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第三章・水没した町 (5-2)


 薄汚れた小さな小屋だが、近くで見ると廃屋というわけではないことはすぐに分かった。


 愛稀は玄関の戸を叩き、「すいません。誰かいますか」と声をかけた。返事はない。今度は引き戸に手をかけ、ゆっくりと引いた。すっと戸が開く。中の様子は、外観よりもはるかに綺麗で、生活感があった。間違いなく誰かが住んでいる。


「すいません。誰もいませんか……?」


 愛稀は再び声をあげる。すると、しばらく間をおいて、やせて無精ひげを生やした中年の男が、ぬっと顔を出した。訝しげな目で愛稀たちを見ている。


「何だ、あんたら」


「あ、あの、私たち……」


 突然の男の出現に愛稀は焦ったが、改めて男の姿形を眺め、その動きを止めた。夢に出てきた男――、夢の中では後ろ姿だったが、愛稀は直感した。この人は夢に出てきた男と同一人物であると。


「お父さん……?」


 男は怪訝そうな顔をした。当然の反応だろう。突然の訪問者にいきなり父親呼ばわりされたのだ。しかし、男の表情は徐々に変化し、驚きの顔に変わっていった。


(似ている……)


 男はそう思ったのだ。今は亡きなつかしく愛おしい人物――、訪問者にはその面影があった。


「私、愛稀です」


「愛稀……」


 彼女の言葉に男は息を呑んだ。自分が20年前に捨てた娘が、目の前に立っているのだ。


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