表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/102

第五章・真実の心 (7-2)


「お姉ちゃんの声が聞こえる……」


 寝そべったままでトモエは呟いた。自分の意識の及ばない遥か遠くの世界で、愛稀が自分を呼んだのが小さく聞こえた。けれど、その声を聞いても何の感情も生まれてこなかった。自分とは違う世界で起こった出来事のように、実感がないのだ。


「お姉ちゃん。私もう疲れちゃったんだ。……このまま眠らせて」


 トモエはゆっくりと目を閉じた。眠ってしまえば何も考える必要もなくなる。彼女は甘美な世界に誘われたかった。



 ――何をいじけておる――



 どこかから声が聞こえた。先ほどの愛稀の声とは違い、鮮明に頭の中を響き渡る。トモエは目を見開いた。


「だ、誰!?」


 トモエは叫んだ。



 ――わらわの声を忘れたか?――



 そう尋ねる声に、トモエはたしかに聞き覚えがあった。しかし、にわかには信じられない。もう聞くことはできないと思っていた声だった。


「ま、まさか……」


 次の瞬間、空間が急に反転した。明るかった世界は真っ暗なものにとって代わり、地上に寝そべっていた彼女は天から地面へと落ちた。


「痛たた……」


 よろよろと起き上がるトモエの目の前に、ふたりの少女が立っていた。どちらも、暗黒の周囲とはうって変わって、不思議なくらいに鮮明にその姿を現している。ひとりは、トモエとだいたい同じくらいの年齢、そして傍らに立っているのは少し年下の、だいたい12、3才くらいの少女であった。どちらも、清潔そうな純白の着物を着て、下には朱色の袴をはいている。


「久しぶりじゃな、トモエよ」


 同じくらいの背格好の少女が、トモエに云った。


「うそ……」


 呆気にとられた顔で、トモエは呟いた。目の前にいるのは、二度と逢えないと思っていた相手だった。忘れ去られた歴史の狭間で出逢い、トモエに浄化の力を授けた祈祷師、そして彼女の後を継ぐこととなった付き人――、マオとイチコの姿がそこにはあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ