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この物語はフィクションです


実在の人物や団体、企業などとは全く関係ありません、ステマなどは一切行っておりません


ですがたまに企業の名前とかが入っちゃうことがありましたらどうか低評価をつけるのだけは勘弁してください見逃してくださいお願いします

誕生日、それはこの世に現在生きている人ならば必ず一年間三百六十五日の間にあるはずのその人固有の生まれ持っての祝日である


まあだれでも必ずしも持っているのだから当然俺にもある、そして進藤にもあるのだ。それをこの前知った


いや、今の発言には語弊がある


今のじゃ進藤に誕生日があるとは思わなかった的なニュアンスで聞こえてしまったかもしれないがそうではない、進藤の誕生した日をこの前初めて知ったのだ


言いたいことはわかる、「なんでお前ら半年以上一緒に住んでて誕生日の一つすら知らないんだ」とそう言いたいのは重々わかる


だがしかし聞いてほしい、いや見てほしい


俺は今から十日遅れだが誕生日を祝ってあげたいと思っている、一日遅れや二日遅れなどはよくあるが十日遅れともなれば流石に森羅万象有象無象に対し無感情を貫けるであろう進藤を驚かせることだってできるのではないのだろうか


まあそれ以外にも理由はある、ただ単に自分自身が誕生日会なるものを経験したことがないからどんなものか一回見てみたいのだ


当然その会を開催するにあたっての問題も山積している、まずもって誕生日会を知らない者が誕生日会を開けるはずがない


しかしその点については安心してほしい、実は坂本さんに急遽レクチャーしてもらえないだろうかと打診したところ快く引き受けてくださったのだ


そして今日は誕生日会を開く当日、坂本さんが言うには大事なのはプレゼント、ケーキ、部屋の飾り、そしてなによりも肝要なのが心の底から祝うことだそうだ


さらに世話を焼いてくださりわざわざ飾り付けに使う物などをアマゾンで注文してくださったのだ、お金を返そうと思ったのだが「私なりの日頃の感謝の気持ちですとお伝えください」と男前に返された。本当に頭が上がらない


さて、そんな感じで飾り付けも終わり後はマスターと主役の進藤を待つだけなのだが先ほどから緊張がほどけない


ちなみに進藤はマスターと一緒に喫茶店にいる、どうやらいつも世話になっている礼という名目で料理をふるまっているらしいがまああいつなりの誕生日プレゼントなのだろう


酒を飲んでどんちゃん騒ぎになり帰ってこないなんてことにならなければいいが結構ありそうで怖い


現在時刻は四時を少し過ぎたあたり、もうそろそろ進藤たちも帰ってくるであろう


料理もあらかた作り終わってしまったし準備は万端、後は進藤とマスターが扉を開けて入ってきたらクラッカーを鳴らして吃驚する顔を見るだけだ


ここまでやり尽くすと心なしかとてもわくわくする、この調子ならば緊張も次第にほぐれていくだろう



一時間経った、まだ進藤たちはやってこない


まあそんなに焦ることでもないからいいのだがさすがに料理も冷めてきてしまっているので取り敢えずラップをかけた




二時間経った、さすがに遅すぎると思い電話をかけようとしたのだがサプライズ感が薄れてしまうのもどうかと考え掛けなかった


時計もすでに六時指し示し外はすっかり日も暮れてポツリポツリと街灯が灯り始めていた





遠くで何かが聞こえる、どうやら人の声のようだ


少しずつ少しずつ集中するにつれてその声らしきものはだんだんと大きく、ハッキリとしたものになってきている


・・・て


お・・・て


おきて・・・・


「起きてってば!」


「・・・・・・・今何時だ?」


「十一時よ」


「・・・・そうか」


やばい、寝過ごした


しかも目の前にはドッキリを仕掛けようと思っていた人兼今日の誕生日会の主役の顔、これらすべてが指し示すものは


『自分一人で計画を発案し後は主役を迎えるだけの状態にしておいてうっかり居眠りをこいた揚句に主役にたたき起こされる間抜けで哀れな男(二十三歳独身フリーター)の図』


である、やばい涙出てきた


「あの、その・・・・誕生日おめでとう」


「あ、ありがとう。だけど私の誕生日一月の十七日よ?」


「・・・・・・そうだよな」


とても気まずい、まるで間違ってサラリーマンが女性専用列車に乗ってしまった時のような空気がこの空間に漂っている


この溝のような空気が流石の進藤にも堪えたのか必死にフォローしてくれている、進藤の心を揺るがすことは成功できたようで何よりだ


「これ全部あなたがわざわざ用意してくれたの?」


「いや、坂本さんが飾りは買ってくださったしマスターも装飾とか手伝ってくれたよ。そういえば坂本さんがこの装飾代全部払ってくださったんだがお前にいつもお世話になっているお礼だと仰ってたよ」


「今度お礼言っとかなきゃいけないわね・・・・・本当にごめんなさいね、知っていたら早く帰ってきたのだけれど」


今日の進藤はやけに俺を気遣ってくれる、いやこれはこれでいいものなのだがコレジャナイ感が酷過ぎてあまりありがたみが湧かない


いつもだったら「めそめそしてないでさっさと料理温めなおして頂戴」とでも言ってくるはずなのが本当に奇妙だ


少しだけ顔を上げて進藤の表情を窺う、どうやらべろんべろんに酔ってしまっているようで頬は赤く染まり目も半開き状態だ。本当にこれでよく呂律を普通に保つことができるよな


ということは今現在の進藤のモードは本音モードということなのか


因みに本音モードというのは進藤が極端に酒に酔い、且つ人が近くにいたときのみに発生するらしい二か月ほど前に初めて発生したモードである


この状態になるといつもトゲトゲした発言ばかりしている進藤からは想像もつかないようなしおらしくて人への気遣いに満ちている菩薩のような人格が現れるのだ


まあ発生例は一度だけだがあの時は日を跨げば治ったので心配はいらないと思う、があのアホバカ天然パーマネントには絶対に酒を渡すな飲ますな居酒屋梯子するなと固く言い聞かせたはずなのに。今度懲らさなければならないようだ


「私、こうやって誰かに祝われたのは初めてよ」


進藤はテーブルの上に置かれたケーキの上に誕生日用の蝋燭を刺すとライターで一つ一つに火をつけていく


「奇遇だな、俺も誰かを祝うのはこれが初めてだ」


「あら、貴方には友達がいるじゃないの」


「野郎の誕生日なんて祝いたくねぇよ、それにマスター自身があんまり祝われたりするのが得意じゃないんだよ」


進藤がそっと蝋燭の火を吹き消す、ふぅっという進藤の吐息とともに鼻の中に蝋燭の煙の臭いが立ち込める


蝋燭、嫌な思い出しかないそれが連想させるのは遠き日の葬式の風景だけだ


親父も母さんもあの人も、蝋燭の煙のように空に消えていった日を今でも鮮明に思い出せる


人の誕生の日を祝う度に人が死んだときのこと思い出してちゃ世話が無いな、と頭の中で思考を一区切りつけて進藤の顔を見る


いつもとは違いニコニコとした表情を浮かべていたがやはり違和感がぬぐえない、進藤はいつものあのトゲトゲした感じが一番しっくりくる


「さて、じゃあ料理も冷えちまったしもう一度温めなおしてくるよ」


「うん、ありがとう」


トゲトゲした言葉が返ってこないとやっぱ何か違和感があるなと感じつつ料理皿を運んでいた時にふと思い出した


一番肝要なあれをすっかり忘れていた、我ながら危うくドジを踏んでしまうところだったな


「おい進藤、まあ明日には多分忘れてると思うが俺がこんなこと言うことなんてこの先ないと思うからよく聞いとけよ」


「なぁに?」


「あー、まあその・・・ハッピーバースデイ、誕生日おめでとう梓」


その言葉を聞いた瞬間少し進藤の口元が緩んだ気がするのだがまあ気のせいだろう


俺なりの精一杯の笑顔だったが絶対に日頃の進藤にはできないな、ネタにされること請け合いだ


なんて思いながら三代は作業に取り掛かる



一年に一度は生きている限り必ず訪れる誕生日、たまには家族や友達に日頃の感謝とともにおめでとうと一言だけでも言ってみるのもいいものですよ


ただサプライズのためのドッキリなんかは程々に、後で痛い目を見るかも





「ふあぁぁ・・・・・あっやべぇ進藤ちゃんの誕生日会忘れてた、まあいっか!」


それと誕生日会のドタキャンも

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