裏路地
5月6日 午後6時52分 裏路地
☆☆☆side浅原啓太☆☆☆
入口は以前も通った一箇所のみ。
どうやら袋小路になっているようだ。
上手くいけば奇襲したあとにすぐさま逃げ切れるが、下手をすれば逃げられなくなる。
そうなれば多勢に無勢だ。そのうえ、下手に刺激しようものなら、久美子が危ない。
時間は惜しいが、正面から堂々と行くわけにはいかない。
やはりどこかの建物に登って、上から攻めるしかなさそうだ。
裏手のほうに運良く廃ビルがあった。
そこから忍び込む。
――よし。
上手く奴等の上に来れた。
敵の数は、二人。思ったより少ない。
武器を持ってもないようだし、久美子は縛られている様子も無い。
これなら飛び降りざま二人をなぎ倒し、そのまま逃げられる。
行くか。
狙うは例の車のボンネット。
高さにして四メートルくらいだ。
音を立てないように気をつけながら、飛び降りる!
そのまま転がるようにして二人に近づき、身構えるより早く足払いをかける。
「浅原君!」
「ほら、急ぐぞ!」
久美子の手を取って、せかす。
たった一つの出口に向かって!
ザッ
「残念だったね」
少年達が三、四人、出口に立ち塞がる!
「そいつらはおとりさ」
「くっ」
「そっちからくるのはお見通しでね。もともと、一人たりとも逃がす気はないんだよ」
後ろの二人も立ち直り、出口を塞ぐ。
「しまったな……」
「この考えなしが。アンタのせいで巻き添えになっちゃったじゃないの」
☆☆☆side北条友香☆☆☆
「おしゃべりはそれくらいにしてもらおうか。こっちにもつごうがあるからね」
――お姉ちゃん!
なにこれ、どういうこと?
「お前達、自分のしてることが分かってるのか?」
「ああ、よく分かってるさ。あれがばれたら俺たちゃ終わりだ。なんとしても口封じをしないといけない」
「今ならまだ間に合う。おとなしく自首しろ!」
「ひき逃げは重罪だ。今日びガキでも知ってるぜ。おまけに盗難車だってんじゃあ弁解すらできやしないよ」
「ちっ、やっぱ無理か」
「当り前よ、この脳足りん」
ひき逃げ! 盗難車!
ど、どうしよう。なんとかしなくちゃ。
……そうだ、警察!
警察が来たと思わせれば大丈夫なはずだ。
……よし!
「お巡りさん、こっちです! 早く早く!」
☆☆☆side北条久美子☆☆☆
「なに! サツだと!」
さっきの声は友香!
あの馬鹿、なんでこんなところに来ちゃったの?
「お巡りさん、こっちです! お巡りさ……むぐぅ」
――?
「嘗めた真似しやがって、この女」
しまった、まだいたのか!
「びびったっじゃねえか」
やけに目つきの悪い男が、友香をはがいじめにしながら現れる。
友香め、余計な事を……。
二人ならまだ逃げられたのに……。
手を強く握り締め、私は歯噛みした。
これは最後の手段のつもりだったのに。
友香だけでも逃がさないと……。




