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第二章・謎の転校生 (3-2)


 しかし不思議なのは、そんなアイラがことあるごとにトモエに話しかけてくることだった。


 学校中から絶大な注目を集める彼女は、話し相手に困ることはないと思えるのだが、なぜか他の生徒には自分から話しかけようとはせず、トモエにばかり絡もうとしてくる。


 トモエはそのことに少し困っていた。アイラ自体が嫌というわけでは決してないが、クラスメイトからの反応が気にかかる。もともとトモエはクラスメイトたちからいじめられていた立場の生徒だった。今では露骨な嫌がらせは影を潜めているが、やはり溝は埋まることはなく、なるべく目立たずに過ごすのがいざこざを防ぐための定石であった。それがアイラという華やかオーラ全開の少女にひとり気に入られているとなると、「なんであんな奴が」というような痛い視線を集中的に浴びせられることになる。


 トモエのそんな思惑とは裏腹に、アイラは大きな声で親しげに話してくるのだ。いわずもがな、トモエは委縮し、話声も小さくなってしまう。


「トモエ、いつもテンション低いね。もしかして、アイラのこと嫌い?」


 ある時、トモエの様子が気になったのか、アイラは直接訊いてきた。


「ううん、そういうワケじゃ……」


 トモエが答えると、アイラはほっと胸を撫で下ろす仕草をした。


「ああ、良かったァ~。でも、それならもっと、元気に過ごした方が、きっと人生楽しいヨ? だってトモエ、とっても可愛いんだもん」


「そ、そうかなぁ……」


 トモエは肯定も否定もせず、ただ愛想笑いで返した。


「それとも、元気にできないのカナ? ホラ、さっきからビンビン感じているデショ、クラスのミンナからの、刺さるような視線」


「……えっ?」


 急に声を潜めて云ったアイラの言葉に、トモエは一瞬耳を疑った。しかし、すぐにその意味を理解した。アイラがどうしてそのことに気づいているのか、気づいているのならどうして自分に話しかけてくるのか、不思議でならない。


「嫉妬や侮蔑にまみれた陰湿な情念を感じるヨ。そういうトコロ、日本人のよくないトコロだね」


 アイラは少し腰をかがめてトモエに顔を近づけたトモエは挑発ともとれる眼差しを向けてきた。


「ひどいよね、あのコたちの幸せ、守ってるのアナタなのにね。でも、たったひとりで、どこまで守れるのカナ?」


 トモエは挑発的な視線を向けるアイラを睨み返した。


(この子、私の秘密を知ってる……!?)


 アイラはトモエから顔を離し、くるりと踵を返した。サラサラで柔らかそうな髪がふわっとなびいた。


「じゃあね」

 とトモエを一瞥して、たったったっ、と駆け足で自分の座席に戻っていった。


 アイラの席の近くにいた女子が、トモエの方を訝しげな目で見ていた。


「ねえ、あの子と何話してたの?」


「別に、何でもないヨ」


 女子の問いに、アイラはいつも通りの感じで応え、席についた。


(どうして私のことを……)


 トモエは何喰わない顔をしてクラスメイトと話しているアイラに、得体の知れないものを感じていた。


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