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国王

 母が団長を治療している間、私はマリアに手伝ってもらい、ボロボロになってしまった衣服を着替えていた。


「お嬢様、できればあんな無茶はしないでくださいませ。見ていて胸が張り裂けそうでございました」


 私の髪を梳きながらマリアが心配してくる。


 無茶か・・・、まあそうなんだろうな。まだ前世の感覚のせいで意識は薄いのだが、少しずつ無茶と言われる基準が分かり始めていた。まあそれも、実際に戦闘中となると頭の片隅に追いやられてしまい、現状あまり意味はないのだが。


 まあ、これに関しては私の心理的問題もある。前世では、これをしておけばという後悔が多すぎた。ゆえにどうしても・・・、無茶を通さなかったせいで後で後悔するのではないかといった恐怖が抜けないのだ。


「ごめんね、まだしばらくは無茶をすると思う。でもきっともうすぐ終わるから」


 そう、もうすぐ終わるのではないかと思う。今回の事で王家は私の力をしっかりと把握するはずだ。ならばきっと残りの封印の防衛も任せてくれるに違いない。封印さえ守り切れば、それで私たちの勝利。私たちの暖かな暮らしが脅かされることはない。


―――なのに、こんなにも胸騒ぎがするのはなんでだろう?




 身なりを整えた私は、両親、そして団長と共に王宮を訪れていた。どうも私が団長に勝った場合、王宮へと連れてくる手はずになっていたらしい。


 謁見の間に入る。その部屋は城の中で一番豪奢できらびやかな部屋だ。部屋の奥には聖女と王国の守護龍バハムートが描かれた荘厳な絵が飾られている。あれ、おかしいな? 前世ではバハムートしか描かれていなかった気がするけど。それにバハムートってあんなに黒かったかな・・・。


 みんな気にしている様子はないし記憶違いかな?とりあえず忘れ、中で待つ人物に意識を向ける。


 中に居たのは、国王カール陛下、王太子ヴィルヘルム殿下、そして宰相ゲオルグ・フォン・サヴィニー侯爵だった。陛下とサヴィニー侯爵とは、今世では初めて会うが、いずれも懐かしい人物だ。


 前世では陛下とは国王という立場で会ったことは1度しかなく、孫を甘やかしに来るお爺ちゃんという印象が強い。アルと一緒に随分と遊んでもらったものだ。


 そして、サヴィニー侯爵は王立学園の寮で同室だったお友達、ハンナ・フォン・サヴィニー侯爵家令嬢の祖父だ。夏季休暇にハンナちゃんの家に遊びに行った際、なにかと良くしてくれた覚えがある。


 そしてサヴィニー侯爵は、魔王の出現と魔物の大発生後の乱れた国内政治をなんとか切り回した人物だ。食料も物資も人手も、なにもかもが足りない中必死で国を維持し、最後は過労で世を去ったと聞いた。


 私が懐かしさに浸っているうちにフリードリッヒ団長が報告を済ませていたようだ。


「ほう、大分強くなったとは聞いておったがお主を倒すほどか、フリードリッヒ」


 陛下は愉快そうに言う。


「は、左様にございます」


「そうか、ならば褒美を与えねばならんな。まず、ジークムントの謹慎を解く、その上で・・・、魔王の封印について残りの3箇所を教えるゆえ、その守護の役目を与える」


 ようやく残りの場所が分かるのか。とりあえず私は安堵した。なぜ、すぐに教えてもらえなかったのかということと、父が謹慎の措置を受けたことなど王家に対する不信感はある。だが、とりあえずは一歩前進したことを私は喜んだ。


「それで残りの封印の場所であるが。まず、ここにいる宰相の領地ボーデン湖リンダウ島の地下遺跡。これが南の封印だ」


 なんと、サヴィニー侯爵家の領地にあったのか。そういえば前世でハンナちゃんの家に遊びに行った際、地下遺跡の入り口を見た覚えがある。そういえば、探検してみたいと冗談で言ったらすごい剣幕で怒られたな。なんでそんなに怒るのかと思ったが、そういう事情だったのか。


「次にエルツ男爵家の元居城、エルツ城跡だ。これが東の封印だ」


 そういえば幽霊が出るという噂の廃城が、東の方にあるという話を聞いた覚えがある。そこがそうか。


「最後はバーデン伯爵家の領地シュヴァルツヴァルトの森の中心にある遺跡。これが北の封印だ」


 あの迷い込んだら一生出られないという森か。なるほどどこも人が寄り付かない場所だ。封印を隠すにはちょうどいい場所だろう。


「そしてお前たちも知っている西の封印も合わせて4箇所、これが魔王の封印のすべてだ」


 そこまで陛下が言ったところで、突然く~ちゃんが姿を現す。私の許可なしに、く~ちゃんが皆の前に出てくるなんて珍しい、なんだろうと思っていると。


「グェ!」


 違う!と、く~ちゃんが叫んだ。


「グェグェ~グェ!」


「リーゼロッテ嬢、クリスタルドラゴンはなんと言っておるのだ?」


 王太子殿下が通訳を求めてくる。私はく~ちゃんの言っている内容に混乱しつつも、なんとか言葉にする。


「封印は・・・5箇所? この城・・・王城の地下にもある?」


 私の言葉を聞いた陛下と王太子殿下の雰囲気が変わったのが分かった。


 まさか・・・、本当なの?

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