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第五章・真実の心 (3-1)

 3



「すぐに話し合いを始めるぞ」


 凜は部屋に戻るや否や、“宇宙の意志の権化”に切り出した。


「強引だなぁ――。ちょっと、わが道を行きすぎてやしませんか。こちらの都合も考えてくれてます?」


 背後から“宇宙の意志の権化”の声がした。凜は後ろを振り返った。


「先ほどの君の話から、今がよほどの危機的状況だということが分かったからな。すぐにでも対策を考えた方がいい。そのくらい当然だろう。それに、君に都合なんてものがあるのかい」


 凜は平然とした雰囲気でそう切り返す。“宇宙の意志の権化”はため息をついた。


「まったく……。マイペースというよりは身勝手なお人ですね、あなたって。愛稀さんがどうしてあなたの恋人になったのか、不思議でなりませんよ」


「どういうことだ?」


「ひとつお訊きしていいですか。あなたは、愛稀さんのどこが好きなんですか」


 凜は鼻で笑った。


「宇宙の意志を司る者にしては、えらく下世話な話題を振ってくるんだな」


「あなたが誰かを愛したり、誰かに愛されたりするような人とは、到底思えないってことですよ。あなたは本当に彼女を愛してるんですか。あの人を幸せにしてあげられるんですか。あの人に不幸が訪れようとした時、身を呈してでも守ろうという意志が、果たしてあなたにはあるんですか」


「…………」


 凜は何も云わず、無表情のままベッドに座り込んだ。


「或いは、そうですね――、もし彼女を奪おうとしてきた人が出てきた時、あなたは彼女を何としてでも引き止めようという気持ちがありますか。例えば、僕があの人を奪おうとしたらどうします?」


「はっ?」


 凜は素っ頓狂な声を出した。


「そんなこと、あり得るわけがないだろう」


「そうですね。こんな姿になってしまった今の僕なら無理な話でしょう。でも、人の姿を失っていない、この次元世界の僕ならどうでしょうか。あれがその気になれば、あの人を自分のいる“真実の深淵”に連れ込むことぐらいやってのけますよ。それがあの人にとってとても居心地のいい環境であったならどうします。もうあなたのもとには帰って来ないかも知れませんよ」


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