remember:9
この物語はフィクションです
実在の人物や団体、企業などとは全く関係ありません、ステマなどは一切行っておりません
ですがたまに企業の名前とかが入っちゃうことがありましたらどうか低評価をつけるのだけは勘弁してください見逃してくださいお願いします
節分と言えば皆さん何を思い浮かべるだろうか
豆まき、恵方巻き、イワシの頭をヒイラギに刺して玄関先に飾るなんていう風習もあるこの行事
今日はそんな節分の日の三代宅の様子をお伝えするとしよう
「ねえ、豆まきしない?」
いきなり何を言い出すのだろうかこの女は
確かに今日は節分、豆を仮想の鬼という悪に向かって投げたり近年になって全国で流行り始めた恵方巻きを歳徳神という神様がいるという風に言われている方向に向かって食べれば福が訪れるというよく訳のわからないことを実行したりヒイラギの先っぽにイワシの頭をぶっさした惨たらしいものを飾ったりする日だったな
そういえば豆まきなんて生まれてこの方一度もやったことがない、というか豆を投げて何が楽しいのだろうか
「却下だ、別にやる意味ないし掃除大変だしこの家にいる誰かさんはやるだけやったら酒飲み干して寝るだけの役立たずだから絶対にやらない」
「五月蠅いわね、別にいいでしょ」
「よぉしそこまで言うなら分かった、酒呑童子というお前に憑りついている鬼を俺が退治してやる」
そういって俺がこたつの上にある柿ピーの袋を開けてピーナッツを投げつけようとすると進藤はむくれて俺の足をこたつの中でゲシゲシと蹴る
二分くらい蹴り続けてようやく収まりがついたのか、進藤が新たに提案した
「じゃあしょうがない、百歩譲って恵方巻きを今日の夕ご飯にすることで勘弁してあげるわ」
胸を張って誇らしげに提案してきた進藤を見て少し哀れに思えてしまった、だって二十三歳にもなってこんなたわい無い提案で偉そうにするなんて日本の未来というかこいつの将来が心配だ
「まあそれくらいだったらいいが恵方巻きの作り方とか分からんしスーパーの出来合いのでいいか?」
「問題ないわ、別に初心者が作った不味い恵方巻きなんて食べたくないし」
今日も今日とてこいつの毒舌は絶好調、いやここまで及んだらこれはもう悪口ではないのか?
とは言っても恵方巻きか、俺が子供のころにはもう在った気がするが歴史とか由来とかは寡聞にして知らない
こんな時に疑問を解決してくれるのが目の前にいる進藤だ、他人の困窮には無関心だが知識を得たいというのであれば何でも話してくれる辞書みたいな奴である
「なあ進藤、その恵方巻についてだが歴史とか由来とかって分かったりするか?」
「まあ分かるっちゃ分かるけどそんなに期待してもらうほど知っているわけでもないわ」
「もったいぶらないで話してくれ、四時くらいにスーパーに行くつもりだから時間はあるぞ」
「じゃあネット使いながら説明しましょうか、それと今日は私も一緒にお買いものについていくからそのつもりでね」
本当に知らなかったようだ
だが買い物に同伴するだなんて進藤にしては珍しく協力的になってくれている発言ともとれるが俺にはどうも裏があるようにしか思えない、まあ悪い傾向ではないのでいいだろう
それにしても進藤がそこまで詳しくない事柄があることに少しびっくりした
いやこいつのことだから得ても何の得にもならない情報だから覚えなかっただけかもしれない、しれないというよりこいつのことだし絶対そうだろうと確証はないがそう思う
「じゃあ私のそこまでな頭の中にある知識とネットの情報を使って説明するわね、まず恵方巻きについてだけれど最初は関西地方でしか食べられていなかったそうよ」
「だが俺がガキだった頃にはもうCMとかで宣伝されてたぞ?」
「その点については流行り始めたのが2000年代に入ってのことだから貴方が小学2、3年生くらいの頃に被るし記憶に齟齬はないはずよ」
「成程な、つうことは流行り始めたのは本当に近年に入ってからなんだな」
ちょうどバレンタインデーのチョコレートやクリスマスなんかと同じようなものだと考えていいらしい
まあその両方ともにいい思い出などありはしないが
「それに恵方巻きという名前が使われ始めたのもそのコンビニなんかで売られ始めてからのことだし恵方巻というもの自体の歴史は相当浅いわね」
「土用の丑の日なんかは結構昔からあるもんな」
確かあれも誰かのステマじゃなかっただろうか、憶えていないがそこまで気になることでもないしいつか進藤に聞けばいいだろう
「それに最近ではロールケーキなんかも恵方巻きに便乗して売られているそうね、本当に恵方巻きに目を付けた人は金鉱脈を掘り当てたといってもいいんじゃないのかしら」
「結局は企業の商売をするためのステマだったってわけだな、そう考えると日本人って結構影響されやすいよな」
「まあハロウィンとかクリスマスもそんな感じだしね、大抵のことっていうのは思っているよりも綺麗じゃないのよ」
そんなこんなで時間も頃合いになり、時計は午後四時を迎えようとしていた
「ありがとう進藤、お前のおかげで少しばかり頭がよくなったような気がするよ」
「それはよかったわね、じゃあ早くお買い物に行きましょう!」
そういえばこいつもついてくるんだったな、すっかり忘れていた
なんだかそこはかとなく悪い予感がするが大丈夫だろうか、本当に心配だ