第三章・水没した町 (3-2)
「でも、夢に出てきた場所ってのはどこにあるか、もう分かってるの?」
トモエが尋ねると、愛稀はさぞ自慢げに「もちろんだよ」と云って、上着のポケットからスマートフォンを取り出した。
「夢から覚めてから、インターネットで調べてみたの。夢の中に出てきたコンクリートの坂と大きな湖は、おそらくダムとその貯水池のように見えた。だから、ダム建設によって町が水没してしまったところが、昨日私が見た場所だと思うんだ」
愛稀はそう云って、インターネットの検索サイトで“ダム”、“水没した町”と打ち込み検索した。検索結果の一番上のサイトを開く。
「でも、ダムを作る時に周囲の町が犠牲になるっていうのは、よくある話な気が」
トモエの疑問に、愛稀はスマートフォンの画面を睨んだまま軽く頷いて応えた。
「うん。候補はいくつも出てきたんだけどね。でも、夢に出てきた風景にそっくりな場所が、ひとつだけあったんだ」
愛稀はスマートフォンを、画面をトモエの方に向けて手渡した。そこには雄大な自然の中にありありとたたずむダムの光景が、写真に映しだされている。写真の上に、このホームページのタイトルがでかでかと書かれ、そこにこのダムの名称が載っていた。
「白角ダム?」
トモエには聞いたことのない名称だった。
「うん。ここ数年前にできたダムらしいんだけど」
と愛稀は答える。
トモエが画面をスクロールしてゆくと、ダムやその周辺の自然、施設などがズームアップされる形で載っていた。
「それらの風景も、夢の中で見たのと同じような気がするんだ」
“気がする”というフレイズがトモエは気になったが、しかしそれは仕方のないことだとすぐに思い直した。写真を撮った人間はその人の視点からこの風景を撮っているので、愛稀のそれとは違うというのは当然なのだ。だから、愛稀がはっきりこの場所だと断言できないのもまた、当然なのかも知れない。確証を持ちたければ、直接行って現場を見てみるしかないのだろう。
「――場所はどこなのかな。この近く?」
トモエはそう云って、画面をさらにスクロールさせダムの所在が書かれていないかと探した。そして所在について書かれている箇所を呼んでうげっという顔になった。
「G県って、めっちゃ遠いじゃん!」
「そうなの。電車だけで2時間近くかかるみたい。もちろん、その分の交通費は私がもつよ」
「うーん……」
トモエは思わず唸ったが、行くと云ってしまったものは仕方がない。ただ、無駄足に終わらないことを切に祈るばかりだ。




