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聞き取り

 私と殿下は、しばし見つめあった後、同時にく~ちゃんに目を向ける。く~ちゃんはキリッとした表情で、ずっと殿下を指差し続けていた。


「え、ええと・・・、私がリーゼロッテ嬢を過去に戻したということなのか? 自分自身で処刑しておいて?」


「グェ!」


 殿下の疑問にく~ちゃんが勢い良くうなずく。どうも嬉しそうにしている気がする。上手く言えないけれど、長年の鬱憤を晴らせたかのようだ。


「どうしてそんなことになったのかはさっぱり分からんが、未来の私はそんなことができるようになるというのか・・・」


 殿下が複雑そうな表情でつぶやく。


「グェ!」


 だが、そのつぶやきにく~ちゃんが返したのは、2度目のバッテンだった。


「私自身ができるようになるわけではないということか? ますますどういう状況か分からんな・・・」


 殿下は腕を組んで考え込んでしまう。一方、私はそれどころではなかった。


「く~う~ちゃ~ん、なんでそんな大事なことを今まで教えてくれなかったの!」


「グェ、グェ」


 く~ちゃんは両腕を合わせて頭を下げて謝ってくる。そんな仕草も可愛らしい・・・が、だ、だまされないんだから!


「殿下。本日はこれにて失礼させていただきます・・・、この不義理な龍を問い詰めねばなりませんので」


 そろそろ良い時間でもあるしさっさと帰ろう。いやー、今夜は徹夜かな、く~ちゃん?


「あ・・・ああ、何か新しいことが分かったら私にも教えてくれ。それと・・・、手加減はしてやれよ」


「うふふ・・・」


 殿下の言葉を笑顔でごまかした私は、く~ちゃんの首根っこをつかんで歩き出す。


「グェーーー!!!」


 く~ちゃんの悲痛な叫び声は王城内の隅々まで響き渡ったそうな。




「そう・・・、じゃあ結局今の段階で他に話せることはないのね?」


「グェ~」


 く~ちゃんが申し訳なさそうに鳴く。


 夕食後私はく~ちゃんから、どうして今まで大事なことを隠していたのか、他に隠していることは無いのかを訊いていた。そして、時間をかけて何とか聞き出せたことをまとめたのが次だ。


・く~ちゃんも前世の記憶を持っている。

・隠そうとしていたわけではなく、事情があって話せなかった。

・今はまだその事情を言うことができない。

・特定の条件を満たせば助言ができる。

・その条件を事前に教えることはできない。


 聖女の名前については、私自身が封印の石碑を見ることが条件だったそうだ。実は、あの夜私が目を覚ましたのは偶然ベッドから落ちたのではなく、く~ちゃんが私を落としたからだそうだ。最初は普通に起こそうとしたが、揺すっても叩いても私が起きなかったためやむなくベッドから落っことしたらしい。それで、ほめてほめてという態度をとられても正直困るのだが・・・。


 私が処刑後、4歳に戻ったことについては、私自身がそれについて疑問に思うことが条件だったらしい。真っ先にこれを伝えられるだろうと思っていたのに、なかなか疑問に思わないので焦ったと言われてしまった・・・。そんなこと言われてもー。


 あとは、一番気になっていた昼間の続きについてだ。結局私は何の力で4歳に戻ったのか、アルはなぜ私を処刑したのか、そのあたりについて色々と聞いたのだが、どれも話せないとのことだった。


 最後に、前世ではずっと私と一緒にいたく~ちゃんが、なぜ私の知らないことを色々と知っているのかも気にはなるのだが、それもまだ言えないそうだ。


 今回聞き出せたのはこれですべてだ。もっと色々と聞けるかと期待していたのだが、まあ仕方がない。く~ちゃんが私に嘘をつく訳がないし、なにより痛々しいほど申し訳なさそうに謝られたのだ。本当にどうしようもない事情があるのだろう。


 私は謝り続けるく~ちゃんをなだめ、一緒に眠りについた。

く~ちゃんにこう言われた、というのは聞き出した内容を主人公がつなげたものです。実際の会話はもっと断片的でジェスチャーも混じっています。

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