アユミ
栗木がウチの学校に転校してきてから数日が過ぎた頃。俺たちは会話をすることが多くなっていた。(てか、俺が勝手に話しかけていた)
それは、避難者ということで特別気を遣っていたからではない。ただ素直に楽しかったからだ。そんな5時間目の休み時間、栗木の席にて…
空翔「もう部活入った?」
栗木「…前の学校でバレーボールをやっていたから。バレー部に…」
空翔「好きなんだ?バレー(笑)」
栗木「…うん」
空翔「今日って部活何時に終わる?(ニコッと)」
栗木「…?」
空翔「学校終わったらさ、リュウジたちとタカオの家にご飯食べに行くんだけど行かない?栗木も一緒に」
栗木「…え!?」
空翔「あ~金?平気平気!タカオの奢りだから(笑)あいつ自分の店継ぐために料理の練習しててさ、そのついでにタダでご飯食べさせてくれるんだよ♪」
栗木「…で…でも…(汗)」
空翔「栗木、帰り俺らと同じ方向じゃん?そんなに遅くならないし、こっちのこと色々教えてあげたいし」
栗木「……(どうしていいかわからず俯いている)」
空翔「じゃ決まりね♪(ニィっと笑顔で)」
キーンコーンカーンコーン…(6時間目の授業が始まる呼び鈴の音)
空翔「タカオ、顔は五流だけど料理は一流だから(笑)放課後、教室で待ってるよん♪(自分の席に向かいながら)」
栗木「……あっ」
そして、6時間目が終わり放課後。リュウジを俺のクラスに呼んで、部活から帰ってくる栗木を待つ。
龍司「よくOKしたな、栗木ちゃん」
空翔「…あぁ、すごく喜んでたよ(教室の窓から遠くを見つめカッコつけながら)」
龍司「ウソつけ!(笑)強引に誘ったんだろ?」
空翔「バレた?(笑)」
龍司「ツトムとマヒロも部活終わったら来るってよ」
空翔「おぅ」
その後、2人で野球のソシャゲをやりながらたわいもない話をしていると、栗木が部活を終え教室に戻ってきた。時計の針は18時を指そうとしていた。
空翔「栗木お疲れ♪」
龍司「お疲れ(笑)」
栗木「…う…うん…」
空翔「腹減ったろ?(笑)」
栗木「……(照れたような顔をしながら微笑む)」
龍司「ンじゃ、タダ飯食いに行きますか!(笑)」
その時、1人の女子生徒が俺の教室に入ってきた。
亜弓「リュウ君!」
龍司「おー、アユミ。お前も部活終わったんだ」
亜弓「うん♪」
こいつの名前は3年5組の基野亜弓。
女子バレーボール部のキャプテンで、中2のとき俺と同じクラスだった。くっきりとした眉毛に吊り気味の目という顔立ちで、気が強くお喋りのうるさい女である。自己中な性格ということもあって、俺はあまり好きではないタイプだった。そんなアユミは、5人の女子グループのリーダー的存在でもある。
亜弓「廊下からリュウ君見つけたからさ♪最近話せてなかったから寂しかったよぉ(両手でウエーンと泣いているようなしぐさをする)」
龍司「あぁ」
亜弓「…あれ?栗木さん?てゆーか3人で何やってるの?」
栗木「……」
空翔「これから飯食いに行くんだよ」
亜弓「え!?栗木さんも?」
栗木「…はい」
亜弓「へ、へぇ…。大和はいいとしても、なんでリュウ君と栗木さんが一緒に?まだ転校してきたばかりだよね?どーゆー仲?」
龍司「友達(ニコッと)」
亜弓「クラス違うのに?(栗木に向かって)」
栗木「……(俯いている)」
空翔「俺がリュウジに栗木紹介したよーなモンだ。で友達になった」
亜弓「そ…そうなんだぁ…。リュウ君が栗木さんと仲良かったなんて知らなかったな…」
空翔「行こうぜ(栗木とリュウジに向かって)」
龍司「そうだな、じゃな(アユミに向かって右手を上げる)」
栗木「…あ…。お疲れ様でした…(アユミに向かってペコリと頭を下げる)」
亜弓「………」
空翔「今日は天ぷら食うかな~♪(教室の前のドアを出て廊下を歩きながら)」
龍司「俺は蕎麦にしましょか」
栗木「……(カケルとリュウジの後を付いて歩く)」
亜弓「………(その場に佇み何か言いたげな目で遠くから栗木を見ている)」
その10分後…。部活を終えて教室に戻ってきた寿司屋の息子。
孝雄「は…はは…。なんで置き去りにされてんの俺…シクシク(泣)(俺ン家に行くのに…)」




