第二章・謎の転校生 (1)
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荒野のような場所に、炎のように妖しげにその身をゆらめかせる邪魂の集団があった。
その集団の中心に、突如として魔法少女に変身したトモエが姿を現した。彼女は両腕を横に開く。すると四方八方を鏡が取り囲んだ。
トモエの身体からぼうっと緑色の炎が放たれた。その光が鏡に反射して、辺り一帯に結界を張った。それにさらされた邪魂たちは、一瞬にして消え去った。
これもトモエにとって大切な仕事であった。邪魂や邪霊はユメのセカイで発生する。故に、現実世界よりユメのセカイに存在する率の方が圧倒的に大きいのだ。それらが現実世界に進出する前に浄化してしまうのも、魔法少女の重要な任務なのだ。
『終わったね。ご苦労さま』
トモエの頭の中で星夜の声がした。
『ま、朝の準備体操って感じかな』
トモエも心の声で返す。ユメのセカイでは、心さえつながっていれば相手と心の内で会話をすることができるのだ。
『どうする? 一旦こっちに来るかい』
『ううん、そろそろ学校行かなきゃだから、もう戻るよ』
星夜の誘いは嬉しかったが、あまりゆっくりしている時間はないのだった。
――
自分の部屋に戻ってきたトモエは、カバンを持ってすぐに家を出た。ユメのセカイに行く前にすでに学生服には着替えていたので、戻ればすぐに登校できる状態だったのだ。
いつもの通学路を歩き、トモエは自身が通う市立J中学校にたどり着いた。シューズボックスで上履きに履き替えていると、「おはよう、トモエ」と声をかけられた。
振り返ると、クラスメイトの金子 由梨が笑顔で立っていた。彼女はトモエの魔法少女という秘密を知るクラスで唯一の人間だった。
「ああ、おはよう」
トモエは真顔でそう云って、視線をすぐ戻した。けれど、そのまま先に行くことはせず、一応は由梨が上履きに履き替えるのを待った。
一緒に廊下を歩いていると、由梨がまた話しかけてきた。
「そういえば、今日転校生が来るみたいだね」
「そうなの?」
トモエは初耳だった。
「ちょっと前からクラスでも噂にはなってたんだけどね。帰国子女らしいよ」
「へぇ……」
トモエは短く応えた。
「もしかして、あまり興味ない?」
由梨はトモエの顔を覗き込んでくる。
「うん。ごめん」
トモエはすんなりと認めた。転校生だなんだと、興味津々になるクラスメイトたちの気持ちがまったく理解できない。
「そういうのトモエのよくないところだよ。もっと色んな事に興味持たなきゃ」
(大きなお世話だよ……)
トモエは心の中で呟いた。
その後、彼女は「由梨」とクラスの友人から呼びかけられ、「じゃあ後でね」とトモエのもとから離れていった。
友人へと駆け寄り談笑を始めた由梨を、トモエは憮然とした表情で見ていた。八方美人である彼女の性格を羨ましいとは思わないが、どこか心に引っかかるものを覚えるのも確かだった。彼女の自分にないものを強みにしているところが、面白くないのかも知れない。
愛稀のことにしろ、由梨のことにしろ、自分は少し嫉妬深いのではないかと思えてしまう。だが、トモエはあまり気にしないように努めた。由梨の方から視線をそらし、教室へと入った。




