終息する世界
あれから数日間姫と名乗る人物も黒い靄も出てくることなく平穏無事な生活が続いていた。
「ふむ、今日も特に異常はなし実につまらんな、何かしら無いのか?」
「いや異常があったら駄目だろ、何を考えてるんだお前は。」
「・・・・・・。」
誰もいないと思い呟いた言葉は何故かすぐに傍まで来ていた竜胆に聞こえていたようだ。
「おい、無視してんじゃねーよ」
「貴様は独り言にいちいち反応するな、暇人か貴様は? そう言えば四月一日はどうした喧嘩でもしたのか?」
瑠璃がいないので少し気になり竜胆に質問してみる。
「四月一日なら今日は風邪で休みだ店長には聞いてないのか?」
「少しばかり考え事をしていたものでな。」
考え事、あの黒い靄にクレアーレと呼ばれる剣そして姫と名乗る人物に神の知恵悩み事は増える一方で何一つ解決できていない。
それに竜胆の家族が狙われる理由も今一思い付かない。
「なあ竜胆よ1つだけどうしても聞きたいことがある・・・教えてくれないか?」
「何だ? あらたまって聞きたいこと何て。」
「貴様はもし神の知恵やあの靄の正体を掴めたとしたらどうしたい?」
「どうしたいってどういう事だ?」
聞きたい事それはもし正体を掴んだとして反撃をするのか、もしくは交渉をするのか、はたまたなにもしないのか、それにより考える内容が少しだけ変わってしまう。
その為の質問である、それを竜胆に簡単に説明した後、返答が直ぐに来た。
「その事か、はっきり言ってわからない。」
「わからない? 自分の事だぞ? それに貴様は実際に殺されかけている、普通なら相手にも同じ眼に合わせようとするものではないのか? もしくは相手を復讐したいと思うのでは無いのか?」
「確かにそうかも知れない、それが普通なのかも知れない・・・だけどやっぱりまだ俺には終わった後にどうするか、どうしたいかその時になるまで俺は俺自身がわからない。」
「そうか、貴様の考えはさっぱり理解できなかったが答えを先伸ばしにしたことだけは理解できた。」
「そんなつもりはなかったんだけどな、てか俺の考えは結局解らなかったのかよ⁉」
「行きなり叫ぶな、うるさいし今は良いが客がいたら迷惑極まりないぞ。」
「あお・・・すまん。」
いきなり普通の事を言ったため竜胆は少し狼狽えたような返事をしていた。
だけどさっきの質問の答えがどうであろうが結局竜胆を最後まで命がけで守ることには変わらないのでこちらも竜胆のように問題を1つだけ先伸ばしにする事にした。




