remember:4
この物語はフィクションです
実在の人物や団体、企業などとは全く関係ありません、ステマなどは一切行っておりません
ですがたまに企業の名前とかが入っちゃうことがありましたらどうか低評価をつけるのだけは勘弁してください見逃してくださいお願いします
そんなこんなで少し時間は進む
回想
冷蔵庫を開けて中を見ると卵一つとして入っておらず愕然としてしまった
食料が一切ないのだ、そういえば今日買い出しをする予定だったことを思い出し進藤を説得しようとした
答えはもちろん「早く作れ」の一辺倒ですこしでも待たせようものならすぐ大家さんの家に飛び込んで行ってしまいそうだ
まずは大家さんとはどんな人物かを説明しておかねばならないか、大家さんは俺の父の妹で身寄りのない俺をわざわざ九州からこっちの関東まで引っ越してきてくれて住処を提供してくれた恩人だ
あの人だけには頭が上がらない、まあとにかくそれだけは阻止したいということでしょうがなく俺が行きつけているレストランにやってきたところだ
回想終
しかしゲロった後ですぐに食欲がわくというのもおかしな話だ、この女の内臓はいったいどうなっているのやら知れたものじゃない
だがまあ休みの日にこうやって家の用事以外で外に出たのはいつ振りだろうか、なんて考えているとすぐに目当てのレストランについてしまった
俺はいつもすぐに思案にふけってしまう癖があるので歩きならともかく車の運転や自転車なんかは怖くてあまり乗っていない、22で中二病くさい思考をしてしまうあたりやはり俺もまだまだこどもだなと少し思う
ちなみにこのレストランには結構昔から通っていてマスターとも長い付き合いがあり臨時的に忙しいときなんかは手伝いに行ったりしている
こいつを連れてくるのは今日が初めてなのだがそれには理由があるのだ、まあ理由といっても自分のわがままというか保身みたいなものなのだが
それでも足しげく通うのは旧知の仲ということで安く飯を食わせてくれるから、それだけでほかにこれといった理由もない
「マスター久しぶり」
昼下がりのレストラン『サクラ』の扉を開くとクラシックの優雅な音楽が流れてくるのとほぼ同時にいま一番聞きたくない男の声が入ってきた、どうやら今日はハズレの日らしい
「よう三代、久しぶりだな」
「ああ、そうだな。今日は近頃家に厄介者が増えたんで紹介しようと思って来た次第だ」
「誰が厄介者よ」
それを聞いてすこしむくれた進藤が俺の背中からひょっこりと顔をだし俺をにらんだ
厄介者と聞き少し不思議な顔をしたマスターだったがそれが女と知るや否や俺をからかう態勢に移行した、これが俺がこの男が苦手な理由その一の他人の粗探し攻撃だ
「あれれ〜三代く〜ん、君にもとうとう春ってやつが到来したってわけですか?」
にやけながら俺を小突いてくるこの男は至極楽しそうだが俺は不愉快以外の何物でもない
俺はマスターをカウンターに押し込み適当に何か作ってもらうことにした。悔しいが腕だけは確かな料理人だ、出されたものは大抵美味しい
マスターは奥に続く暖簾をかき分けて厨房へと姿を消した、いつもはこのように静かなのだがいじるネタが出てくるとすぐこうなってしまうあいつの悪い癖だ
「あのマスターっていう人変わった人ね」
「お前が言うかと突っ込みたいが、まあ確かに変わってるよ」
あいつは昔からそうだった、俺は中学からの付き合いだが一度高校時代にグレていたこともあった、が今ではあいつも立派なお父さんだ
本当に二十三で所帯持ちとかこの少子化のご時世に頭が下がる、まあ実際にあいつに向かって頭を下げたことなど一度もないのだが
店には俺達以外にも奥の席に老人が一人と外のテラス席にご婦人達、ママ友というのだろうか、まあそんな感じの人たちが集まって談笑している
そういえば今日は十二月三十日、大みそかが目と鼻の先まで迫っているというのに部屋は散らかりっぱなしで大掃除などおとといきやがれの状況であった、さすがにそれはあんまりだしせめて部屋の中の掃除を帰ったらしなければ
そんなこんなで十三時を告げるため時計がボーン、ボーンと十三回鐘を鳴らしたと同時に奥からマスターがなんかでっかい器一つを持ってやってきた
とてつもなく嫌な予感がした、そのあとマスターのにやにやとした顔が予感ではなく現実だということを思い知らせてくれる
「なにこれ」
「私特製のお二人様限定オムライスでございますが何か?」
うーんこのバカが何を言っているのかいまいち理解できない、取りあえず言いたいことが二つほどある
まあ百歩譲って二人で一つのものを食うというのは良しとしてもさすがにこの量はないだろう
だって普通に俺の肩幅くらいあるぞこの器、そこを一片の隙間もなくみっちりと卵が覆っている
下には当然チキンライスがあるだろう、俺は見かけ通りの小食もやしっこでこっちの大酒のみも今はゲロった後でお顔も血色があまり良くない
「おいマスター、お前に拒否権はないからスプーンもう二個持ってきてお前もこっち来て一緒に食え。いいか拒否権はないぞ」
スプーン二個、要するにこのボケナスが料理を運んできたときにスプーンは一個しかなかったのだ
幸いそこまでマスターもネタにするわけではなかったらしくおとなしく厨房からスプーンを持ってきてこちら側の椅子に腰かけた
外では風が吹き、ガタガタと窓ガラスを震わせている。さすがに寒くなってきたのかテラス席でお茶会をしていたマダム達もお会計を済ませて帰って行ってしまった
「じゃあ、いただきます」
新しい年を迎える、その年の良いことも悪いこともすべて忘れてまっさらな新年を迎えるのもいいが悪いこともいいことも全部ひっくるめて来年の糧にするのもいいんじゃないかな
それではみなさん、よいお年を
大みそか、皆さんはどうお過ごしになるのでしょうか
家族や親友、彼女と過ごす方、ニコニコ生放送でアニメを見ながら過ごす方など様々でしょう、私は後者です
まあどんな新年の迎え方であれ2017年は誰を欠かすこともなく平等にやってきます
来年の私の目標はとりあえずこのお話を終わらせることですかね
それではみなさんよいお年をお過ごしください