福島原発
この日は始業式の翌日ということもあり、午前中で授業が終わった。そこで、俺とタカオは6組にいるリュウジを誘って学校帰り、タカオの家に行くことにした。その途中、俺は今日転校してきた栗木のことを話した。
空翔「ってわけよ」
龍司「へ~、福島からね。震災で大変だったろうからな」
こいつの名前は石母田龍司。
小3のとき、親の離婚を機に山形県から俺が通っていた小学校に引っ越してきた。同じクラスになった俺らは「格闘技が好き」ということで意気投合。2人揃って家の近所にあるキックボクシングのジムに通い始める。(リュウジは最初ラウェイ(ミャンマーの格闘技)をやりたがっていたがジムがなかった)
イケメンで喧嘩もめっぽう強く、頭脳明晰で運動神経も抜群。その容姿は、中1のとき「リュウジブーム」なるくだらない事象が起こり、他のクラスの女子たちが溢れんばかりに見に来ていたほど。また、足の速さも図抜けていて、中2の時、陸上部ではないのに全国大会に出場。100メートル走で10秒8という怪物記録を叩き出した。(当時、テレビのスポーツバラエティ番組に出て一般部門で優勝もしている)
だが、そんなこいつにも欠点はある。それは、ひっくり返るほどカラオケが下手(超音痴)なこと。チ○コが異常に右に曲がっていること。さらに過去、俺とのキックの試合で2勝1敗で負け越しているということ。
文武両道・容姿端麗のリュウジではあるが唯一、キックにおいては俺に敵わないのである。
龍司「妄想もそこまでいくと病気だな…」
空翔「…なんですと?」
龍司「なにが「俺に敵わないのである」だ目イボヤローが!」
伝え忘れていたが、俺は物心ついたときから甘い菓子をよく食べていた。(砂糖だけなめたり)その影響かどうかはわからないが、小学生のときから目の周りに白い小さなイボのようなものがポツポツと出来ている。リュウジが言っているのはこれのことである。
空翔「バカヤロー!目イボは甘党の勲章なンだよ!」
龍司「(目イボの勲章は無視して)キックの試合は俺が2勝1敗で勝ち越してんだろーが!女日照りのテメーが俺に勝てることって言やあ、オナニーのバリエーションくれーしかねーンだよ(笑)」
空翔「中防の分際で種まきまくってるエロタンポポに言われたかねぇ!淋病にでもなりやがれ…腐れチンポコハゲが(笑)」
龍司「誰がハゲだコノヤロウ…やンのかコラ!?」
空翔「上等だ…ヴォルグさん直伝のホワイトファング喰らわせてやるぜ!」
孝雄「いい加減にしろテメーら!!バカなことやってっと飯食わせてやンねーぞ!!」
空翔・龍司「…ご、ごめんなさい」
前述した通り、タカオの家は地元では有名な寿司屋だ。そのため、遊びに行くと期限切れの近い魚や余った食材を使って、俺たちにご飯を作ってくれる。
もちろんこれは、俺たちが強制的にさせているわけではない。タカオは将来、自分の意思で寿司屋を継ぐと決めている。ゆえに料理の練習も兼ねて、俺たちにご飯を食べさせてくれるのだ。
育ちざかりの俺らにとって、タカオん家でのご飯は至極のひと時なのである。そして、場面はタカオの部屋へ。
空翔「ふ~食った食った♪(爪楊枝で歯の隙間をシーシーしながら)」
龍司「いやぁ~満足満足♪(爪楊枝で歯の隙間をシーシーしながら)」
孝雄「で、カケル。お前、リュウジに栗木ちゃんのこと聞いたのか?」
空翔「おおそうだった!リュウジ。放射線ってのは何がヤベーんだ?」
龍司「病気のリスクかな。例えば、被ばく線量が500ミリシーベルトを超えると、白血球の低下で免疫力が下がって感染症にかかりやすくなる。1000ミリシーベルト以上になると、痛みや倦怠感といった自覚症状が出る。4000ミリシーベルトを全身に浴びると、被ばくした半数の人が骨髄障害で亡くなる、みたいなことが言われてる」
空翔「…そうなのか」
龍司「昔、日本がアメリカと戦ったとき、広島と長崎に原爆落とされたろ?」
空翔「大東亜戦争な」
龍司「あぁ。そのとき爆発直後に亡くなった人もたくさんいたんだけど、その後、放射線の後遺症で亡くなった人もたくさんいるんだよ」
空翔「……」
龍司「原発の仕組みは核兵器と同じだからな。一気にエネルギーを放出させれば原爆になるし、少しずつエネルギーを放出させれば原発として機能する」
孝雄「そうなの!?(知らんかった…)」
龍司「福島の第一原発が爆発したろ?ちなみにあれは、津波でぶっ壊れて爆発したんじゃない。厳密には、原子炉に海水が入って爆発を引き起こしたんだ」
空翔「へー…」
龍司「いずれにしても爆発したってことは放射線の灰が出てる。だから、それを避けるために栗木ちゃんはこっちに避難してきたってことだ」
空翔「なるほどな…」
龍司「向こうには親戚や友達がいただろうに。自分の生まれ育った地元をこんな形で離れるなんて辛いだろうな」
空翔「……うん」
孝雄「にしてもリュウジ、賢いなオメーは。さすが将来、自衛隊希望するだけのことはあるわ」
龍司「俺はこっちに引っ越してくる前、家が火事になってよ…そのとき助けてくれたのが、近くにいた自衛隊員の人だった。もう少し遅かったら、俺も親父もおふくろも死んでたに違いねぇ。まぁ、その後、親は離婚しちまったけどな…。」
空翔「……」
孝雄「……」
龍司「あの時のことは今でも脳裏に焼きついてる。近所の人はブルッて助けてくれなかったけど隊員さんは違った。火の海と化して煙で何も見えねぇ家の中に飛び込んで来てくれてさ。俺を抱きかかえて助けてくれた時、俺は心底男惚れしちまったわけよ」
空翔「お前、中学卒業したら自衛隊の高校行く気なんだろ?」
龍司「あぁ」
空翔「我が国が有事の時は、真っ先に俺を守ってくれたまえリュウジ中将」
龍司「世のため人のために役に立つ男になってたら考えといてやるよ(笑)」
孝雄「んがぁzzz…んがぁzzzz(チ○コをおっ勃てて寝ている)」
龍司「コノヤロー!人に話振っといてなに気持ちよく寝てんだ!(笑)(寝ているタカオにヒールホールドをかける)」
孝雄「え?え?いてててて!なななにすんだリュウジ!飯作ってやったろーが!」
龍司「ウルセー!それとこれとは話は別なんだよコラ♪」
孝雄「ひぃぃい!カケル助けろぉ~!」
空翔「栗木は辛い思いをしているのかもな…(物思いにふけている)」
孝雄「彼は上の空!」