送別会
送別会当日の土曜日。午前中で授業は終わり、俺は栗木に話しかけた。
空翔「栗木」
栗木「ん?」
空翔「今日、栗木に観せたいものがあるんだ(珍しく真面目な顔で)」
栗木「…え(照れた顔をしながら)」
空翔「お昼15時、風南区民館で待ってる」
それだけ伝え、栗木のもとを去る俺。
栗木「…ちょっと…大和君!?」
空翔「待ってるからな…(カッコつけながら栗木のほうを振り向いて)」
栗木「わ、わたし…!区民館の場所わからないんだけど…(申し訳なさそうに小声で)」
空翔「んがっちゅ!(ガシャッと前の机に突っ込む)だ…だよな!く、区民館はですね…」
胸がキリリと痛んだ。送別会当日を迎えたことで栗木と一緒にいられる時間が残り少ないことを再認識したからだ。俺は切ない気持ちをグッと奥に仕舞い、リュウジたちと一緒にツトムの家へと向かった。
龍司「ついに送別会かぁ…(しみじみ)」
真尋「リュウジ。なに辛気臭いこと言ってんのよ?こっちまでうつるでしょ」
勉夢「そうだよ(笑)笑って栗木ちゃん送り出すんだろ?」
空翔「だ…だってよぉお…(鼻水を垂らしすでに大泣きしている)」
真尋「…ここにもっと臭いヤツが(汗)」
勉夢「タカオは後で合流するからOKとして、忘れ物ないよな?」
タカオはこの日のために料理を作って、後で区民館まで運んでくれることになっていた。機材の準備を終えた俺たちは気持ちを切り替え、意気揚々と自転車で区民館へ向かった。(アンプ、マイク、モニターなどはスタジオからレンタルし、紙芝居も含めてツトムの兄ちゃんが車で運んでくれた)
区民館に着くと、送別会の飾りつけがされていた。それをしていたのはなんと、5人の女子バレー部員。アユミやミエたちだった。
空翔「アユミ!?なんでお前がここに!?」
亜弓「…吉崎に聞いたんだよ。栗木が引っ越すこと…」
真尋「アユミたち、あの件以来、愛子と話してないでしょ?もう筋は通したんだし、愛子もきっとわかってくれるんじゃないかなと思ってわたしが声かけといたの」
ミエ「わたしたち、もう1度ちゃんと栗木に謝りたくてさ。つけた傷は消せないけど、それでもやっぱりこのまま転校されたら一生後悔すると思ったから…」
他の女子部員「…わたしも。…わたしも謝りたい…」
空翔・龍司「フッ…。お前ら(微笑みながら)」
勉夢「よーし!じゃあ俺たちもセッティング始めようか(笑)」
こうして俺たちは栗木が来るまでの間、バンドのセッティングをする。後にタカオが親戚のおじちゃんの車で料理と飲み物を運んでくれた。これで送別会の舞台は全て整った。時計の針は14時45分を指そうとしていた。
その頃、栗木は。
栗木「ここら辺かな…(自転車を道路脇に止めキョロキョロし、スマホで区民館の場所を確認する)」
区民館の近くまで来ていた栗木は、白地にベージュのブロックチェックが入った膝上ワンピース。インディゴブルーのデニムジャケット。白の靴下にベージュのシークレットスニーカーという、フェミニンカジュアルなファッションをしていた。
その時。見知らぬ男2人組が栗木に声をかけてくる。
高1の金髪ヤンキー「どーしたの?お嬢ちゃん?(ニヤニヤ)」
高1の長髪ヤンキー「迷子にでもなっちゃったかなカナ~?(ニヤニヤ)」
栗木「……!(不安な表情でびっくりしている)」
金髪ヤンキー「なになに?ビビっちゃって可愛い(笑)」
長髪ヤンキー「俺たち全~然怪しい者じゃないよ~(笑)」
栗木「……(不安げな表情で俯いている)」
金髪ヤンキー「今から俺たちと遊ばない?(ニヤニヤ)」
栗木「…あ…あの…(怖くて言葉が出ない)」
長髪ヤンキー「いーじゃんいーじゃん!ね?遊ぼうよー♪」
栗木「……や…!」
長髪ヤンキーが栗木の腕を掴み、強引にナンパしようとする。その時、ナンパしている男たちの後ろから大きな影が差す。
金髪ヤンキー「…ん?(後ろの影に気付き)」
長髪ヤンキー「…なんだ?(後ろの影に気付き)」
???「うぉらぁあぁああ!!」
とっさに男2人組の後頭部を持ち、顔と顔をぶつけ合う謎の影。
金髪ヤンキー「ぶべい!!(お互い顔をぶつけ合う)」
長髪ヤンキー「えぎっ!!(お互い顔をぶつけ合う)」
栗木「…ほ!本城君!?」
栗木を助けたのは以前、アユミに協力していたリキヤだった。
力也「消えろ…。ぶっ飛ばされたくなかったらな…(ナンパヤローどもにガンくれる)」
金髪ヤンキー・長髪ヤンキー「ヒィイ!し、失礼しましたー!(ピュイーっとダッシュで逃げていく)」
栗木「……??(訳が分からず混乱している)」
すぐさま、リキヤを追って2人の男たちが現れる。
短髪ヤンキーのリキヤの子分シュン「リキちゃん…。急に走り出すからビックリしたよ…はぁはぁ」
力也「栗木が嫌がってそうだったからな。助けねーとって思ってよ」
そばかすヤンキーのリキヤの子分マサ「そうやっていつも勝手に無茶するんだから…はぁはぁ」
栗木「…あ…あの?(困惑した表情でリキヤに聞く)」
力也「俺ン家はこの近所でよ。今、こいつら(シュンとマサ)とコンビニに行く途中だった。そこで、たまたまお前を見かけたから来た。それだけだ」
栗木「ど…どうもありがとう…(ペコリと頭を下げる)」
シュン「ところで、なんでこんなとこにいるのお前?(栗木に向かって)」
マサ「そんなオシャレなんかしちゃって(笑)」
栗木「ふ…風南区民館に行きたいんですけど、迷ってしまって…」
力也「区民館に行きたいのか?なら近くだから案内してやる。付いて来い」
栗木「…え?い…いえ、でも…」
力也「ついでだ。気にすんな」
栗木「…あ、ありがとう本城君(ペコリと頭を下げる)」
それから栗木はリキヤたちに誘導され、区民館に着くことができた。栗木が来たことに気付いたアユミが外に出る。
亜弓「栗木!(区民館の入口から出てきて)」
栗木「アユミさん?どうしてここに…?」
亜弓「…いいからこっち来て」
アユミは栗木の手首を軽くつかみ、区民館の中へ連れて入る。そこには、ミエや他の女子部員たちが待っていた。
栗木「ミエさん?他のみんなも…」
亜弓「あんた。来週大阪に引っ越すんだってね…。吉崎から聞いたよ」
栗木「あ…。うん…」
ミエ「わたしたち。あんたにもう1度ちゃんと謝りたくて…」
他の女子部員たち「………(真剣な表情で栗木を見ている)」
亜弓「栗木…。あの時は本当にごめんなさい…」
ミエ「わたしも。ヒドいことしちゃってごめんなさい…」
他の女子部員「わたしも…!わたしも…!ごめんなさい!」
栗木「………」
しばしの沈黙。少し驚いた様子の栗木だったが、後にゆっくりと口を開いた。
栗木「もう…いいの…」
亜弓「……」
栗木「…だって今、話してくれてるから…(涙を浮かべて微笑んでいる)」
亜弓「栗木…(大粒の涙を浮かべ)」
ミエ「………(大粒の涙を浮かべ)」
栗木「それでもう、十分だよ(大粒の涙を流しながらニコッと微笑む)」
アユミ・ミエ・女子部員たち「栗木ぃ!ごめんね!(5人全員で泣きながら栗木を抱きかかえる)」
力也・シュン・マサ「(涙と鼻水を流しながら3人で泣いている)」
亜弓「…あれ?(リキヤがいることに気づき)なんでリキヤがここにいるの?」
力也「む。飯の匂いがしたからな(威張った感じで腕組みをしながら堂々と)」
しばしの沈黙。
亜弓・ミエ・女子部員たち「…ぷっ!なんだそりゃ!あっははははは!」
力也「栗木」
栗木「…?」
力也「俺もお前に謝りたいと思っていた。本当にすまなかった(深く頭を下げる)」
シュン・マサ「俺たちも。前は嫌なこと言ってごめんな(深く頭を下げる)」
栗木「…ううん。もう大丈夫(涙を浮かべながら微笑む)」
その時、舞台の垂れ幕がゆっくりと開いた。マヒロがマイクを使ってノリノリでMCを始める。
真尋「ヘイ!そこのガールズ・クライング!(泣いている栗木たちに向かって)」
栗木・亜弓・ミエ・女子部員たち「…!?」
真尋「青春してるかー!?(笑)」
亜弓・ミエ・女子部員たち「??イ…イエーイ!!」
栗木「……(唖然としている)」
真尋「まだまだ元気がないぞー?今日の主役ー!そこのワンピのあんただよ、愛子♪」
栗木「……(ハッとした表情で)」
真尋「青春してるかー!?(笑)」
栗木「イ…イェイ(照れくさそうに小さく腕を上げる)」
亜弓・ミエ・女子部員たち「あははははは!」
力也・シュン・マサ「わははははは!」
空翔・孝雄・勉夢「(舞台から見て笑っている)」
黒子姿の龍司「(笑)(出番がくるまで待機している舞台裏で話を聞いて笑っている)」
真尋「それじゃ1曲目!宇部奈央で「Believe in your companions!」」
勉夢「盛り上げていくぜ~!!」
亜弓・ミエ・女子部員たち「フォーウ!!(ノリノリで♪)」
力也・シュン・マサ「ピー!ピー!ヒューヒュー!(ノリノリで♪)」
栗木「…わぁ!(嬉しくて感動している)」
勉夢「ワン!ツー!ワン・ツー・三・四!」
ツトムの掛け声でエレキギターの爆音とともに送別会が始まった。この曲は栗木が好きな曲ということでマヒロが選曲した。
真尋「※☆△○□…♪(歌っている)」
勉夢「ジャンジャカジャンジャカ♪(ギターを弾いている)」
孝雄「△□☆※○…♪(コーラスを歌っている)」
空翔「カンココ♪カンココ♪(アゴゴベルを鳴らしている)」
大盛り上がりの中、1曲目が終わる。
栗木「わぁ~!パチパチパチパチ(笑顔で拍手をしている)」
亜弓・ミエ・女子部員たち「ヒューヒュー!パチパチパチパチ!」
力也・シュン・マサ「フォーウ!パチパチパチパチ!」
真尋「はい…。というわけで今日は愛子の送別会です(急に落ち着いた感じで)」
亜弓「急にテンション下げんなー!(笑)(野次を飛ばす)」
ミエ・女子部員たち「下げんなー!(アユミに続いてノリノリで)」
力也・シュン・マサ「わはははははは!」
栗木「(笑)」
俺・孝雄・勉夢「ぼわはははは!」
黒子姿の龍司「(笑)(出番がくるまで待機している舞台裏で話を聞いて笑っている)」
真尋「はは!じゃあ、乾杯しよーか?みんな紙コップ持った?(舞台から)」
栗木「……(ニコッとしながら紙コップを持つ)」
亜弓・ミエ・女子部員たち「持ったよー!(笑)」
力也・シュン・マサ「(ちゃっかり紙コップを持っている)」
真尋「では、乾杯の挨拶は料理と飲み物を提供してくださったタカオ君にお任せします♪」
孝雄「えぇ!?俺!?」
亜弓・ミエ・女子部員たち「ヒュー!タ・カ・オ!タ・カ・オ!(ノリノリでタカオコール)」
力也・シュン・マサ「タ・カ・オ!タ・カ・オ!(ちゃっかり参加しながらノリノリでタカオコール)」
栗木「(ニッコリと笑っている)」
孝雄「あーあー…(マイクのテストをする)…えー寿司屋の息子のタカオでございます。この度、振り返りますれば…栗木ちゃんと最初に出会ってから本日に至るまでの間…」
亜弓「堅い!(笑)(野次を飛ばす)」
ミエ「長い!(笑)(野次を飛ばす)」
空翔「オヤジ臭い!(笑)(ノリノリで舞台から野次を飛ばす)」
女子部員たち「あっははははは!」
力也・シュン・マサ「わははははは!」
栗木「フフフッ(笑)」
真尋「というわけで、大阪でも愛子の一層の活躍をお祈りして~…乾杯!」
全員で「カンパーイ!!(紙コップを上に上げる)」
栗木たちは客席から。俺たちは舞台にて紙コップを掲げみんなで乾杯をした。(リュウジは舞台の横で乾杯している)笑って飲んで食べてと盛り上がる中、2曲3曲と演奏をし、そして最後の曲となる。
真尋「それじゃラストの曲いくよー!最後はPORSONZのナンバーからImportant friends!」
亜弓・ミエ・女子部員たち「この曲超好き!ヒュー!フォーウ!(超ノリノリで♪)」
力也・シュン・マサ「フォーウ!ピーピー!ピーピー!(超ノリノリで♪)」
栗木「パチパチパチ!(笑顔で拍手している)」
真尋「ヘイ愛子♪カモーン!」
勉夢「ワン・ツー・三・四ー!」
ツトムの掛け声でImportant friendsのイントロが始まった。ここで舞台裏に控えていた黒子姿のリュウジが紙芝居を持って登場。同時にマヒロが舞台から客席に下り、栗木のもとへ歩み寄る。
真尋「愛子おいで(ニコ)」
栗木「…え?え!?(マヒロを見て驚いている)」
真尋「一緒に歌おう♪」
そう言いながらマヒロは栗木の片腕を掴み、舞台へと連れて上がってくる。
空翔・孝雄・勉夢「(演奏しながら舞台に上がってきた栗木を見てニコッと笑う)」
黒子姿の龍司「(栗木を見てニコッと笑う)」
栗木「(俺たちを見て照れながら笑顔になる)」
亜弓・ミエ・女子部員たち「栗木ー!ヒューヒュー!(舞台に上がった栗木と紙芝居を見てさらに盛り上がる)」
力也・シュン・マサ「フォーウ!フォーウ!(舞台に上がった栗木と紙芝居を見てさらに盛り上がる)」
マヒロは1つのマイクを使い、栗木の肩に腕をまわしながらノリノリで一緒に歌う。曲の歌詞に合わせてリュウジが紙芝居を演じると、栗木は涙を浮かべながらそれを見て笑顔で歌っていた。
栗木「○※△☆□…♪(歌っている)」
真尋「※☆△○□…♪(歌っている)」
勉夢「ジャンジャカジャンジャカ♪(ギターを弾いている)」
孝雄「△□☆※○…♪(コーラスを歌っている)」
空翔「カンココ♪カンココ♪(アゴゴベルを鳴らしている)」
黒子龍司「(紙芝居を演じている)」
亜弓・ミエ・女子部員たち「(ノリノリで楽しんでいる♪)」
力也・シュン・マサ「(ノリノリで楽しんでいる♪)」
最後の曲が終わった。
舞台を降りると、俺たちはたくさんの拍手で迎えられる。ハイタッチをし合い、その後、食べて飲んでしながらみんなで談笑していた。
空翔「なんでお前がいんだよ?(リキヤに向かって焼きそばを食べながら)」
力也「大和。俺は負けたと思っちゃいねーからな(イカリングを食べながら)」
空翔「答えになってません…(相変わらず会話のキャッチボールができねーヤローだ(汗))」
力也「…謝りたかったんだよ、栗木に(カケルを見ず真正面を向いたまま)」
空翔「?」
力也「そーゆーことだ」
空翔「ヘッ…(鼻で笑う)」
そんな話をしていると、栗木がカバンから何かを取り出した。
栗木「これ、よかったらみんなで…」
それは、手作りのチョコチップクッキーとプチクリームメロンパンだった。
真尋「これ、愛子が作ったの?」
栗木「…うん。来る前、時間があったから…」
みんなで栗木が作ってきてくれたお菓子を食べる。
空翔「メチャうまじゃん(笑)」
真尋「ホントだ、美味しい」
孝雄「こりゃ旨いわ(笑)」
亜弓たち「うん、美味しい」
力也「…(無言でムシャムシャ食べている)」
栗木「…よかった(ニコ)」
しばらくすると、栗木が神妙な顔つきで話を始めた。
栗木「あの…。みんな…」
全員が話すのをやめ、栗木のほうを見る。
栗木「今日は、こんな素敵な会を開いてくれて本当にどうもありがとう…(ペコリと頭を下げる)」
空翔「(ニコッと笑う)」
みんな「(ニコッと笑う)」
栗木「こっちにきて…。良いこともたくさんあった。正直、辛いこともたくさんあった…」
空翔「………」
みんな「………」
栗木「でも今、みんながこうして集まってくれてて。その中にわたしもいて。…少ししか居れなかったけど、他には代えがたい貴重な経験をさせていただいたと思っています…」
空翔「………」
みんな「………」
少しの沈黙。
栗木「みんなに会えてよかった。…この街にいたことは一生忘れません(涙を浮かべながら)」
空翔「(ニコッと笑う)」
栗木「本当に…本当にどうもありがとう…(微笑みながら大粒の涙を流し、ペコリと頭を下げる)」
真尋・亜弓・ミエ・女子部員たち「愛子…。栗木…(栗木を囲むようにして泣いている)」
孝雄・龍司・勉夢「(栗木を見て微笑んでいる)」
力也・シュン・マサ「うぅうう…(鼻水を垂らしながら泣いている)」
こうして、送別会は大成功で終わりを告げた。




