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典型的な世界で生きていく  作者: 糸島荘
2/15

1-2 私の家族、そして

私には大切な家族がいる。シスター、そしてもう1人。



 アールレイ中央学院に合格する為には幾つかの手段がある。まずは一般入試。魔法の素養を確かめる実技試験と一般教養を確かめる筆記試験の2つ。1番合格者数が多く、エマ自身もここでの合格を狙っている。


 2つ目が推薦入試。王が直々に推薦した者を優先的に入試が受けられる。その合格率は驚異の90%以上。王様最高。


 3つ目は教員・教授の推薦。学院に所属する教員が一般入試を受け、優秀だと思った者を2枠まで試験が不合格だとしても合格にする事が出来る。教員最高。

 

「シスターなら何か良い案が思い浮かばないの?魔法は使えなくても固有魔法は使えるようになるとか」

 

「魔法にしても固有魔法にしても才能に関する面が大きいからどうしようもないわ」


「貴族達は固有魔法を継承させるらしいけど、それはどうなの?」


 魔法の他に固有魔法と言うものがある。だが文献にも詳細があまり載ってい上に、所有者も情報開示をしようとしないので、世間でも使えると貴族になれるという認識でしかない。なので貴族は代々、固有魔法を継承しているらしい。


「あれはまた別の話よ。固有魔法を継承させる為には強固な繋がりが必要になるの。例えば血の繋がりのようなね」


 そう言っているシスターも固有魔法を使えるらしいのだが、1度たりとも使っているところを見たことがない。シスター曰く、そんなに良いものでもないらしい。


 貴族ではないシスターが固有魔法を持っているのは非常に珍しいらしいが、シスターはあまり自分の事を語りたがらないので詳細を知ることは出来ない。




 エマはどうしようかと空を見ながら考えていると、こちらを見ていたシスターの表情が、何を勘違いしたのか悲しげに変わる。


「そんな顔をしないで?貴方には貴方だけの何かがあるはずよ」


 エマ自身、どうしようもない事はわかっているつもりだ。幾ら座学が出来たとしても学院どころか魔法を学ぶ必要のある学校はすべてお断りだろう。


 だがしかし、エマは今落ち込んでいた訳ではない。とうの昔に正攻法で合格する事は諦めている。魔法の才能のない者が、今更どれだけ魔法を練習しようと意味は生まれないのだから。

 

 (魔法を今日まで練習してきたのは、奇跡に賭けていただけじゃない。私には私なりのやり方がある)

 

「大丈夫よシスター、私は大丈夫。でももしアールレイに合格する事が出来なかったら、その時はこの教会に永久就職させてね?」


 勿論と言い、シスターはやる事を思い出したのか教会の中に帰っていく。シスターが完全に教会の中に入っていったことを確認し、エマはポケットから長方形状の薄い箱を取り出す。


「私にはこれがある。勇者にスマホと呼ばれていたこの特殊な魔導書が」


 魔術、魔導具を用いて魔法と同じものを発動する事が出来る秘術。魔術の最大の特徴は魔力さえあれば属性適性がなくとも発動出来る点だ。


「文献で調べた感じだと利点以外は背信だとか冒涜だとかしか書いていなかったのよね。シスターに聞いても良いけれど……」


(シスターはそんな事を言わないとわかっているが、可能性は0でないとそう想像するだけで怖い。私のただ2人だけの家族なのだから)


 スマホを握る力がいつの間にか強くなっていた事に気づき、深呼吸をして力を緩める。そのままエマはスマホの光沢を放つ面を触り、スマホを起動する。


 起動したスマホには均等に並べられた絵に加え、絵についての名前が書かれていた。その中にあるブックと書かれている本の絵を触る。


 開くと魔術書、知識書と描かれている絵が、スマホの中の本棚に納められている。


 知識書は知りたいと思った情報が記される。魔導書は全ての魔術が載っている。どちらも人の域を超えている代物だ。その中の1つの魔法を選択し、桶に手をかざす。


『浄化』


 先程とは違い手の先に光が集まる前に魔法陣が展開され、魔法陣から雫が落ちる。透明の雫は桶に落ち、そこから水が透明と化する。


 今の魔術が魔法における『クリアウォーター』と同じ効果を持つ魔術だ。これだけ詠唱も要らずに早く展開出来るのにも関わらず、魔力の消費も大差ない。


「これがあれば私も合格ライン……いや、上位ランクも狙えるんじゃないかしら?」


 1人でほくそ笑んでいた所に後ろから動く気配を感じる。いや、感じた時にはもう遅かった。


「エマ、貴方魔法が使えたの!?」


「シスター!これは……その……」


 教会への入り口の方へと振り返り、言い訳をしようと顔色を伺おうと顔を見る。


「ってルナ!また騙したわね!」


「姉さん、いつも油断しすぎ」


 入り口から姿を表したのはシスターと同じ金髪でありながら、シスターとは違い、可愛いと言う雰囲気ではなくカッコいいよりの顔をつきをしている。エマと同じ、10歳ほどしかない背格好の少女だった。


 

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