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第4話 ホームページ


第4話 ホームページ


現れたホームページは、まず日本列島の衛星写真があり、その上に大阪の部分を台風の目にして、巨大な台風の雲が日本列島を覆いつくしている画像がほとんどだった。その画像の下に

タイフーンアイ

の文字がある。さらにその下に電話番号あるだけで終わりだった。住所も説明もコメントもない。他にクリックする所もなく、もはや一番下にある電話番号にかけるしかなかった。愛は自分の携帯に番号を入れてコールした。

…有り難うございます。タイフーンアイの宮村理彩です。初めての方は1を、そうでない方は2を押して下さい…

愛は1をプッシュした。

…ようこそ。タイフーンアイへ。毎日、19時から19時30分大阪JR梅田駅18番出口で宮村理彩がお待ちしています。タイフーンアイのマークのTシャツを着ているのが私です。宮村さんですかとお尋ね下さい。別の人についていかないでね。それではお待ちしてます。繰り返し聞く場合は1を、終了する場合はそのまま電話をお切りくださいね…

愛は電話を切った。ここまで来て、まだ何もわからない。そして大阪に行く事だけが確定した。

愛は21番ブースを出た。深夜のネットカフェは満席で、抑制されたざわつきが、クリック音となって通路に洩れ出ていた。カウンターの中には中島がいた。そしてカウンターの前に明がいた。

「宮村理彩に会いに行くの?」

明は真っすぐに愛を見てそう切り出した。

「どうして…明くんがいるの?。」

「そんなに難しいトリックじゃないんだ。タイフーンアイで検索して、一万件アクセスするとホームページが出てくる仕掛けなんだ。左上のカウントに最初の100件で偶然気づいたんだ。愛ちゃんは気づかなかったみたいだけど。」

中島が続けた。

「21番ブースは、どんなに混んでても空けておいたのよ。他の検索が入ったら、カウントがリセットされちゃうのよ。」

「しかも、個人のパソコンでは、この仕掛けは動かない。…中島が時々、21番のパソコン動かして、残り件数を確認してたんだ。だから、ここに居るんだ。…史也のゴーサインが出たんだね?。」

愛はその最後の言葉に涙が出た。

「だったら、止める理由はない。大阪で史也にさよならを言っておいで。」

「言ってくるよ。史也に伝言とかある?。」

明は虚を突かれた。すぐに言葉が出なかった。なんとか気を取り直して言った。

「おまえは、最高だったって伝えてくれるかな。いや。いまも最高だって。」

愛はうなずいて、明の気持ちを受け取った。明は涙を見られたくなくて、そのまま入り口に歩いて出ていってしまった。

「愛ちゃん。この中島勝義にも伝えてほしい事があるんだけど?。」

「なに?。」

「史也の分のブドウパン…食べたのは俺だったって…。」愛はそのケンカを知っていた。ケンカしたまま、史也はいってしまったのだ。

「もちろん。中島くんを許してあげてって私から言っとくね。」

中島は驚いた顔のまま、とめどなく涙を流した。愛は、自分だけが苦しんでいたわけではない事を知らされているんだと感じていた。そして、明や中島を救えるのも愛自身である事も…。18番出口で宮村理彩に会わなけばならない。彼女がきっと全てを知っている。


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