第5話 スタートライン
ログアウトして晩御飯を食べました。鶏肉っておいしいよね! やっぱ鳥は食べられるよりも食べたいと思う今日この頃です。
風呂にも入ったので宿題、は終わってはいないものの少なめだったので一旦保留で。ゲームを再開しよう。
ゴールデンウィークといいつつ土日の後は登校するから宿題少ないんだよね。
さてさて。とりあえずまた二時間後くらいにアラームを設定して……。ログイン!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
相変わらず同じ場所、同じ景色。森の中。
軽く調べた所によると、全員というわけではなく一部の、具体的にはカートリッジ版を買った人が様々な場所でスタートするはめになったようだ。ダウンロード版なら始まりの町(確かスターテイルだった気がする)でスポーンしたらしい。
まぁ中には「モンスターには勝てないけど街のクエストならできそう」という人もいたようだ。クエストどころか誰にも遭遇してませんが?
運営に問い合わせした人もいたけどまだ返答は無いそうなので、とりあえず冒険は続行することにした。
「さて、後ろ……に進む前にスキルの確認をしよう」
忘れていたけど初期スポーンと同時にスキルが決まるんだよな。とりあえず職業ごとに2つ決まっていて、後は3つのスキルがランダムで入手される。そしてスキルはON・OFFを設定したほうが良いらしい(ネット情報)。
どうやら似たスキルだと発動のアクションまで似ているせいか上手く狙ったスキルを発揮できないんだとか。それが一番直したほうがいいのでは?
さて、メニュー……右下? お? 出た出た。
ゼノン レベル1
職業:剣闘士
所持金:2000マネー
装備:【ビギナーズプレートアーマー】
:【ビギナーズセット(一式)】
武器:【ビギナーズソード】
アクセサリー
顔:【白面】
胴:なし
腕:なし
足:【名無しの草履】
体力 30/30
魔力 20/20
筋力値 5
耐久値 5(+3)
知力値 3
敏捷値 3(+2)
器用値 3
持久力 10
運 1
【称号】
:無し
【パッシブアビリティ】
:無し
【生産スキル】
:無し
【戦闘スキル】
《スラッシュLv.1:on》
《切り返しLv.1:on》
《カウンターバッシュLv.1:on》
《片手剣Lv.1:on》
《木の棒Lv-:on》
なんだこのスキル……と思った、思いました。
いや人に見られたら「何これ?」と言われるとは思うけども待って欲しい。
これ多分当たりスキルだと思う。
まず剣闘士の基本スキルが《スラッシュ》と《カウンターバッシュ》だ。Lv.1というのは成長することで強化されるスキルということだろう。この2つはいい。
《切り返しLv.1》
分類:剣種スキル
効果:戦闘中、『スラッシュ』系統スキル発動後に『スラッシュ』系統スキルを発動できる。この場合、スキルのリキャストは無視できる。
《切り返し》はやばい。リキャスト無視はやばい。惜しむらくは今は《スラッシュ》しか対象にならないことだ。スラッシュ系統ってことは《スラッシュ》のレベルが上がると解放されるとか?
そしてその他2つ。平凡なスキル枠では? と言いたい名前だが違う、違うんだ。ランダムでこれを引いたのは幸運だ。
《片手剣Lv.1》
分類:剣種スキル
効果:装備が【片手剣】種であれば剣種スキルによるダメージにプラス補正が入る。
《木の棒Lv-》
分類:剣種スキル
効果:条件を満たした【木の棒】を装備できる。【木の棒】の攻撃で剣種スキルが発動できる。
正直ネタと言うには強くない?
《木の棒Lv-》については条件次第では拾った木の棒で戦えるってことだよ? 木の棒で《スラッシュ》できちゃうよ? 強くない?
《片手剣》もレベルが上がると何かありそうだ。楽しみ。
ふぅ、ちょっとモチベーション上がったな。
丸のみにしてくれた鳥にリベンジしたいところだけど、多分羽音もしなかったしフクロウのモンスターだろう。夜は無理だな。
フクロウはギザギザした風切羽を羽を持っていて、静かに飛ぶことができる。そして大きな翼のお陰で羽ばたき少なく滑空できるので羽音はほぼ無音、森の忍者と呼ばれているとか。
人を丸のみにする大きさについてはあえて考えないことにする。
「まだ行ってないのは後ろだけど……」
とりあえず木の棒を探しながら行ってみるか。
ざっざっざ、
ざっざっざ、
「ところでアイテムってどうすればいいんだろ」
試しに足元の落ち葉を1枚拾ってみる。
【落ち葉】
アイテム分類:無し レア度:ー
:枯れて地に落ちた葉。
へー、鑑定は勝手にされるんだ。
他にも何枚か拾ってみたけど鑑定はされなかった。同じアイテムだからだろうか。
落ち葉は要らないので捨てて……いや、何かに使えるかもしれない。拾っておこう。
アイテムボックスには《しまう》と念じたら入った。楽でいいや。
とりあえず30枚集めておこう。なんとなく。
あ、木の棒。2つある、ラッキー!
【木の棒】
アイテム分類:木材・『剣』 レア度:ー
:落ちた枝の中でも太い枝。振るうのに適している大きさ。
【木の棒】
アイテム分類:木材 レア度:ー
:落ちた枝
どうやら《木の棒Lv-》のお陰でアイテム分類に『剣』が追加されるらしい。確かに前者はちょっと太くて良い感じだ。後者は細い。
とりあえず後者はアイテムボックスにしまって、前者は右手に持って歩こう。
男の子というのは木の棒を持って歩くと少しテンションが上がる生き物だ。そしてこの木の棒は武器にもなる。ちょっと楽しみだ。
あえて足音を鳴らして歩く。まずは敵を視認したい。奇襲しかされていない。堂々と戦うやつはいないのか?
その時だった。
ドッドッドッド
足音が聞こえた。この森で初めて聞く大きな足音だ。
後ろからだ。まだ音は遠い。
ドッドッドッド
後ろを振り向く、音はどんどん近づいてくる。
薄暗い森の中、大きな音だけか存在感を伝えてくる。
ドッドッドッド バキバキバキ
音はだいぶ大きくなってきている。木が悲鳴を上げているようだ。音は近い。
来る、来る、なんだ、大きな足音、もう、すぐ
「Guraaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
大きな低い咆哮と共にそれは現れた。
まさしく一瞬の出来事。だが俺には赤い眼光と右からの振り下ろしが見えた。
脳でそれを察知したとしても本来であれば体はいうことを聞かない。一瞬で俺は吹き飛ぶ、はずだった。
脳波の伝達こそがVRゲームにおけるアバターの身体を動かす信号ならば、
脳で察知ができたのならばそれは行動を起こすことは可能だということ。
そして一瞬というのは短いが、脳波という電気信号にとっては、
身体を動かすには十分すぎた。
ただ怯えただけ、の体の強張りと、
無意識的に両手で衝撃に備えようとした肉体の反射によって。
偶然、右手に持っていた木の棒に左手を添えた形になった。
バチィ!!
「Gaa!?」
「え?」
右からの振り下ろしは木の枝によって弾かれた。
しかし脊髄反射と違って、目の前のことへの理解は時間がなければ追い付かない。
そして目の前のモノを正しく認識したとしても、正しい行動を取れるとは限らない。
「黒い、ドラゴン!?」
薄暗い森の中でも存在感を放つ黒。光を反射しない鱗は漆黒のようでいて、輪郭をハッキリと浮かび上がらせる。
獰猛な赤い眼は少ない月明かりを反射して怪しい光を放っていた。
その赤い眼と、目が合った。
「Gurraaaaaa!!」
俺に向かうのは左からの大きく振り回された尻尾による一撃。
「がっぁ!?……がはっ!?」
太い鞭のような尻尾で吹き飛ばされた俺は体の左側に強烈な衝撃を受け吹き飛ぶ。そのまま木に背中を打ち付けた。二度の強打、レベル1のHPが耐えられるわけがない。ゲーム故の手加減された痛みに耐えながらドラゴンを見ようと顔を上げ……
また、目が合った気がした。
《レベル差が離れすぎています。デスペナルティはありません》
気を失う直前、俺を見下すドラゴンは、爬虫類のような頭部なのに俺には
酷く憎たらしい顔で笑ったように見えた。
俺の中で、何かが燃え上がるのを感じた。




