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5歳

ようやく恋愛らしい所を載せられました。

 私がく~ちゃんと契約したあの日から1年経ち、私は5歳になった。


 あれから私は魔法の特訓を受ける日々を続けている。前世の記憶と経験のおかげで、契約直後から初級程度の魔法知識と中級よりやや上程度の制御能力を身に着けていた私だが、まだまだ学ぶべきことは多かった。


 そもそも貴族の子どもは通常であれば、王立学園の卒業年齢である18歳までじっくりと知識と制御を学んでいくのだ。通常であれば6年で学ぶべきところを、前世では2年半程度しか学んでいない段階で前線に飛び出して行ったのだから、私の魔法知識は中途半端と言わざるを得ない。


 一方で魔法制御に関しては実戦の中で鍛えられており、一人前と言われる中級よりもやや上という評価を貰うことができた。とはいえ、両親は共に上級の中でも屈指の実力を持つと言われており、そんな両親から見ればまだまだ私はひよっこなのであるが。


 ただし、私の長所である魔力量は1年で飛躍的に増大しており、この点については既に両親にも匹敵するほどの量となっていた。ちょうど体の成長が著しい時期にあたるからか、前世と比べても魔力量の成長が著しいのだ。これは嬉しい誤算であった。前世では最終的に、歴代でも5指に入ると言われるほどの魔力量を得ることができていたのだ。それをも凌ぐ成長度合であれば、きっと私はあの聖女をも上回る絶大な力を手にすることができるだろう。


 その辺りのことはとても順調と言って良いのだが、問題となっていることもある。私が外に出ることができなくなってしまったのだ。霊獣と契約をした者は魔力に関する感覚を得る。そのため大人の貴族と会えば、私が既に霊獣との契約を済ませていることが分かってしまう。そして、契約の儀式に関する制度が整備された現在では、12歳になるよりも早く契約の儀式を行うことは禁忌とされているのだ。最悪の場合家の取り潰しも有り得るため、あれから私は一歩も屋敷の外に出ることなく今日まで過ごしてきた。


 前世では禁忌だ何だと言っていられなくなった後の環境に長くいたこともあり、強大な力を得て魔物討伐で活躍していれば認めてもらえるだろうと、私はその程度にしか考えていなかった。しかし現時点で王国は、平和そのものであるためそのような考えは通用しないと両親に窘められた。そういった、私一人では気を回せない部分をしっかりと両親が対策してくれているのだから、やはり思い切って打ち明けて正解だったのだろうと思う。王国貴族の立場を失えば安心して力をつけることが出来なくなってしまう。危ない所だった。


 そんな事情のために、私は一般的にはここ1年、病気で臥せっていることになっている。王家や他の貴族家への挨拶など、貴族的なことができないことは問題ではあるのだが、今世ではまだ彼、アルフレート王子に会わずに済んでいるので私としては助かっている部分もあった。


「アル・・・何であんな事したんだろう」


 1年間目を背け続けて来たが、いい加減あの日起こった事と向き合うべきだろう。そう決心した私は、気力を補充するためにく~ちゃんに抱き着く。樽くらいのサイズまで大きくなったく~ちゃんは今が一番抱き心地が良い時期なのだ。


「グェ~」


 く~ちゃんが尻尾でペシペシと抗議してくるが、構わず抱きしめる。私は暫くそのままゴロゴロと転がった後、く~ちゃんのプニプニしたお腹を枕にして考え事をする体制を整えた。




 前世では私と彼は「アル」「リズ」と互いに愛称で呼び合う仲であった。正式に婚約者となったのは12歳の時であるが、そのずっと前から私たちは頻繁に会っては一緒に学び、遊び、悪戯をしては叱られるなどして仲を深めていったのだ。


 婚約直前のとある事件が原因で大喧嘩の末に、好意を伝え合うなんてこともしたのだ。その事件というのは、彼が霊獣との契約の儀式に失敗したというものだ。いや、失敗という言い方は正確ではない、彼はきちんと生還したのだから。だが、彼は霊獣と契約することができなかったのだ。普通であれば霊獣と契約できなかった時点で生還は不可能である。それなのに無事に生還するなどというのは前代未聞の出来事であり、皆が首を傾げた。まあ、その後の経緯を見れば聖女が絡んでいたのだろうと想像がつく。現に救国の聖女ユミは、彼と契約するために”ニホン”から召喚されたと言っていたそうなのだから。


 とはいえ、その時点ではそんなことは分かるはずもなく、王族であるにも関わらず霊獣と契約できなかったことで彼は劣等感にさいなまれていた。それが切欠で大喧嘩をすることとなるのだが、自分の気持ちを自覚し始めていた私は、最終的に彼自身の良い所を挙げていき、そんなあなたが好きなのだと彼に告白をした。そして、彼もそれに応えてくれ・・・こっぱずかしいのでこのくらいとして、とにかく前以上に彼と私は親密になったのだった。


 ただ、このことは王位継承順位に悪影響を及ぼした。その当時は彼の祖父であるカール王が存命であったため、うやむやにできていたのだが、私の両親を始めとした多くの貴族が戦死したあの戦いで、カール王も戦死してしまったためにそうもいかなくなってしまった。彼の父であるヴィルヘルム王太子が新たな王として即位したのだが、新たな王太子に指名されたのは彼の従兄であったのだ。このためこの時点で婚約を白紙にすることも打診されたのだが、私が断固拒否したため、婚約が破棄されることはなかった。ちなみに彼が王太子に指名されたのは、聖女と契約したという話が広まった後のことである。


 さらに、弟まで亡くなってしまった後には、私は彼への精神的依存を深めていった。


 このような関係であったために、あの日の彼の行動は未だに信じられないという思いが強い。裏切られたことによる悲しみと怒りがある一方で、何か理由があったのではないかということも考えてしまう。自分自身が被害者であったのに現実感が薄く、ともすれば全部夢だったのではないか、そんなことまで考えてしまう。ぐるぐると思考が絡まっていき、挙句の果てには、もしかして気付かぬ内に私が何かやらかした所為ではないか、なんてことまで考えてしまう有様であった。


 結局色々と想像はできても、彼がなぜあんなことをしたのかなんて断定することは土台無理な話だったのだろう。最終的に私は、意趣返しも兼ねて・・・分からないなら本人アルに直接訊いてみればいいや、なんて考えるのであった。

補足:現時点ではアルフレートは王子であるためそう表記しています。ややこしくてすみません。

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