リンチ
翌日の朝。
教室に入ると、栗木が自分の席の前で佇んでいた。その様子をクラスの連中が余所余所しい態度で見ている。俺は栗木のもとに歩み寄り、朝の挨拶をする。
空翔「おはよう(栗木の席に行き挨拶をする)」
栗木「…おはよう」
クラスの様子がおかしい理由はすぐにわかった。栗木の机には「被ばく女」「栗菌」「消えろ」などの文字がチョークで書き殴られていた。ご丁寧に椅子までチョークの粉まみれになっている。
栗木「………(悲しい目でうつむいている)」
空翔「ギロリ…(クラスの連中を睨む)誰?これ書いたの?」
クラス「………」
空翔「誰が書いたって聞いてンだよ!!答えろコラァ!!」
クラス「ビクッ!!」
少しの間、クラスが静まり返った後…。
クラスの女子「わ…わたし…」
空翔「…?」
クラスの女子「朝、バレー部の女の子たちがウチの教室から出てくるの見たけど…」
栗木「………」
空翔「そうか…。怒鳴ったりして悪かった…。みんなごめん…」
そう言って、無言のまま自分の席に行く俺。自分の机と椅子を持って再び栗木のもとへ。
空翔「ガシャ(俺の机と椅子を栗木の席に置く音)」
栗木「…大和…君?」
空翔「(落書きされた机と椅子を持って自分の席に置く)」
クラス「………」
空翔「(そのまま粉の椅子に座り、制服の袖で机の落書きを擦って消す)」
栗木「………」
その時、朝の部活を終えたタカオが教室に戻ってくる。席に座っている俺を見て…
孝雄「ぼわはははは!粉まみれじゃねーか?朝からなんのチョーク(ジョーク)だよ?(笑)」
空翔「ほぉあたぁ!!(タカオにガゼルパンチを喰らわす)」
孝雄「なにをぱら!!(廊下側の壁に吹っ飛ぶ)」
空翔「………」
栗木「………」
クラス「………」
孝雄「…ム…ムゴい(大泣)」
栗木へのいじめは露骨にひどくなっていた。確証はないが、タカオが言っていた通り、俺はアユミが主犯格ではないかと睨んでいた。思い返してみれば、俺らが栗木を連れてタカオの家で歓迎会をやった日。その次の日から、栗木の様子はおかしくなっていた。
歓迎会の日、アユミはリュウジと栗木の仲を執拗に追及していた。あの時は何とも思わなかったが、よくよく考えてみればアユミの態度には違和感が残る。だからといって、本人に直接聞いても白を切られるのは目に見えている。
その日の放課後。俺は1人教室に残り、どう対策すれば良いのかを考えていた。そんな中、ついに事態は体育館横の女子トイレから大きく動き出す。
亜弓「気に入ってくれた?(笑)朝のプレゼント?」
栗木「……」
亜弓「他の生徒に病気がうつらないようにわざわざ教えてあげたんだから感謝してよね(笑)」
栗木「……」
亜弓「あんたさぁ…。昨日、大和と公園で話してたらしいじゃん?」
栗木「……」
亜弓「黙ってんじゃねーよ!見たヤツがいるんだよ!あんた大和にあたしたちのことチクったんだろ?」
栗木「…(ヤマトに言われた言葉を思い出す)(自分の気持ちに嘘をついた人生なんてクソだと思ったから)下唇をギュッと噛み、両の拳を力強く握りしめる」
亜弓「なんとか言えよお前!」
栗木「…わ…わたしは…(うつむいてプルプル震えながら)」
亜弓「…?」
栗木「わたしは…被ばく女じゃない。栗菌なんて名前じゃない。病気でもないし汚くもない。それに、石母田君だって本当の友達です!(キッとアユミを睨みながら真剣な顔で)」
亜弓「………(あっけにとられる)」
ミエ「………」
栗木「……(アユミたちを睨み続ける)」
亜弓「…な、なに開き直ってんの?いじめられっ子のクセに」
栗木「……」
亜弓「(目でミエに何か指示を送る)」
ミエ「(無言で頷いて姿を消す)」
亜弓「あんた、大和になにか吹き込まれたワケ?」
栗木「………」
女子達「それとも、惚れてるとか?(笑)」
栗木「………(俯きながら頬を赤らめる)」
女子達「マジで~!?あんなバカでエロしか取り柄のないサルに?あり得ねぇ~!きゃはははは!」
栗木「…ヤマト君は(うつむき震えながら)」
女子達「?」
栗木「バカなんかじゃない!」
女子達「はぁ?あいつ偏差値低いし(笑)」
栗木「ヤマト君は、学校の授業では学べない「人の温かさ」を私に教えてくれます!」
亜弓「プッ!人の温かさだって!超ウケる!キモいんですけど!(大笑)」
女子達「きゃはははは!」
栗木「…取り…消して(俯いたまま拳を握りしめ)」
女子達「あん?」
栗木「今言ったこと取り消してください!(そういって1人の女子の体操服の袖を両手で掴む)」
女子達「さ、触んなよ!菌がうつるだろ!離せよ!」
その時、1人の女子生徒がデッキブラシの柄で栗木のお腹を突く!
栗木「ドスッ!うっ!!(苦悶の表情でお腹を押さえうずくまる)」
亜弓「さっきから聞いてりゃ生意気なこと言いやがって!ウぜんだよお前!」
女子達「………」
亜弓「オラオラオラ!!(栗木のお腹をモップの柄で何度も殴打する)」
栗木「ドスッ!ドスッ!!はぅっ!うっ!うぅっ!!」
女子達「…ア、アユミ!それはちょっとやりすぎじゃ…」
亜弓「あんたたちも見てないでやれよ!」
女子達「…で、でも…」
亜弓「あたしの言うことが聞けないの!?いいから早くやりな!」
アユミに指示された女子部員たちは、それぞれモップを手にする。
亜弓「顔はナシ。バレたら続けられなくなるから…(ニヤリ)」
女子達「………」
亜弓「やりな!」
栗木「…う…ぅう…(顔を歪めながらお腹を抑えてうずくまっている)」
と、女子部員たちがモップで栗木に襲い掛かろうとしたその時!突然1人の女子部員が猛烈に吹っ飛ぶ!
女子部員「たわばっ!!(吹っ飛んでゴロゴロ転がる)」
他の女子部員「!!?」
亜弓「な、なんだ!?」
???「あんたら…わたしの友達になにやってんだよ?(怒)」
そこに現れたのは…。




