にタロスないしは正式採用一号機の名称ペルセウスと呼ばれる。
「やっぱりコイツはペルセウスはペルセウスでも別機体だな」
リンドウはザッと資料に目を通して言った。
まさに言い得て妙。チンパンジーとゴリラ、ネコザメとホホジロザメ、ティーガー1とティーガー2くらい違う。見た目的に言えば例えに出した戦車と逆に傾斜が減って一重二重に武張っていおり角張っていてゴツいのだ。
先ず無骨なサメの様な顔はゴツさを増しておりゴーグルの上の頭部が少し伸びて二つの通信機が追加されている。形状だけで言えばペンシルバニア鉄道のデュープレック式蒸気機関車のT1蒸気機関車みたいだ。カッコいい範囲だがデコが凹み直線で長く顎が突き出た形でのっぺりとした印象を受ける顔。
続いて停止や側面移動に利用された腕部の小型推進機が無くなり、腰部に二つの小型推進機が追加されている。また背部の大型推進機の左右に中型推進機が増設され戦車砲塔の様に回転できる仕様になっていた。結果的に胸部エネルギータンクが大きくなっていて鳩胸が壁になっている。
更に小型推進機の無くなった前腕は右手に槍の射出機構パイルバンカーになっており、袴の様にも見える脚部は更に肥大化し角張った外見に拍車をかけた。
最後は大袖の様な肩部の兵装固定板が肥大化し右の固定板が自動装填装置になっており短くなった槍が固定されている。右側にパイロットの好みや状況に合わせた武装を固定する形だ。
ゴチャゴチャ言ったけど要は機動力増強に航続距離の延長と、 ASALを塗装した槍の射出機構の追加だ。
「推進器の位置変わってるし中庭の剪定作戦の前に確りと模擬戦をしたほうがいいな。特に盾の訓練は必須だろうし」
連合でMAtが配属されていく。それは帝国でも同じ事だった。いや寧ろ開拓船団と言う組織の存在が普及を早めさせている。
帝国軍二等兵ジークフリート・アッシュは弾む様な心地だった。少年にさえ見える彼はFOPSで変色した鮮やかな緋色の大きな瞳と癖のある短髪を持つ。体型は軍人としては小柄であり活発な印象と歓喜を露骨にする様から余計に幼く見えた。
「おいジギー。随分機嫌が良いな。ガキみてぇに燥ぎやがって」
アダルベルト・オッド二等兵。軍人と言うよりモデルとでも言った方が納得出来る程にスタイルが良い。顔は小さく均整のとれたもので美男子、いや貴公子と評して然るべき青年だ。斜に構えた様な笑みさえ嫌味一つなく様になり輝く様なビーコックグリーンの長髪と瞳を持っていた。
「まぁ気持ちは分かるし燥いでんのはアーちゃんもじゃないか。俺もだけどな」
揶揄う様に、と言うよりは微笑しげに言うのはオニオ・ジン二等兵。三人の中で最も軍人らしい体格で身長は普通程度だがゴリラだ。濃紺の髪と瞳の森の賢者、穏やかムキムキマッチョマンのゴリラ。褒め言葉で言うけどマジゴリラ。どうやったらそんなムキムキなるんだって筋肉。ポージング無用の腕の太さ。
この若人を含めて人数は百人。開拓船団を元に二個小隊編成で大尉一名に中尉か少尉が四名、曹長一名と軍曹が九人だ。
「ケツの青いクソガキ供め!何を喚いているんだッええ!!?」
聞き覚えしか無い怒号、三人の肩が揃って跳ねる。
声の方を見ればいやに大柄で瞳孔がカッピラいた様な目の軍曹。いや鬼軍曹という表現をするべきだ。禿頭で威圧感を極めた顔と厚い胸板に太い四肢、軍人を体現した姿は目にしただけで新兵を脱糞させる程。
ラインハルト・ハルトマン軍曹、三人の新兵訓練を担った軍曹である。心ボキボキにヘシ折る様な練兵をする事で有名な男だが、彼も三人に近づむと同時に嬉しさを抑えられない様な顔で。
「気持ちは分かるがお喋りはそんなものにしておけ。一分一秒でも大型モーターアーマーを受領したいならな」
「「「サーイェッサー」」」
練兵中なら理不尽に燥ぐなと怒鳴られていただろう。ほんで声が小さければ怒鳴られた筈だ。
「フフまさか探索船団の指導の元モーターアーマーに乗れるとはな」
「軍曹も長期航行試験で落ちたクチですか。俺も全く適性がなかったんですよね。三週間だったかな」
オッドが問う。練兵期間中ならブン殴られてた。だが期間も終わり状況的にも上機嫌に。
というか有り得ない話だが戯けたように。
「恥ずかしい話だが俺もそれくらいしか持たなかった」
「逆に俺、11ヶ月と29日ですよ」
アッシュが凹んだしょぼくれながら言う。
「うわ逆に辛。ジギっちゃん、あと一日で探索船団だったのか」
ジンが言って軍曹とアダルベルトが同情の眼差しを向けた。
「前にも言ったじゃん。でもまぁ探索船団じゃ無いけど……えへへ」
ジークフリートに釣られて三人が破顔した。
帝国の人々にとってヒーローとは開拓船団である。そして開拓船団の花形と言えば危険を顧みず大型MAに乗って、いの一番に惑星に乗り込む切り込み部隊だ。誰もが其れになるのを望み試験を受け夢破れて別の道を歩む。
それこそ大型MAの格闘技は老若男女問わず人気スポーツだ。
だからこそ切り込み部隊じみた任務、使命を持って大型MAに乗れる事と、開拓船団の隊員から指導を受けれるのが嬉しくて仕方ないのだった。
浮き足立っていない者など居ない。
彼等が受領する機体は開拓船団の物を下地に大型MAの格闘技たるMAコンバットのデータまで用いた機体である。
Sma1ポイアス。 略さず言えばスペースモーターアーマーワンポイアス。
王冠を被ったような頭部には人の目を模したカメラ。肩幅はあるが脛と前腕が長いスラリとした長距離走選手のような身体。全体的に流線形を意識した刺々しい姿だ。
肩、背、足に推進器がついており、肩のものは羽の様で、背の物は酷く大型、長い足の推進器は縦に連なっていた。
並ぶ機体達。兵達が自身の僚機に向かって歩いていく。嬉しそうなのは変わらないのだがオッドが気持ち残念そうに。
「なんだか随分と細いな。開拓船団よりコンバットの機動型MAみたいじゃないか?」
ジークフリートが機体を見ながら。
「見た目的にはコンバットの機体だけどセーフティが無いから余計にスラっとしてるね」
ジンも同じ様に真剣な目で機体を見ながら頷いて。
「スラスターが有ると余計にな。装甲も薄くしてるだろコレ。まぁ敵は原生生物じゃねぇし場所が宇宙空間戦闘だから理に適ってんだろうな」
「だね。デザインがアレでわかり難いけど部分部分を見るに開拓船団に機体を納入してるデュークモータースかな。見た事ないプーリムス推進器だ」
「っぽいな。装甲とデザインはアレ、カヴァッロじゃね?スラっとしてクソ洒落てるし」
「このMAマニア供……」
この後に主装備の狙撃電磁砲か対空長砲身バルカン。副装備にサブマシンガンかショットガンを選択して装備。彼等は訓練の後に旧式の障壁装甲艦を改良した母艦に乗り込み各部隊に配置された。
両軍の衝突は間近である。