↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Code_Sakuya/レイラインの軌跡  作者: 阿僧祇瑛佑
<序章>消失 アセンションM_Sakuya

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/11

序章:消失 アセンションM_Sakuya

挿絵(By みてみん)

かつて、人類史の黎明において、

崇高な叡智を誇った文明が存在した。

そう──シュメール文明である。


彼らが粘土板に刻んだ天文学の見地は、

現代科学をも凌駕する精度を秘めていた。

シュメールは太陽系を“12の天体”として描き、

その中には肉眼では観測不可能な天王星・海王星までも含まれていた。


一方、現代天文学が確認した天体は

太陽・水星・金星・地球・月・火星・木星・土星・天王星・海王星、

そして準惑星・冥王星までの 10個 にすぎない。


しかし──

海王星の公転軌道には、説明不能な“わずかなズレ”が存在する。

その重力異常は、太陽系外縁部に

いまだ発見されていない巨大天体の存在 を示唆していた。


冥王星を含めても10天体。

シュメールが記した“12の天体”との差分──

11番目と12番目の惑星 は、

現代科学が追い求める ニビル と、

太陽の伴星とされる メネシス に他ならない。


不穏を秘めた名は…

古代神話に封じられたままでは終わらない。

数千年──いや、数十万年の時を超え、

いま、人類の前へと静かに姿を現しつつあった。


◆ プロローグ-1 ~消失事件発生~

メネシス遺跡内部は、

薄い霧のような光が漂い、

古代文明の残滓が静かに眠っていた。


調査隊のクルーたちは、

それぞれの担当区画へ散っていく。


「こちら、北側の柱群に入る。

 構造物は想定よりも複雑だ。気をつけろ。」


「了解。南側の壁面をスキャンする。」


そんな無線のやり取りが続く中──

ひとりの少女が、

遺跡の中央にそびえる“柱状の構造物”へと歩み寄った。


アイリス。

十六歳にして調査隊に同行を許された、若き研究者。


彼女の視線が、

柱の根元に落ちている“金属片”に吸い寄せられた。


──薄い。

──平たい。

──まるで、剥がれ落ちた“プレート”のように。


「……お父さん、これ……」


アイリスは拾い上げ、

すぐ近くで計測器を操作していた父へ声をかけた。


父が振り向き、

「どうした、アイリ──」

と言いかけた、その瞬間だった。


光が弾けた。


音はない。

風もない。

ただ、空間そのものが“抜け落ちた”ような感覚だけが残った。


「……え?」


父の手が、

娘の肩を掴むはずだった空間を虚しく切り裂く。


そこにアイリスはいなかった。


「アイリス!? 返事を──アイリス!!」


叫びが遺跡に反響する。


周囲のクルーたちも駆け寄り、

消失の瞬間を見た者たちは

言葉を失って立ち尽くした。


「今……確かにそこに……」

「光が……いや、記録に残っていない……?」

「スキャン反応ゼロ……どういうことだ……?」


混乱と恐怖が遺跡内部を満たしていく。


父は膝をつき、

ただ一点──

娘が立っていた場所を見つめ続けた。


一方その頃、

遺跡の広さに散開した二人のクルーが、

計器類を携えながら計測と探知を繰り返していた。


「ああ。測定値と比べて……形が変わって見える。」


「気のせいだろ。岩だ。自然の侵食だ。」


「……そうか?」


足元の砂粒が、風もないのに流れていた。

遺跡の輪郭だけが、呼吸するように揺れている。


「計測、入る。年代は──」


「……待て。値が……戻ってる。」


「戻ってる?」


「三分前のデータが、今、出た。」


計器の故障ではない。

ただ、過去が揺らいでいた。


「……おい、今、誰か……」


「何を言ってる。俺たち三人だけだ。」


「いや……“見られてる”気が──」


機器類にノイズが走った。

モニタ画面には


【File not data

All delete】


──その文字だけが、点滅していた。


◆<序章>

あの遺跡で起きた“揺らぎ”が、

どれほどの時代の果てに繋がっているのか──

それを知る者はまだいない。


時は、C.C(Cosmos Century)100年──。

かつて西暦と呼ばれた旧時代は、

激動の七十年を経て西暦2100年をもって終焉した。

その過程で、旧国連加盟国および関連機関は、

国境を越えた紛争と資源危機に直面し、

ついに“国家”という枠組みでさえ、

限界を認めざるを得なくなった。


そして西暦2101年──。

旧国連を母体とした統一国家体制が正式に発足し、

新暦「コスモ世紀(C.C)」が施行された。

いま、その新たな時代は一世紀を迎えようとしている。


それでも

人類は地球全土を埋め尽くすかの如く増え続け、

生活圏を広げつつあった。


時代が進むにつれ、社会の歪みは人々の足元に影を落としていく。

生産性と効率を追い求めるあまり、農業政策は再生能力を失い、

遺伝子組み換え作物の普及課もまた、環境の均衡を崩していった。

それらが複雑に絡み合い、積み重なった結果として、

貧富の格差はかつてないほど膨れ上がっていった。


科学と技術の躍進は、人類の焦燥に呼応するかのように、

栄華と先進性を極めていった。

それは、地球という器からこぼれ落ちた覆水のごとく、

文明を携えて旅立つ時代でもあった。


宇宙開発、ナノテクノロジー、量子コンピューター技術の革新。

量子テレポート理論の確立と運用は、

人々の生活圏を宇宙上と押し上げていく。

かつて月面に人を送り込むだけで精一杯だったテクノロジーは、

いまや太陽系外縁部へ届こうとしていた。


そして今─ー


調査隊の車列は遺跡へ向かっている。

砂塵を巻き上げながら、ローバーたちは静かに進んでいた。

大型地上走行型ローバーを先頭に小型のローバーが続く。

その統率された動きは、一糸乱れぬまましなやかに波を描き、

まるで一つの生き物の歩みのようだった。


低い唸りを響かせながら、

砂を押し分けるように車列は進んでいく。

その上を1機ーーいや数機の偵察ドローンが、

車列と同調するように彷徨いながら飛行していた。


ふと一機が進路先の一点を捉えた。

それを合図にフォーメーションを組み、

まるで戦闘機のロックオンさながらであった。


「ビンゴ!」

「このルートで間違いない」

コントローラーを強く握る伊織・レイヴンが呟く。

「……こんなところで役に立つとは」


その声にアリサが短く応じる。

「進路そのまま! 後続車に一斉通達!ーー 遅らせないように」


「どうだ!視認できたか?」

伊織は思わず前席の肩を掴んで揺らした。


「ちょっと!落ち着いてください。死にたいんですか?」

ローバーを操縦する少年は、

一瞬操作を誤りかけながらも視線を前方から外さず、淡々と返す。


「まだ視認できません。このまま進みます」


砂丘の向こうに、遺跡らしき影がゆらりと揺れて見えた。

車内の誰もが言葉を失い、ただその輪郭を追っていた。


計器の数値が、一瞬だけ逆向きに跳ねた。

すぐに元に戻ったが、誰もその理由を口にしなかった。


彼らはまだ知らない。

これから向かう場所で、何が待っているのかを。


これはここで起きたことなのか、

それとも“どこか別の場所”で同時に起きていたことなのか──

だれにも知る由がなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。