発覚
サブタイトルを「ば れ た」にしようか悩みましたが、統一感を優先することにしました。
こんにちは皆さん、リーゼロッテです。あれからまた一つ年を取り、6歳になりました。
そんな私は現在、馬車に乗って・・・両親と共に王城へ連行されています。
今朝方、我が家にヴィルヘルム王太子殿下からの強制出頭命令が届きました。しかも、伝えに来たのは近衛騎士団長率いる10名の精鋭達です。両親と力を合わせれば勝てないとは言いませんが、相当厳しい相手です。普通の貴族相手なら間違いなく過剰戦力でしょう。
ここまでして連行するなんてどんな用件なんでしょうね、いやまあ心当たりなんて一つしかないわけなんですが。
はい、というわけで王城に着きました。今世では初めて来る所ですが、前世ではしょっちゅう遊びに来てましたので勝手知ったる他人の家というやつです。なので逃走経路も何通りか思いつきます。いざとなったら王太子殿下を人質に取って脱走してやりましょう。うふふ。
まあ、おそらくそんな事態にはならないと思いますがね。本格的に処罰する気なら王様直々の出頭命令になるはずです。それがお父様の親友でもある、王太子殿下からの命令になっているということは手心を加えてくれるということなのでしょう。だよね? そうじゃなかったら本当にやっちゃうよ? 突然大泣きして動揺させて、隙を突いて殿下を人質に取っちゃうよ? いや、どうせそんなことをしても無駄なのでしょうけどね。今頃我が家はきっと包囲されているのでしょうし、家に残ることを許されたベルンハルトは・・・人質ということで間違いないのでしょうから。
そんな益体もないことをつらつらと考えているうちに殿下の執務室の前に着いてしまう。さあ、いい加減冷静になろう。ここでの対応を誤れば、今後の私の活動に支障を来たす。せっかくここまで順調に来たのだし、今更邪魔されるわけにはいかないのだ。
両親に続き、意を決して室内に入る。殿下は休憩中であったのか葉巻を燻らせていた。鮮やかな銀髪に新緑を思わせる碧の瞳、そして優し気な口元とアルとそっくりなヴィルヘルム殿下の顔を見て、懐かしさと切なさと、そして恋しさが混ざり合ったような感情が込み上げてくる。この城の中に居るであろうアルに会いたいと、そう思う気持ちを無理やり心の底に押し込み、気を取り直す。
「ああ、よく来てくれた。リーゼロッテ嬢とは、初めましてだな」
砕けた殿下の口調に胸を撫で下ろす。これはこの場が非公式な場であると言外に伝えてくれているのだろう。とりあえず希望が持てそうでよかった。
その場で軽くスカートをつまみ、膝を曲げ、頭を下げて挨拶する。貴族令嬢らしい振る舞いに関しては、前世で散々繰り返していたこともあり6歳の子どもにしては洗練されているとの評価を貰えていた。
「お初にお目にかかります。ジークムント・フォン・ヴィッテルスバッハ侯爵が娘、リーゼロッテでございます。本来ならば昨年の内にご挨拶に上がらなければならないところ、ご挨拶が遅れまして誠に申し訳ございません。」
本来であれば、貴族の子どもは5歳までに王家への挨拶を済ませる。どうせ仮病だったのは見抜かれているのだから、下手な言い訳をせずに詫びることで少しでも心証を良くしよう。
「利発なご令嬢じゃないかジーク。どこがじゃじゃ馬なのだ?」
ほうほうなるほど、父とは後で語り合う必要が有りそうだ、主に拳で。
「いや、まあ・・・それはともかく。ヴィル、隠していたことは謝る。だからこちらの事情を聴いてくれないか」
「ああ、そのために呼んだんだ。じっくり聴かせてくれ」
こうなってしまえば私にできることは、もう何も無い。父は全てを包み隠さず明かすことを選んだらしい。私と、私に関連する全てのことを搔い摘みながら話していっている。
そういえば、一つ疑問に思っていることがあるのだ。前世では、殿下は国王として即位されていた。であれば何故・・・あの日、あの戦勝式典の場に居なかったのだろう? 王国が救われた記念すべき式典なのだ、国王が居て然るべきであるのに。国王の欠席に言及することなく進行された式典は、今考えればおかしい。
そんなことをぼんやりと殿下の顔を見ながら考えていると、ほんの一瞬だが忌々しそうな表情を殿下が浮かべたことに気付いた。話はちょうど聖女ユミの所に差し掛かっていた所だった。あの聖女について、殿下はこの時点で既に何かを知っているのだろうか。考えてみれば初代の聖女は王家に関わりの深い人物である。何かしら王家にしか伝わっていない事柄があっても不思議ではないだろう。私は殿下の表情の変化を見逃さぬように集中する。どんな単語に反応を示すか見落とさないためだ。
しかし結局それ以降、殿下は特に目立った反応を示すことなく、父の説明が終わる。すると殿下は、天井を見上げ大きく深い溜息をついた後、王太子として口を開いた。
「事情は概ね理解した。俄かには信じられぬ事も多いが。今の話を前提として動くよう陛下と相談する。魔物の大量発生と、魔王と呼ばれる個体について、そしてそれらとの戦いを詳細に纏めた物を至急提出せよ」
その言葉に私たちは驚く。魔物の件は国の一大事だ。だから、私達だけではなく可能であれば国全体として対策を練ることが望ましかった。しかし、どうやって未来に起こることを信じさせるかが問題であったのだが、それを殿下はあっさりと信じた上、国として動くと言ってくれているのだ。
「また,リーゼロッテ嬢が禁を破り霊獣と契約したことについても、不問とするよう陛下を説得しよう。さらに、リーゼロッテ嬢を鍛える教師となる者を選んで派遣するよう手配しておく」
こちらは12歳前に霊獣と契約したことについて、不問として貰うだけで御の字と考えていたのだ。であるのに、ここまでされればいくらなんでも優遇が過ぎる。今までの話に、なにか知られては問題となることでもあるのだろうか。思わずそう訊こうとする私を制するように、殿下は有無を言わさぬ口調で言った。
「よいな」
これは何も訊くなということだろう。そうまでされてしまえば私達ではどうすることもできなかった。
ここまでが順調だったなんて両親に言ったら卒倒するでしょうね。
それと会談の場面は次話に続きます。




