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その1 俺のねーちゃんはエキセントリックだ

俺のねーちゃんはエキセントリックだ。


あれは俺が5歳の時、ねーちゃんは8つだった。

熱を出して寝込んでたねーちゃんが、唐突に


「転生キタコレーーーー!!!!!」


と叫びだしたのである。

そしてこちらを向いて


「ハイスペック弟キタコレーーーー!!!!!」


と目を輝かせて突進してきたのである。

脅えて泣き出してしまった5歳の俺に

これっぽっちも罪はないと思う。


その後もおびえ続ける俺をみながら、

「攻略対象わっしょい!!

notライバルポジションわっしょい!!」


と意味不明な言葉を発し続け、

「いやむしろこれって禁断の愛フラグ…?じゅる…」と

怪しい目で見つめられた。

よく両親は病院送りにしなかったものである。



トラウマになりそうな過去があったとはいえ、

俺はねーちゃんとは概ね良好な関係を築いていた。


落ち着きを取り戻したねーちゃんは

当時8歳とは思えないくらい大人だったし

勉強もできたしおやつもくれたし遊んでくれたし

ごはんも作ってくれたし優しかった。


正直、仕事で多忙な両親よりも

ねーちゃんに育ててもらったと言っても過言ではない。




ねーちゃんが再び奇怪な行動をとりだしたのは

俺が中学校に入ろうとするときだった。


「絶っっ対!絶対アキラにはこの中学校がいいと思うの!!」


黒目がちの目をキラキラさせながら

中高一貫学校のパンフをばんばんと叩くねーちゃん。

俺がねーちゃん作のワッフルを食べながら

「えー、仲のいい奴らみんな地元の中学だし」

と拒否をしてみると


「大丈夫!ここで一生の友達と素敵な彼女が

GETできるから!ね!ここね!決まりっ」


と何の根拠もないが自信たっぷりに言い切られ、

幸か不幸か両親の思惑的にも

取引先の息子がいるとかいないとかで一致したらしく

俺の進路は決められてしまった。



とはいえ私立には受験もある。

落ちればいいんじゃね?と思っていたら、

勉強のお供と称して作ってくれる鍋焼きうどんにつられてるうちにうっかり合格してしまった。

合格発表時の赤飯がうまかったからよしとしよう。





ここでねーちゃんの奇妙な言動が落ち着くかと思ったら、

今度は学生生活について根堀り葉堀り聞かれるようになった。


「生徒会長は!?やっぱり孤高なのね~!!」

「社長令息は!?いや~ん!俺様サイコー!!」

「帰国子女いない!?え!?ハーフ?その設定知らなかった~!!」


などと何故か俺より詳しい。

そしてテンションが高い。

やっぱりねーちゃんはエキセントリックだ。



そんな日常が続き、

高等科に上がったころいつものように姉が聞いてきた。



「転校生はいない!?可愛い子!!

ふわふわーとしててきゅるるんってしてて

お花が飛んでる甘~い女の子!!」



姉よ、甘いかどうかは食べないと分からない。

弟を変質者にする気か?


とはいえ、思い当たる子は確かにいた。

最近転校してきた花園 桃である。

名前からして花が飛んでそうだ。



ねーちゃんに言われたからではないが、

なんとなく花園を観察してみると、

その子は容姿は普通に可愛いレベルだが、

人を穏やかにさせるというか、そういう魅力を持った子だった。



現に、一匹狼だった生徒会長も心を開いていたし、

両親の言ってた取引先の息子もベタぼれだったし、

ピアノの天才だ言われてる帰国子女も

犬のように懐いているようだった。

噂によると理事長の息子だとかいう教師も、

彼女のことを高く評価しているらしい。



その花園だが俺のところにもやたら話しかけに来る。


が、


「アキラくん!お弁当食べない?」

なんか栄養バランスが悪そうで、案の定胸焼けがした。

ねーちゃんの作った弁当を見せると青ざめていた。

「アキラくん!クッキー作ってきたの」

このクッキー、バニラエッセンスでしょ。

俺、バニラビーンズが入ってるやつがいいんだよね。



そんな感じで可愛いとは思うし癒されもするんだけど

何かこうパンチが足りない気がするな~と思っていた。

こうエキセントリックさというか…。

やばい、俺ねーちゃんに毒されてる気がする…。



エキセントリック云々はともかく、

そんな話をねーちゃんにすると


「何…逆ハールートだと…なんて美味しい…」

「それはそれで美味しい…でもアキラの幸せが…

 でもでも乙女の憧れよね…」

「このまま卒業まで行っちゃうと…」


と何やらぶつぶつと考え込み始めた。

ねーちゃん作のアップルパイをほおばりながら

この感じ久々だなぁ~と生温かい目で見ていると


「アキラ!ねーちゃんはアキラの為に

逆ハーは諦めます!!涙をのみます!!

だからアキラは幸せになるのよ!!!!」


と宣言した。

お、おう、何かわからんがありがとう。



その後ねーちゃんはいつものエキセントリックさで

学園にしれっと入り込み、

花園と取り巻き達を解散させ、

いつの間にか花園に「おねーさま」と呼ばれていた。

「秘密の花園…それはそれであり…か…?」

なんて呟きは断じて聞こえていない。



そんな俺が大学で出会った、

ねーちゃんと同じおはぎを作る女子に興味を持ち、

他の料理にも惚れ込み口説き落とした結果、

その子が花園の従姉と判明するのは、

また少し後の話である。

蛇足な補足。


・俺

藤堂アキラ。乙女ゲームの攻略対象のメンズ。

攻略対象なので顔も頭も性格もいいが、姉の影響で女性の好みが偏っている。

原作では「両親が多忙なために家庭の味に飢え、それを提供することで好感度を上げていく」設定。

逆ハールートに乗ると、ヒロインを巡り社長令息と対立、家から追い出され

ヒロインにご飯を食べさせてもらうだけのヒモになる。



・ねーちゃん

藤堂あかり。8つの時に乙女ゲームに転生したことに気付いた元オタク寄り女子。

弟が攻略対象と気づき、テンションMAXに。

前世が料理が趣味なこともあり、攻略条件を知りつつもせっせと弟に餌を与え続ける。

それでフラグが折れていることに気づいていない。


・ヒロイン

花園 桃。転生者。

逆ハールートを狙うが攻略が安易なアキラを後回しにしたことで裏目に。

あかりと出会ってからは攻略対象に目もくれず、あかりを慕う日々。

そのためアキラが邪魔になり、従姉を送り込むことに。腹黒。

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