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第三章・水没した町 (1)

 1



 日下 愛稀はもともと孤児であった。


 物心ついてから聞いた話によれば、彼女は生後間もなく、ある孤児院の前に捨てられていたのだそうだ。


 彼女はそれ以降、その孤児院で暮らすことになり、5才の頃にその院長の知り合いの夫婦に引き取られた。夫妻には子供がなく、身寄りもなければ自分の素性さえ分からない彼女を、自分たちの子供として育てたいという思いがあったのである。


 よって日下という姓は彼らの姓を受け継いだものであった。けれど、愛稀という名前は顔も知らぬ実の両親から授かったもののようだった。というのも、捨てられていた彼女の着せられていた服の隙間に、『名前は愛稀です』という内容のメモ書きが挟まっていたのだという。そして現時点まで、彼女と実の親とのつながりは、この“愛稀”という名前だけであると云っても過言ではない。


 もともと孤児とはいえ、何不自由なく暮らし、大学にまで通わせてもらっている彼女は、今の育ての親にとても感謝していた。しかし、やはりひと目だけでも、実の両親に会いたいという思いは、どうしても消えることがなかったのだった――。


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