夏の堕落者達Ⅱ
前作と今作tはどちらもある季刊誌に乗せていたものです。個人的には駄作感が漂いすぎて蓋を閉めたいのですがね・・・
二 作りたがりの積み師
中学時代から何かしら模型を作りたいという謎の衝動に突き動かされること六年程経った。その結果として、自室に模型が大量に並ぶようになり、親からはいい加減親戚の子たちとかにあげなと言われる日々を過ごし続ける。あげるものかと思い、これは対象年齢幾つだから無理だだの言い訳をして死守してきた。結局、今までに貰った小遣いは全部模型と模型雑誌へと消えてゆき、人に自慢できるものは模型ぐらいしか無くなった。隣家に住んでいる幼なじみという生物は毎度部屋に来るたびにまた増えただのいい加減他の事に情熱を向けてみたらだのインターセプトばかりしてくる。その幼なじみは結局自分より上のランクの大学に行っているらしく、たまに遊びに来たときはどうこう先生がうざいだの、なんたらの授業が面白いから潜りにこないだの色々勉強へとそそのかしに来るものだからしばらく来るなと語気を荒げてやったところ半年ほど家に来なくなった。
模型を買うときは大抵大型家電量販店に行ってポイント付きのものを買うようにしているものの、結局は組まずに放置することが最近は増えてきた。部屋の片隅に一つだけあった箱の山が今や壁一面を覆うようになり、部屋の広さが二平方メートルほど狭くなった。最近どうやらスランプというものに陥ったらしく、組みたくても組めない状態になった。久々に幼なじみと話でもしてやるかと思い、電話をかけたところ怒られた。相手の方は騒がしい環境にいるらしく、恐らく今宴会かなにかの最中なのだと思われるが、そんな環境の中電話を受け取ったらしい。帰ったら電話してくれと言い、電話を切った後、暫く外に出てないなと思い久々に近所を散歩することにした。幼なじみとよく来た公園の前に来た時、昔はよく滑り台から飛び降りたりだの砂場にバケツひっくり返して城作って遊んだっけなと記憶の欠片が現れたが、すぐに弾け、滑り台のそばの椅子に腰掛けた。空は夕暮れ時特有の明さがあるものの、その中に瑠璃色が混じり込んだ紫みたいな色合いになっているのをしばらく楽しみ、戻るかと考え、椅子から離れた。途中コンビニで立ち読みでもするかなと思い、すぐそばのコンビニに足を向け、足を前に出した。
コンビニは宛ら虫を惹きつける明かりのようだ。そして自分は虫だと。そんなことを考えコンビニの扉を押してすぐそばの雑誌売り場で色々と物色し始める。めぼしい模型雑誌を見つけ、それを手にとってこれからあのプラモをどう改造してやろうかと参考になりそうなものをページをめくりながら眺める。良さそうなものを記憶の中に折り込み、他に模型雑誌はないかと探していると下の方に二週間前に発売された古い雑誌を見つけ、そういえばこの巻は買わなかったなと思い出し、これを買うことにした。少しボロボロにはなっているものの、特に本の状態に文句を言うほど馬鹿ではないからそのままレジに通した。
このまま帰ろうと思い、代金を払って扉に向かって歩を進め、袋を漁り始めたとき、前の方が何か眩しく感じたが、気にせず雑誌を取り出した。この巻が無かったからスランプに陥ったんだなと思い、これで崩せるなと扉に手をかけた瞬間に扉がものすごい勢いで開き、そのまま吹っ飛ばされた。地面に当たる前に後頭部を何かでぶつけたらしく、ジンジンするが、立ち上がろうとしたが体に力が入らなかった。そこで記憶は途切れた。
三日後、幼なじみは彼の部屋にいた。壁を埋め尽くすほどのプラモデルの箱からは古い紙の匂いが漂い、彼の匂いはどんなものだったか思い出せなくなっていた。彼との思い出は中学以前のもので止まっており、今後作ることも出来ないなと考え、その部屋を後にした。
あとがき
夏休みも過ぎたこの頃、一つ言えるとすれば時間がなかった。何もせずただ安逸を貪るそんな日々を過ごしました。ええ、お分かりでしょう。彼らは私です。私は彼らです。でも、違います。彼らは彼らの人生を。私は私の人生を歩んできました。言い訳がましいですが、この作品の提出日は九月の十九日でした。そしてこれを私は十七日に書き込みました。他にも締切はありましたが、いかんせん時間がないもので、本来しようと思っていた「自画自賛―我が茶器コレクション―」は次回になりそうです。ええ、たった一時間ほどで書いたものですし、何かしらおかしかった所は一つ眼を瞑って下せぇ。
最後に、夏はやはり良いものです。セミは嫌いですが、あの鳴き声を聞くこと、冷えたかき氷を二杯ガストで注文して店員に若干引かれたまま頬張り体温が下がりに下がる。そして花火大会などにはいかず、祭りにもいかない。そんな夏を過ごしてもいいんじゃないでしょうか。来年も健やかに、そしてこの季刊誌に文を載せられればそれで満足ではないでしょうか。