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第四章・かつてない危機 (5-1)

 5



 家に着くと、父親はすぐに仕事があるといって家を出ていった。


 トモエは2階に上がり、自分の部屋に入った。そのままベッドに身体を投げ出す。仰向けの体勢で天井を眺めると、無数の埃が漂っているのが見えた。統率もとれず、それぞれがあてもなくただふらふらと動いている。まるで、運命に翻弄される私たちのようだ、とトモエは思った。トモエ自身を含め、ユメのセカイに関わる者はみな自ら希望することもなく、過酷な運命を背負うことを余儀なくされる。アイラやまどか、愛稀だってそうだし、トモエが時空の狭間で出逢った祈祷師、マオやイチコだって同様だ。


(このままずっとさ迷い続けるのかな……)


 云い知れぬ不安が彼女を襲った。彼女はかたく目をつむり、首をブンブンと横に振って不安を脳裏から振り払った。そんなことはない――、と思い直す。過酷な運命の渦中にいながらも、それでも自分たちは明るい未来を信じ、懸命に生きているのだ。生まれながらに背負うものは選べなくても、その後の生き方は自分で決められるはずだと、彼女は自分自身に強く云い聞かせた。


(運命にもてあそばれないようにするためには、自分の足で歩こうという意志を強く持たなきゃ。そのためにまず必要なことは、やっぱり真実を知ることだ)


 彼女はベッドから起き上がった。上空から日差しの降り注ぐ窓の方へと歩き、鍵を開けてガラス戸を開け放った。眩しさに目を細めながら、彼女は“宇宙の意志の権化”へと思いを馳せた。


 トモエは全身に風圧を感じた。それは身体を通り抜けると、一点に収束されていった。


「やあトモエ。怪我の方は大丈夫だったかい」


 背後から声がする。振り返ると、部屋の真ん中に“宇宙の意志の権化”がたたずんでいた。


 トモエはその姿をまじまじと眺めた。大きさは子犬のようだが、顔は見れば見るほど奇妙ないでたちで、他のどの生き物とも似ても似つかない。こんな顔をどこかで見たような気がする。そう、エイリアンだ――とトモエは思った。映画か何かで見た、地球侵略を目論む宇宙人の顔つきにどこか似ているのだ。人智を超えた生物というものは、漏れずこういう形相になっていくのかも知れない。


「あなたには真実を語ってもらうことになっていたよね」


「僕の質問には答えていないが、まぁその分だと無事なようだね――。いいよ、僕が何者なのか、なぜ君と魔法少女の契りを交わしたのか、詳しく話そう」


「もちろんそのことも教えて欲しいけれど、あと昨日の邪霊のことも詳しく知ってるんじゃない?」


 “宇宙の意志の権化”は目をつむり、ひと呼吸おいた。


「知らないわけじゃないが――、でもそれは、少々君にはつらい現実かも知れないよ。それでもいいかい」


「もちろん。前に進むために、本当のことを知るのは絶対に必要だと思うから」


 どんな話であっても負けてなるものか――と、トモエは密かに拳を握りしめた。


「OK。――それじゃあ話していこう。まず順を追って、僕が何者なのか、ということから話していこうかな」


 “宇宙の意志の権化”はそう前置きして真実を話し始めた。


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