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相談2

 私たちは終始無言でお茶を飲んだ。この後にする話は、それだけ気が重くなる話だからだ。聖女は、私の中でいまだに苦手意識が強い・・・トラウマというのだったか、そういった存在だった。


 だから、少しでも先延ばしにできるよう本当に少しずつ飲んでいたが、ついに飲み終わってしまう。私は覚悟を決め、口を開いた。


「殿下は、初代聖女の名前を知ってた?」


「いや、知らなかった。それに・・・、名が伝わっていないことになぜか疑問を持たなかったな」


 聖女の名が刻まれていたのは石碑の中に埋め込まれていた魔石であり、刻まれていた文字も古そうな感じがした。とするとずっと昔に刻まれたものなのであろうから、初代聖女の名前もユミだったと考えるのが自然だ。


 だが、なぜ前世で召喚されていたあの聖女と同じ名前なのだろう。訳が分からなかった。


「まず、考えられるのは偶然の一致だな。私以外にもアルフレートという名前は多い。だから、たまたま同じ名前だっただけというのはあり得る話だろう」


 確かに可能性が一番高いのはそれだろう。だが、どうにもしっくりこない。


「逆に”ユミ”という名前が聖女に選ばれる条件とか」


「ふむ、なるほど。その解釈でも筋は通るな」


 まあ、断定する材料が欠けているのだ。結局のところ分からないという結論しか出すことができない。


「実は同一人物だった!・・・とか」


「そんなはずがないだろう。初代聖女は三百年も昔の人物なのだから、とっくに死んでいる」


 ですよねー。


 まあ私が直接見たわけではないが、前世でアルが聖女ユミを召喚したところは多くの貴族が目撃していた。それに彼女は私と同じくらいの年齢だったし。


「とりあえず確実に言えるのは、初代聖女が魔王の封印を施したということだな」


 魔王の封印に刻まれた聖女の名。たしかにそう解釈するのが自然だろう。だが、私はどうにも・・・違和感を拭い去ることが出来なかった。




「そういえば前々から気になっていることが一つあってな。ついでだから言っておきたい」


 はて、ほかに何かあっただろうか。まさか・・・、毎回お菓子のお代わりを要求するのが問題だとでもいうのだろうか。お代わりは1回までで我慢してるんだから、それぐらいいじゃないか。


「また何かくだらないことを考えているようだが、真面目な話だ。」


 そう言って殿下はしっかりとこちらを見つめてくる。私もふざけるのはやめて真剣に聞く。


「前世でお前を処刑したらしい私が言うのも何なのだが・・・お前は前世で死んだ後、気がついたら4歳に戻っていたと言っていたな。なぜそんなことが起きた?」


 その言葉に私は頭を殴られたかのような衝撃を受ける。たしかにそうだ。もう一度やり直せることに喜んでばかりいたが、よく考えれば、普通そんな奇跡みたいなことが起きるはずがない。魔法だって万能ではない、時間を操ることなど誰もできはしないのだから。


 いや、まてよ。もしかしたら人には無理でも霊獣、く~ちゃんならあるいはできるのかもしれない。そう思った私はく~ちゃんを呼び出して聞いてみることにする。


「く~ちゃん。あなた、時間を巻き戻すことってできる?」


 く~ちゃんが器用に両前足でバッテンを作る。かわいい・・・じゃなかった、どうやらできないようだ。


「じゃあ、いったい誰が・・・。ううん、何が原因で私は戻ってきたんだろう」


 それは答えを求めていない、ただのひとりごとだった。だが、それにく~ちゃんが返事をする。


「グェ!」


「わ、わたしか?」


 コイツ、と言ったく~ちゃんが指差しているのは・・・アルフレート王子殿下だった。


 え? どういうこと?

いまさらですが、主人公はく~ちゃんが言いたいことがある程度分かります。


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