表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/102

第一章・邪を祓う少女 (3-1)


 3



 この世には、我々の住む現実世界とは別の世界が存在する。その世界はユメのセカイともスピリチュアル・ワールドとも呼ばれており、その名の通り夢、魂や精神が大きく関わる世界である。


 トモエと星夜がいる場所は、そのユメのセカイの下層にある、“真実の深淵”と呼ばれる場所だった。星夜はこの場所のただひとりの住人だった。


 そんな星夜にトモエが出逢ったいきさつはこうだった。



――



 ちょうど1年前――。


 中学2年生だったトモエはビルの屋上に立っていた。学校でのいじめと、家庭内での継母の仕打ちに耐えきれず、自殺を図ろうとしたのだ。


 いよいよビルの上から飛び降りようというその時、

『ちょっと待って』

 ふと背後から声が聞こえた。


「……?」


 振り返ると、そこには見たこともないような小さな生き物。つぶらな瞳でトモエをじっと見つめている。


(幻覚……?)

 とトモエは思って、目をつぶり数回首を左右に振ってみせた。再び目をあける。やはりそこにはその不可思議な生き物が存在していた。


『鶴洲トモエだね』


 その生き物は云った。


「あなた、誰?」


 トモエは訊いた。これから死のうという覚悟をしていたためか、その生き物に対して怖いとも気味が悪いとも思わなかった。


『誰? ……そうだなぁ。“宇宙の意志の権化”とでも呼んでもらおうかな』


 妙な名前だな――、とトモエは思う。


「で、その“宇宙の意志の権化”さんが、私に何の用なの」


『君に今死なれちゃ困るんだ』


 “宇宙の意志の権化”はきっぱりとそう云った。


『僕は、君に頼みたいことがあって来たんだよ』


「私に頼みたいこと?」


『君には素質がある。ぜひ力を開放して、魔法少女になってほしい』


「……は?」


 トモエは云われてる意味が分からず、ただ訊き返した。魔法少女といえば、マンガやアニメに出てくる女の子のヒーローというイメージだ。トモエにも夢中になった魔法少女モノの作品はいくつかある。けれど、いきなりそれになれと云われても、今ひとつピンと来ない。


『ごめん。いきなりで驚いたかな。でもこれはとっても重要なことなんだ。この世にはびこる“悪意の化身”と戦って、この世を救わなきゃ、世界はおかしくなってしまう』


「え、何と戦うって?」


 またもやよく理解ができず、トモエは訊いた。


『まぁ詳しいことはおいおい分かってくるよ。君たちの生きるこの世界のしくみも一緒にね――。とにかく、僕は君にぜひ魔法少女になって世界を救ってほしいんだ』


 トモエは手をあげた。


「もうひとつ質問。どうして私なのかな」


『それも今この場では説明しづらいことだね。君が長い時間をかけて、ゆっくりと理解すべきことだよ。ただ確かなことは、君がお願いするに値する素質を持っている、僕がそう見抜いたってことさ。――もちろん、ただでとは云わない。魔法少女になる代わりに、君の願いをひとつだけ聞いてあげる。どんな望みだって叶えてあげるよ。どうだい』


 トモエはしばらくの間考えて、そして決断した。


「分かった。その魔法少女ってのになるよ」


『いいのかい?』


 コクリとトモエは頷いた。謎は多いが、どうせ一度死のうとした身だ。どうなろうと別に構わないという思いもあった。けれど、心のどこかで所詮は幻覚という思いもあったのも事実だった。


『それじゃあ、君の願いを云ってごらん』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ