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なんか書きたいこと書いてるのに筆がのらねーと思ったら怯えろ竦めの人地上戦やんけ

 タロス部隊の中尉以上が参加する会議で並ぶホルグラム。その中の一人が事実確認と己の納得のための口を開いた。


『鹵獲した敵の電磁砲を流用ですか』


『ええ何分、連合の補給惑星から随分と離れてしまいましたから、戦闘が加速した弊害で今まで通りでは物資が届かないようですね。帝国の開拓惑星を奪いましたが未だゲートが通じていないとの事で、気は進みませんが最悪槍を使って撃破して下さい』


 ベルトラン・ドゼー大佐が困り顔で頷き答えた。仕方の無い事だが戦場で常に補給が万端と言うのは難しい事だ。特に現状であれば帝国軍が連合の半数という勝機と見て拙速こそ肝要である。


 また宇宙の移動この場合だと輸送に重要なワープゲートの接続は国が違えば電波の波長の様に違う。中世で言う関所の様なもので、同時に侵入を防ぐ為に敗退する側はゲートを破壊する。それを修復し電磁砲を揃える間に敵の戦力が揃い堅固に防衛されると敵もMAを揃えている分味方のMAも危険なのだから。


 そういう意味で槍は重要でリンドウも理解は出来るが、その結果背負うだろう被害を考え溜息一つ。


「槍ですか。アレは戦艦装甲でさえ即座に侵食して炸裂させる。あんな殺し方をしてしまうと兵がPTSD(ストレス障害)になってしまいますよ。まぁ戦争なんで兎角言ってられませんがセラピーが必要になります」


『困ったモンだな』


『被害がどうなるか』


 中尉達が次の戦いが前回通りとはいかない事を察して苦々しい顔になった。


『そもそも空の戦いに慣れ切っていないのだが変化が激しいな。出来うる限り備えなければ』


 特に戦歴の長い元空挺艦隊の壮年に見えるレッドフィールド・アームストロング中尉の言葉に皆が頷いた。


『それに関しては隊列を少し変える形を考えています。手間とは思いますが各小隊で開戦までに訓練を重ねて下さい』


 ベルトラン・ドゼー大佐の表示したホログラムに写る電磁砲を装備した盾を使った隊形を見てリンドウは既視感を覚え。


「もうテストゥドってかファランクスですねコレ。これじゃあ一周回って紀元前の戦いじゃ無いですか」


『そうですね。キャノンシップと言うチャリオットの時代からタロスという重装歩兵の時代ですか。あの盾を貫けるナイトが生まれるのは何時になるか。当分はこの隊形を軸に戦う事になると思います』


「ですね。敵への対応は解りました。今回の戦いは星系内に入っていますが、そちらは何か有りますか?」


『ええ、アイアンズ大将から注意点を伺っています。MAとしては特に隕石には注意する様にと。また他戦線の援軍の際には小惑星帯での戦闘が確実視されているそうで』


「ゲリラ戦になりますねソレ。遮蔽物のある状態の戦闘か。一応、空挺艦隊出身の方々でノウハウいただけませんか?」


『俺が纏めておこう。大尉のくれた宇宙戦闘マニュアルには世話になったからな』


『それは良い。御願いしますアームストロング中尉。中尉が作ってくださるのでしたら部隊に配るとしましょうか、戦術教書という形で臨時報酬も出しますよ』


『了解です大佐殿。こりゃあ気合いを入れなきゃな』


『船線を星系内に入れての戦闘か。帝国も思い切った事をする。どうなる事やら』


 ベルトラン・ドゼー大佐は呟いた。戦としては星系内戦闘で有り宇宙空間では珍しい事に敵の奇襲があり得る。それは当然の様に星と小惑星いう非常に分かりやすい露骨な物だ。だが解りやすいからこそ同時に警戒と言うか対応、厳密に言えば抑えの兵を置く程度の事はしなければならなかった。


 さて一方で帝国の動きであるが大将フェルディナン・フォルバンは指揮下諸将のホログラムを前にワインを嗜みんでから口を開く。


「サラーフ・ハキーム大将、バートランド・ダウン中将、良う来てくれた。さて改めて皆に言っておくが此の戦は負けると決まっておる。無駄飯ぐらいのオンボロまで使って抗うが敵は未知の技術を持ち我等には対応のしようが無い」


 諸将は当然の事実にして受け入れ難い現実に差したる反応も示さず耳を傾ける。


 ナカノニワ星団帝国総戦力は主力艦5249隻と大型MA46238機。これに増援としてサラーフ・ハキーム大将麾下主力艦3375隻艦隊団と、バートランド・ダウン中将麾下主力艦1125艦隊が加わるも現状最も重要な大型MAは配備されていない。負ける覚悟さえ無き将軍は少なくとも此の場には居なかった。


「現状の敵戦力は主力艦が凡そ1万隻。しかし大型機械化歩兵装甲(モーターアーマー)が5万から7万機じゃ。これが脅威」


「私達の鯨壁が加わって敵とは凡そ同数。往来の戦いと変わったと言うのは理解していますが、大型モーターアーマーの脅威と言うものの実感は其れ程の物だったのですか」


 本人からすれば気を引き締める様に言うのはバートランド・ダウン中将だった。凄いクッキリ二重の凄い垂れ目で何か妙にホワホワしたオッチャン。正直言って第三者からは気ぃ引き締めた感は無いが。


「宇宙の戦いで同数の戦力。此処まで一方的な状況になるなんてアファナシエフ大元帥閣下が奇策を用いて以来の話だ。守勢故の強みを活かした程度で敵の武器を奪うなんて事ができるのか……」


 唸る様に言ったサラーフ・ハキーム大将の視線は議会室の中央、敵大型機械化歩兵装甲(モーターアーマー)のホログラムに向かっている。それも腕部に装備している短槍、帝国の主目標は既に戦線の維持では無く短槍の奪取となっていた。


「同感じゃよハーキム大将。MA部隊の連中には敵の槍を得た場合、是が非でも持ち帰る様に伝えておる。一隻の艦載数では上じゃが急増では戦力に劣るからの。その程度しか期待が出来ぬしそれ以上を求めるべきでは無かろう」


 大将フェルディナン・フォルバン司令官がため息混じりに行った。そんな評議を終え半月後ナカノニワ星団最後の帝国支配惑星パティオの戦いが始まった。


 艦隊戦は何処で戦おうが凡そ変わりない。壁を作り撃ち合うものだ。しかし星系内戦闘においては布陣位置によって衛星などの障害物を考慮する必要がある。


 まぁ大抵は鯨壁の一部を控えさせるか障害物付近配置して挟撃に備える程度だが、古来より兵の分散をせざる終えない状況と言うのは非常に鬱陶しいものだった。


 そう、だった。過去形だ。


「こちらリンドウ、槍が切れた。母艦へ帰投する」


『ご苦労様です中尉』


 帝国の鯨壁を突破したリンドウは操作を変更し母艦へ戻りながら味方に置き去りにされ周囲に浮かぶ敵の亡骸を見て溜息を漏らした。


 煌々とオレンジ色に染まった敵機。敵が自軍と同じ盾を利用したが為に起き、いや起こさざる追えなかった惨劇だ。対応出来た者は良い、今まで通り鉄の四肢をもがれて宙に浮くだけ。


 だが盾を捨て損なった者は皆、蒸し焼きになって死んでいった。


「殺しておいて敵に同情か。アレキサンダーやシーザーやナポレオンにでもなった気だったんだな俺は」


 自分の心情に嫌悪感を抱きながら着艦してチョコバーを頬張る。そうして気を紛らわせているとモビーディック級七番艦ママルイーター艦長ティック=ホーン・DNR大佐から連絡が入った。


『中尉、そろそろ骨董品が来るそうだ』


「本当に出したんですか?あんな代物を」


『ああ、もう見えると思う』


 館長に言われて船外モニターが表示された。惑星パティオの裏に小さな点が見える。それは大きく惑星を中心に回っており異様な速さで連合鯨壁の上までやってきた。


「月型衛星要塞ブラッドムーン。何年物ですかアレ……」


『確か、千年はいかない筈だ』


 モニターの複眼も何処か困惑していた。衛星要塞サテライトフォートレスと言う兵器群の一種でシールドだのレーザーが出る前のミサイル戦闘を主としていた頃に産まれた代物である。レーザーが出た辺りで要塞作るより砲身艦を作った方が良いと廃れた兵器だ。


 帝国はそんな骨董品に推進器を付けて盾として活用していた。


『リンドウ中尉、想定通りの乱戦になる。しかし敵の数が想定以上に多い。すまないが頼んだぞ!』


「了解しました艦長。ゴールドバーグ准尉、ヴォルフガング曹長、分隊指揮を願います!」


『任せな』


『了解』


「よし。小隊、出る!!」


 ママルイーター小隊がタンクデザントの様に砲身艦の装甲の上に立つ。それは帝国ではレモラコンバットと呼ばれる砲身艦護衛戦闘だった。推進器周りと司令官区画に炉と主要機関を守る為に部隊を三つに分ける戦いだ。


 リンドウ星が落ちて戦闘が開始された鯨壁を見る。巨大な星を月型衛星要塞を先頭に敵が突っ込んできた事で敵味方の艦艇が入り乱れていた。状況は敵の艦艇が一方敵に撃墜されていくが敵艦が続々と続き、落とされても構わず此方にも迫っていた。


 こうなる事は想定されていたからこそ連合も敢えて敵の罠に突っ込んだ訳だが。


「敵艦艇の数が多すぎる……。しかも砲身艦で立体陣形だと?」


 砲身艦はレーザーとシールドの発生により平面の陣形が当然となって長い。だが敵は正立方体の陣形を取って突撃して来たのだ。それはさながら騎兵突撃の様だが当然の如く味方艦を落とす事は無い。


 だが他の星に戦力を裂いたせいでもあるが結果的に、リンドウの視界内は敵の艦艇3に対して味方が1以下だ。加えて流鏑馬の様な交差を乱戦と称していた往来と打って変わって敵味方が蚊蜻蛉の様に混ざり合っている。とは言え驚きはしたがそれだけで、決定打を持つ自分達が有利であり敵の意図が分からなかった。


 思考に集中しそうになったがレーダーに反応がありオペレーターから通信。


『縦3時、横2時より敵です!!』


「来たか了解、戦闘準備!!」


 三隻の敵艦がこちらに向かって来る。三隻が機動砲撃を迫り内一隻から帝国のタロスが迫って来た。


「全部に乗せてる訳じゃないのか?」


 そう言いながらリンドウはアサルトライフルで弾幕を張って迎撃した。だがそれは当然の様に盾で防がれる。リンドウ達も慣れたもので即座に攻撃を止め移動を始めた。


 敵が電磁砲を撃ってくる中で盾を構えて直進し、推進器を唸らせ敵の着地に合わせ懐に入り込む。接敵と同時に盾を構える敵へ拳を向けた。そして槍を射出すれば盾諸共に敵機を溶かす。


 思わず顔を顰めるが生死に関わる場で殺す事を厭う事など出来るわけもなく戸惑った左右の敵に弾丸を叩き込んだ。


『中尉。敵、殲滅しました』


 僚機からの通信、周囲を見渡せば鉄の亡骸。


「ご苦労様、交代で補充を。手早くな」


 格納庫に三交代で入り補充を終えれば幾度か敵を返り討ちにする。時折だが超至近距離を受けて味方艦が敵と仕打ちになっていた。


「損害もデカくなったな。にしても此の状況で未だ敵の意図がわからねぇ」


『中尉!!縦十二時、横三時、正面から五隻艦隊です!!』


「は?!艦隊!!?りょ、了解!!」


 あり得ないとは言わないが劣勢な敵が艦隊起動を維持している事に驚愕した。優勢なはずの連合だって艦隊機動が出来ている鯨壁は少ない。それは単純に壁を作っての艦隊決戦が主流で乱戦になど普通はならないからだ。


 軍人だって慣れない事は難しい。それが足並みをそろえてとなれば尚更だ。リンドウは敵が精鋭である事を受け入れた。


「しかも三隻が載せてんのか」


 敵機が迫る。パッと見だが三隻合計200近い数だ。


「多勢に無勢だな」


 リンドウは辟易としながら盾を構えてから操縦桿を握り敵に突っ込む。手慣れた僚機が左右を固め敵の着地点の裏側に回って操作を変更し着陸前の敵を狙った。しかし撃墜数はやはり少ない。


『クソッタレ!!』


 通信を切り忘れた僚機から不満の声。確かに今までなら決着が付いていてもおかしくない攻撃だ。


「迎撃!!」


 リンドウがそう言って先陣を切れば味方が敵に槍を打ち付け撃破していく。だが3対1の戦いで互角の戦い。リンドウに至っては6機に追い回され劣勢だった。


「クソ!!やたら狙らって来やがる!!」


 敵を溶解させ敵一機を破砕したリンドウの機体が推進器を短く発動させて横にスライドして電磁砲を避ける。そこに銃撃が撃ち込まれ即座に装甲から離れて宙へ逃げるが敵機が懐に入り込んだ。


「!?」


 リンドウは混乱した。先ずもってこんな距離に来る意味もない。何がしたいのかと。


 だが考えるよりも早く銃撃を叩き込む。敵機がバラバラになって装甲に落ちていくが生き残っていた腕が引き金を引き弾丸が愛機の銃を握る腕を穿ち貫いた。


「やられた!!は?!」


 ボロボロになった敵の背後から更にもう一機が迫り思わず困惑。避けようとするが電磁砲が背の推進器を一つ砕いて肩を貫く。迫って来ていた敵が愛機の腕と肩を掴んだ事で理解する。


「クソッ不味い!!」


 だが理解したところで如何しようも無い。慌てて槍を射出するが数本を残して一本背負いの要領で肩から先をもがれた。敵が体からオレンジ色の槍を生やしながらそれでも最後の意地で腕を味方に向かって投げる。


 即座に敵機がそれを受け取り2機が護衛について、十機近くが自損も厭わずにリンドウを囲う。


『隊長!!』


 他は助けには来れそうに無い。愛機の腕とパイルバンカーを抱えた敵が見る見るうちに退いていく。腕を捥がれ反撃は出来ず敵の弾丸を避けるので精一杯だ。


「俺の事はいい!敵に槍を奪われるな!!」


 切迫した声に反応はあるが敵が多過ぎる。ASAL(対艦装備液)アンチシップアーマメントリキッドが解析されれば周囲の光景が自軍に跳ね返って来るのだ。正直言って誰もが既に勝てる戦いだとたかを括り油断していたのだろう。


 槍に塗装されたASAL(対艦装備液)は射出と同時に水を散布される事で渇水状態の微生物が急速活性し槍を食いながら周囲を急速に腐食させる。腕諸共持っていかれては全てがバレてしまうだろう。


「全部隊へ通達!!此方、ママルイーター所属リンドウ!!敵に腕ごと槍を持っていかれた!!俺に構うな、敵を追え!!!」


 リンドウはそう叫ぶ事しか出来ない。焦燥を抱えて操作を行い敵の攻撃を避ける。そんな中で逃げる敵機に視線を引かれた。味方がなんとか敵を倒して敵を追うが届かない。


 絶望が轟いて畝る。


 だが次の瞬間、敵が腐食し爆散した。


 続いてリンドウを追い回していた敵が横合いからの銃撃で倒れていく。


『待たせたね坊や!!』


「曹長!!」


 メアリー・ゴールドバーグ准尉の機体がリンドウの横に立った。


ASAL(対艦装備液)の方はヴォルフガングが上手くやったよ。でもアンタでこれなら敵に情報は渡っちまったろうね……』


 メアリー・ゴールドバーグ准尉はそう懸念を漏らしながら突如、全てを捨てて撤退する帝国軍を見つめた。その後に殿というのも烏滸がましい死兵達を何とか片付けたが帝国艦艇数隻がワープゲート逃げ込んだ。パティオの戦いで勝利しハナゾノは連合の領域になったが数年後には帝国もASAL(対艦装備液)の装備を用いた武装を生産する様になる。


 戦場の主役が砲身艦から鉄の巨人へと変わる契機となった戦役として歴史に残る戦いはここに終結した。砲身艦の鯨壁は砲台へと変わり貧弱な装甲に過剰な火力を持った巨人が相争う。宇宙から地上まで鉄の巨人達が覆い尽くすこととなった。

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