第3話 チュートリアルはほどほどに
真っ暗だ。ロード中なのかな?
ん? 音が聞こえたような。
《はじめまして。私はフレイヤ。この世界を管理する神を務めています》
へー。声からして女性かな。性別があるタイプかは分からないけど女神様で想像しよう。已然として真っ暗なままだし。
《あなたのお名前をお教えいただけますか?》
「えーっと? ああ、キーボードタイプね」
名前に☆とか入れたがる人もいるから今でも音声入力は少数だと聞く。とりあえず……名前か。
不本意ではあるがクラスメイトとパーティを組む、となるとあまりカッコつけるのは良くないだろう。恥ずかしい。
しかもこのゲームの舞台は中世ヨーロッパ風らしい。あんまり日本ぽさを残すのもつまんないな。『無頼』とか候補だったんだけど。
となると……。
《ゼノン、と言うのですか?》
「はい」
奇しくもカッコつけつつそこまで恥ずかしくない感じの名前として、ゼノンにした。表記的にはXENONかな?
恥ずかしさ的にはギリセーフ判定。
《あなたには不思議な力があるようです。
創造神様があなた方を招いたのは、その力が必要だからです》
ふむ、チュートリアルの前に世界観の設定的なお話ですな。巻きで。
《多くの将来性を持つあなた方であれば、
人類の試練を越えることができるはずです》
「人類の試練……とは?」
《人類の試練。それは7つ》
ゴゴゴゴゴ……。
大きな物が擦れるような引きずられるような低い音と共に真っ暗な空間に浮かんだのは7つの石板。石板には彫られたような絵がある。
《国と国との争い》
1つ目は剣を持った二人が戦う絵。
国と国、ということは戦争だろうか。
《異種族との隔たり》
2つ目は羽の生えた女性と狼男、耳が長い人。
多分創作なんかでよく出る亜人かな?
《技術による増長》
3つ目は人と歯車と魔方陣? みたいな紋様。
増長って言い方だと森林破壊とか?
《未踏覇のダンジョン》
4つ目は分かりにくい。迷路のようなイラストだ。
でも内容はゲームらしい要素で助かる。前3つはもうゲーム内でやることじゃないだろ。
《魔王との戦い》
魔王いるの? へー、強そう。
イラストは角の生えた目付きの悪い顔だ。多分、男。
《強大なモンスターの討伐》
6つ目はなんか鳥みたいなイラストだ。その鳥が人を食べようとしている。嘴のほうが人より大きいって、でかすぎない?
ゲーム的に言えばレイドモンスターみたいな?
《そして、神々を楽しませること》
いや最後、おかしくないですか?
《7つの試練を乗り越えた時、この世界に平和が訪れるでしょう》
「神々を楽しませるが多分ラスボスになりそう」
暇をもて余した神々なのだろうか。
《それでは、あなたの力を発揮させるために。
まずは職業とステータスを決めましょう》
「急にゲーム感増すじゃん」
《この職業とは神々が仕事を保証する、ということです。
あまり信仰から外れた行動を取られてしまうと剥奪することもありますし、その反対で与えることもあります》
と思ったら世界観を補強してきた。多分PKとか、泥棒がシステム的にはできるけど神々の加護は無くなりますよ? みたいな?
後ろのは泥棒って職業になるから即バレます、みたいな? いいねそれ。捜査いらないじゃん。
「とりあえず決めてたのは、剣士っと」
スクロールしてみたらいっぱいあった。職業だけで30くらい。剣士、剣士、けん……とうし? 剣闘士?
「敏捷値補正が低め、筋力値と耐久値が補正高め。ふむふむ、いいんじゃない?」
剣士と大きく違うのは初期の獲得スキルに『カウンターバッシュ』があることだな。剣士だと『ダブルスラッシュ』か……これは剣闘士、ありかもしれない。
別に職業だって後で変えることはできるだろうし、最初は戦闘しやすそうなスキルがある剣闘士にしよう。けってい!
《『剣闘士』ですね。ではそのように》
ステータスは……? 30のステータスポイントを割り振ると。体力30と魔力20だけは最初から決まってると。なるほど……? まぁいいや! 適当で!
この後装備とかもあるでしょ! 巻いていこう!!
ゼノン レベル1
職業:剣闘士
所持金:2000マネー
装備:【ビギナーズプレートアーマー】
:【ビギナーズセット(一式)】
武器:【ビギナーズソード】
アクセサリー
顔:【白面】
胴:なし
腕:なし
足:【名無しの草履】
体力 30/30
魔力 20/20
筋力値 5
耐久値 5(+3)
知力値 3
敏捷値 3(+2)
器用値 3
持久力 10
運 1
うーむ。白面と草履が西洋風の鎧と合わない。でもこの草履、敏捷値に+2が付くんです……。強い……。
白面はめんどくさくてキャラメイクほぼ素顔にしたから身バレ防止に念のため買いました。草履含めアクセサリーは初期に貰えるマネーから天引きでした。あわせて1000マネー。高いのかな?
でも地味に! ビギナーズと名の付くアイテムは耐久値がないらしい! やったね! 新しい装備は金ができてからで良いってことだね!
《ではゼノン、お願いしますね。
あなたの活躍に期待します》
「頑張りますよ、女神様」
さてさて、ようやくですよ。
レッツ、ゴー! ってね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ん? 森?
真っ暗な世界から一転、と思いきや薄暗い……森?
初期位置は噴水広場って聞いてたんだけど……おかしいな。
緑生い茂る、というか、なんというか。なんだろう、樹海って感じ? 足元は落ち葉で湿ってるし、どこか薄暗い。森林浴には向いてなさそうだ。
まぁいいか。
「確か、スポーンしてからランダムでスキルが決まるんだよな」
どうやらこのゲームなりのリセマラ対策だ。魔術師系を選ぶとランダムで属性が決まるんだけど、それがスポーンしてからになっているらしい。んー、あの長ったらしいのもう一回とか嫌ですね。
まぁやる人はいるだろうけど。俺はいいかな。
「さーて? どこ? ステータス閲覧は」
メニューは? んー?
とメニューの開き方を確認している時だった。
タタタタタと小さな音が聞こえた。
そしてグサッ! と大きな音が。
「ぐぁっ!??」
なん、だ、胸が……痛い……。
後ろ、から……刺された……?
気が遠くなった俺の耳に聞こえたのは「ピィ!」という鳥の声と、
《レベル差が離れすぎています。デスペナルティはありません》
という女神様の声だった。