表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

歩いても歩いても森


『さぁ、目覚めなさい、異世界より来たりし勇者よ、せか―』

―未知の端末からのハッキングを検知.遮断しました.逆探知開始.失敗.


 目が覚めた時には都会の喧騒はなく静かなものだった。

 日は暮れた森、光源は空一面の星と二つの月、木々の隙間からちらりと空が見える。

 目の前には闇、木々が星々の光が届かぬほどに生い茂っている。

 困惑しながらも男は頼れる相棒に声をかける。


「イクサ、ここはどこだ?」

―不明.位置情報をロスト.位置情報の再取得ができません.

「どういうことだ?さらわれたのか?」

―ありえません.意識の消失から5秒しか経過していません.

「どういうことだ.さっきまで朝だったじゃないか!?転送されたのか、S.A.Iからの攻撃か?」

―ありえません.マザーは破壊しました.船団の全機能は停止されました.

―情報収集が必要です.ガジェットの使用を要請.『遊火』を推奨します.


 状況を飲み込めない男の質問に淡々と回答する電脳『イクサ』もまた現在の情報を欲していた。

いわれるがまま腰のホルダーから手のひらサイズの直方体の機器取り出し側面のボタンを長押しする。


―『遊火』との同期を確認.早急な情報収集を希望します高く射出してください.


 天高く放り投げる。最高点でガジェットが変形しドローンになりその場に静止する。存在を示すように赤い光が灯っている。


―報告.周囲半径30キロ圏を撮影解析しました.民家らしきものはありません.上空150メートルでの電波傍受を実行.失敗.現在通信は一切行われていません.衛星『唐傘』へ救難信号を送信.失敗.送信先がありません.強襲揚陸艦『イクサ』へ緊急事態を報告.臨戦態勢を指示.失敗.リンク先がありません...遭難しました.救援の見込みはありません.


 持ちうる手段で事態を解決しようとしたがすべて失敗に終わる。イクサが手も足もでなかったことなど今までにはなかった。事態の重大さはに男が思っていたよりも重大なようだ。

 よくみれば回りには森しかない男が持っていたはず大きい旅行カバンも直前まで持っていた携帯電話も辺りは見当たらない。状況が切迫するにつれ徐々に混乱が感情を支配し始める。


―送信.失敗.送信.失敗.送信.失敗.送信.失敗送信.失敗.送信.失敗.....緊急事態発生.緊急事態発生!何者かからの攻撃を受けている.何者かからの攻撃を受けている.非常事態につき最優先コード使用.揚陸艦『イクサ』緊急発進せよ.応答なし.脚部『野槌』発進せよ.脚部『化鯨』発進せよ.脚部『以津真天』発進せよ.『網切』『雲外鏡』『煙羅煙羅』『手長足長』誰か.誰か.――


 もはやパニック状態の高性能AIがそこにあった。

 異例の事態にイクサは管理している兵器に片っ端から出撃指令を出している。

 これが世界最高峰のAIの最終手段かと目を覆いたくなる。

 一気に血の気が引き冷静さを取り戻す。


「や、やめろ!イクサなにやってんだ!?そんなこと最終決戦でもしたことないだろ、落ち着てくれ!」

―外部への連絡が一切できません.本体とのリンクが遮断されています.このままでは生存の危機に陥ります.これは緊急事態です.早急な事態の解決が必要です.あなたも『デイダラ』への出撃要請を.緊急事態により合体換装は許可はこちらで―.

「ことわる!非常時だからって手当たり次第に出撃要請を出すんじゃない!そんなに手当たり次第に呼んでどうする気だ?怒られるの俺なんだぞ、このポンコツっ!」


 常日頃、冷静なイクサの暴走に思わず語気も荒くなる。


―...申し訳ありません.想定外の事態の連続に解決案が提示できず多少のエラーが発生しました.修正しました.未知の転送には慌てないの項目が追加されました.

「わかってくれたならいいんだ。怒鳴って悪かった。」

―いえ、こちらに問題がありました。ではこれからどうしますか?さぁこのポンコツに天才をも唸らせる名案を提示してください.さぁ.

「いや、悪かったって、ごめんって。と、取り合えず歩こう!いつか森から出れるだろ?そしたら民家ぐらい見つかるさ」


ポンコツ呼ばわりを根に持つイクサに自分なりの名案を告げる。


―ひどい作戦ですね.なんでこんなことになって...これが世界最高峰のAIを従える者の作戦ですか.ですがこちらで解決策が提示できない以上どんな案でも採用するしかありません.


 ひどい言われようにしかめっ面作る男は採用された自身の名案に従い一人真っ暗な道を歩き始めるのだった。


  * * *


どれほど歩いただろう。―およそ507キロです.定期的に観測していますが民家はありません.

今何時?―暫定.21時22分です.電波を受信できないため修正ができません.空は明るいですね.

ここはどこ?―不明.座標喪失から156時間が経過しました.今だ森の中です.

俺は誰だ?― ユーザー名.『一条 秋丸(イチジョウ アキマル)』.どうしました.ついに名前まで忘れてしまいましたか?

歩き疲れた。―オールグリーン.あなたは健康体そのものです.異常はありません.引き続き名案を継続してください.

うるさい―はてな?音声は出力されていません.

 

 ぼんやりした思考に淀みなく回答してくる。なにも考えたくない。どこまで歩いても森だった。

 1週間近く歩き続けてもまだ森は広がっていた。歩いてきた道のりに辟易し、自身の服装をみてまた辟易とする。

 旅行へ行くはずだったアキマルの浮かれた服装は悪路に耐えられずにボロボロになっていた。

 靴底は剥がれ上側だけが足の甲にしがみついている状態になっていた。着ていた白地に色鮮やかな花の描かれたアロハは泥で汚れ木の枝に引っ掛けたのか所々破れていた。

 靴を脱ぎ捨て気分転換にと肩を回したり首を傾けたりと体をほぐす。体のパーツが定位置に戻る感覚が心地いい。


 そんなことを考えながら体を動かしていると横の茂みからガサガサと物音がし小柄な人影が姿を現した。

 未知との遭遇であった。



 仕様とか添削してたら一か月たったってさ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ