プロローグ
「つまらない」
青空の下、黒髪で、黒のワイシャツに黒のジーンズと黒尽くしの男、端境 峡夜は、野原で寝転びながらポツリと呟く。
「なんでこの世界はこんなにもつまらないんだろうな。まったく、誰かに教えて欲しいもんだ」
当然、これに答える者は誰も居ない。そもそも周りに誰も居ない。いるといえばせいぜい野鳥が鳴いているくらいだ。
「まったく、思いつきでこんなところに来るもんでもないな。星が綺麗なところって聞いたから来たもんだけど、星だけ見ても二日目で流石に飽きた」
ふと、峡夜は後ろに建っているテントへと目を移す。
「……帰るか」
峡夜は起き上がると、草を払いテントへと向かった。
周りは木で囲まれている。彼の範囲数十メートルの距離にはテント以外何もない。
「しかし、俺も盛大にやったもんだな」
峡夜はテントに着くと自分の周りの野原を見る。
この野原はもともとは、野原ではなかった。元は森林の一区画に過ぎなかった。
「星を見るため、他の人様に見られず過ごすため。流石にここまで派手に改造したのはまずかったかな」
頭を掻きかながら、反省の色を見せる。
「とりあえず、今日の朝飯だけ手に入れて帰るとするか。確か川はこっちの方だったか」
そう言って、森林の中へと入って行く。
しばらく歩くと、そこには川が流れており、川魚静かに泳いだり岩の陰に身を隠したりしている。はずなのだが、一向に辿りつかない。
「なんだ、道を間違えたか?」
そんなはずはないかと、峡夜があたりを見渡すと、うっすらと霧が出てきている。さっきまで聞こえていた鳥のさえずりも聞こえなくなっている。
「おいおい、何だか怪しい展開だな。こんな世界にも不思議なことも起こるのか。それとも山の神の怒りでも買ったか」
少しばかり笑みを見せ、その場で何かが来るのを待ち構える。が、一向に何も起きない。
あまりに何も起きず、つい舌打ちをした。
「期待させんな」
声と共に一発、近くにあった木に蹴りを入れるとその木は跡形もなく吹き飛んだ。いや、粉々に砕け散った。残ったのは粉砕された可哀想な木の残りと罪悪感だ。
しかしやってしまったものはしょうがないとため息をつく。
「はあ、悪かったな。お前は何も悪くなかった。全部は、俺とつまらないこの世界のせいだ」
そうさりげなく世界のせいにもすると、峡夜は先ほど粉砕した木のあとに手を触れる。
すると、みるみるうちに、粉々になっはずの木が元の形へと戻り始めた。そしてしばらくすると、まるで何事もなかったかのように先ほどの木がそこに存在している。
違うところといえばそこの木が先ほどと違いどこか怒っているかのように感じることくらいだろうか。
それを感じているのだろう峡夜はその木を見てため息をつく。
そのままそこにしばらく立ち続けた。
次回投稿未定。
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