remember:6
この物語はフィクションです
実在の人物や団体、企業などとは全く関係ありません、ステマなどは一切行っておりません
ですがたまに企業の名前とかが入っちゃうことがありましたらどうか低評価をつけるのだけは勘弁してください見逃してくださいお願いします
新年が明けてもう十三日も経ってしまった、一年の約二十八分の一が過ぎてしまったのだ。案外こうして数字に起こしてみると一年とは斯くも短いものだったのかと思えてくる
そういえばこの前は成人の日であったが1999年までは一月十五日であったことをご存じであろうか、まあ1980年の四月一日までに生まれた方であれば記憶にあるであろう。まあ四十歳近い人がこの文を読んでいる可能性は著しく低いであろうが
俺は1993年の四月三十日生まれなので普通に一月の第二月曜日である、ちなみに第二月曜日になった理由はハッピーマンデー制度という法改正があったからである
「どこの局もこぞって成人した人のことばっかり、そんなにも取り上げることなくて暇なのかしら?」
頬杖をつきながらリモコンで次々と局を変えてゆく進藤を横目にカレーを作る俺、本当にこんなことをやっていると今の俺の立場とあいつがなんなのかわからなくなってくる
あいつはお嬢様か何かなのだろか?そして俺は召使か何かなのだろうか?まあお嬢様といってもワンルームマンションのお嬢様で召使の職も断じて認めないが
「確かに成人式があった週って結構成人関連の事件とか事故とかの報道で埋め尽くされてる感あるよな」
まあ進藤の言うことも共感できる部分もある、事実当てつけかのように小さい事件でも何でも見境なしに飛びついているように見えるのだ
「まあでも実際成人式の直後とかって浮かれる人が多いんでしょうね、私はあの時は親の資産の引き継ぎとかなんやかんやで忙しくて成人式になんて行かなかったけれど」
「お、お前も行かなかったのか。正直言って成人式に出る理由ってのが全くなかったし仕事も忙しかったし何せあの頃は金がなかったからなぁ」
話は少し変わってしまうが先ほど言った進藤お嬢様説が最近になって濃厚になってきているのだ
証拠として資金だが、この前一月分の食費と雑費をもらう際にキャッシュカードと通帳を渡され俺が金を引き下ろしに赴いたのだが0が九個くらい連なっており、どう考えてもFXや株取引が一人でできる歳である20歳から二年間ではさすがに稼ぎきれない額であることは明白である
なので今さっき進藤が言った親の資産の引き継ぎ、という言葉をそのまま信じて提言するとその十ケタ近くある金は親の資産であり、そんだけ資産を持っている親ということはその子供である進藤はお嬢様であろうという考えだ
まあそんな説を提唱してもどうにもならないのでここらで閑話休題としよう
「あんまり昔のことばっか語ってるのもあれだし今のことを話そうか」
「そうね、じゃああなたの作っているカレーはいつできるのかしら?」
南無三、話に集中したせいで少々鍋の淵のほうが少々焦げてしまっていた。が、そこまで焦げがひどい訳でもなかったので少し安心し火を止めて進藤の分の皿を棚から取りよそったご飯の上にカレーをかけた
「今しがたできた、つうかお前も全然動かないんだから取りに来るくらいはしろよな」
まるで自分が動かない食っちゃ寝ばかりしている引きこもりのように言われたことによほど腹立したのか無言で席を立つと俺の目の前までやってきて足を結構力を込めて踏みつけた後カレーを奪っていった
すべて事実だろうに、なんて思っているとリビングのほうでカレーを凝視しながらまるで待てと言われた犬のように食べずに待っている進藤を見て少し笑ってしまった。性格は悪いのにこういう礼節はわきまえているところがやはり進藤らしい、足を踏む程度だったらまだ可愛げがあるのだが時々シャレにならない当てつけをしてくることがあるのでそれだけはやめてほしいが
顔が思わず緩んでしまう、前までは一人で飯を食うことに関して寂しさや物足りなさを感じることなどなかったが進藤が家に住みつくようになってからは一人で飯を食う事が寂しくて物足りない感じがどうしてもぬぐえなくなってしまう
人間は皆元々はそんなものなのだろう、人と一緒に笑って人と一緒に泣いて人と一緒に飯を食って人と一緒に過ごせれば幸せなのかもしれない
だが、それでも。人と一緒に笑って人と一緒に泣いて人と一緒に飯を食って人と一緒に過ごしても俺は一生満足することは無いだろう、無いものをねだってもう二度と逢えない人を焦がれても逢えるはずがない
だが、だがそれでも。今だけは仮初の笑いでも精一杯楽しみたい、そう強く請うことしか俺にはできない
「ふう、じゃあ食うか」
「遅いわよ、何ボケっと突っ立って考えてたの?」
「内緒だ」
俺が進藤やマスターや坂本さんと居て心の底から笑える日が来たのなら、こんな考えだって笑いの種になるだろう
「「いただきます」」
本当に笑える、その日まで