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───翌朝。

再び東校の校門をくぐった。既に新学期は始まっているので、当然ながら今日から即授業に参加である。ちなみに俺のクラスは普通科一年C組。IDに記されていた。

歩く度に詰襟が喉につっかえて苦しいので、ホックは外してある。それにしても学ランとは……。

目的の講堂目指して歩くこと十数分。ようやくたどり着いた。似たような建物ばかりだと思っていたのは全て大学のものだったらしく、高等部の講堂は三階建ての長方形の建物だ。校舎、って感じがして、どこか懐かしい。

眺めつつも足を止めぬまま、俺は校舎の下駄箱を抜けた。


教室に着き、扉(手動)の前で一瞬躊躇したものの、そんな自分に呆れてすぐに中に入った。

「ほぅ……」

これぞ最先端!って感じの空間が広がっていた。白い壁に覆われている。黒板は無く、机が等間隔に並んでいる。その並んでいる机は、普通じゃなかった。

指定された窓際の席へ着く。そして俺は、伸ばした人差し指でパネルにタッチした。

───そう。この学校の授業は、タッチパネルの内蔵された机を活用している。

表示されたガイダンス通りに、IDを翳して生徒情報を読み込ませる。僅かなロード時間の後、画面が切り替わった。表示されたのは時間割り。うわっ、大して向こうと変わんねぇじゃん。まぁ普通科だしな。え~っと、今日は確か水曜日だから……。水の字の下を目で辿る。

物理、数学、世界史と続いて四限───体育。

体操服持ってないんだけど。つーかそんな場所あったっけ?懐から携帯端末を取り出して地図を表示する。くるくるとスクロールしてみると、何故か画面が立体表示に切り替わった。やべっ、どうしよう。とか思いつつその図を見ると、なんと地下があることが判明した。もしや……。

「ねぇ」

「ん?」

携帯端末片手に首を捻っていた俺に、後ろから声がかけられた。振り向くと、なんと女子だった。

「もしかして、遅れてきた人?」

「ん?あぁ。そうだが」

知らぬ間に前方が塞がってることを、怪訝に思って訊いてきたのだろう。それにしても、何で特区の女の子はみんなそれなりに可愛いんだろう。もしかして神威発現にはルックスも求められるのか?

「名前、訊いてもいい?」

「そりゃいいけど。鬼頭夕雨だ。鬼の頭に夕方の雨」

「女の子みたいな名前だね」

「率直な感想ありがとう」

裏表が無さそうな娘だな~。良い意味でも悪い意味でも。

「お嬢さんの方こそ、お名前は?」

「私は上原一葉。それにしてもお嬢さんって……。同い年でしょう?」

「見た目は歳より上に見られるけどな」

今日だって、朝は髭を剃ってきた。本音は永久脱毛してやりたいぐらい邪魔だしコンプレックスなのだ。

「確かに、ちょっと老けて見えるね」

「正直な感想ありがとう」

内心では「てめぇ失礼にも程があるぞ?保土ヶ谷があるぞ?」と馬鹿みたいに毒づいてます。

「おはよう───あれ?カズハ、その人誰?」

第二の不躾少女登場。しかも金髪で、日本ではない。日本語だけど。上原一葉に挨拶しながら近づいてきたその金髪少女は、俺を指差して(無礼)上原に訊ねた。

「ほら、例の遅れてくるって言ってた人」

「へっ?そんな話あったっけ」

「あったよ~。訊いてなかった?」

「多分その時寝てた」

どうやらこの小娘、不躾というより馬鹿のようだ。

「で、誰?」

「同じクラスなんだからもうちょっと気を遣おうよ」

上原がたしなめるが、聞いてる様子が無い。よくつるんでられるな。

「鬼頭夕雨だ。お前は?」

「ルーシー・パゼット」

名前だけは流暢な英語発音なんだな。

「夕雨って……女の子みたいね」

「うっせぇ」

知らず言葉遣いに遠慮が無くなるが、相手も無いんだしいいだろう。上原もちょっと楽しそうに笑っている。まさか俺みたいな太宰治作品(人間失格と訳してね☆)が、お嬢さん二人と会話を成立させているとは。

「ところで、レベルは?いくつ?」

なんて感慨に耽っていると、またもルーシーが不躾な質問を投げかけてきた。しかし───先程とは、明らかにニュアンスが違う。さっきまで存在さえ忘れていた他の生徒達が、さりげなく聞き耳を立てているのがわかる。やりにくい。

「───1だ」

言った瞬間、上原が驚きに目を見開いたのがわかった。

「レベル1?」

ルーシーが聞き返してくる。頷く俺。ルーシーの目が、侮蔑の色合いを強くしたのがわかった。

「───時間を無駄にした」

そう言って、彼女は一番前の席に座った。上原の憐れみの眼差しを、その時は深く考えなかった。


物理では進度の速さに驚かされ、数学ではいきなり入試問題とか引用されて困ったりした。世界史は英語入力の書き取りもあって、グローバル化に嫌気がさした。

「はぁぁ」

溜め息を吐いてパネルを待受画面に戻す。今は三限と四限の合間。今のうちに体育の準備をしないといけないのだが……ナニすりゃいいの?担任(美猴先生と呼ばれていた)は、「わからないことは教えてあげてね私は知らん」みたいなことを捨て台詞に何処へか消えたが、誰も俺に何も教えてくれない。随分と嫌われたものである。仕方無いので通りがかった教師に訊いて、更衣室の場所と、着替えも指定ロッカーに用意されてることを教えてもらい、お礼を言ってから更衣室まで急いで向かい、準備を終わらせたのだった。


体育では神威の使用は禁止されている。しかし、今日は高校生初めての体育ということで、神威のみを使った模擬戦『ミラクル』←(神業って、安直じゃね?)を行うこととなった。ここ特区限定の競技で、最も盛んに行われている競技のひとつらしい。危険なので、未成年にはあまり行う機会が与えられないとのこと。それを体験出来るということで、皆盛り上がっていた。一部怯えた感が覗けるのは、多分俺と同じ新入生だろう。今回はタッグ戦なので、体育教師が全員の端末にペアと対戦相手の名前、何試合目かが送られる。俺のペアは───なんとルーシーだ。一瞬目が合ったが、興味無いといった表情で逸らされた。仕方無いので端末に再び視線を落とす。名前の下に、神威名とレベルも表示されている。なんと。

レベル6『ライトニング』

レベル6ってことはあの鎖女と同じってことか。こいつに比べれば、あいつの態度はマシな方なんだなぁ。そういえば俺の神威って何て名前だろう。まぁどうでもいいが。俺の試合は二試合目なので、とりあえずやり方だけでも学んどくか。初戦の選手が所定の位置につくと、フィールド(十×四十平方メートルの長方形)を区切る透明の壁が床からせり出してくる。地下なのにもっと下があるのか。体育教師が選手達を見据え、手を挙げた。

「では早速───始め!!」

振り下ろされた瞬間、双方の神威が火花を散らした。


試合はたったの一分でカタが着いた。一人の撃った空気塊がもう一人の火の弾を避けるのに夢中になっていた相手選手を直撃したのだ。どうやら相性が悪かったらしい。勝者二人は遠隔攻撃タイプ、敗者二人は近接攻撃タイプだったようだ。ある程度双方が離れた位置から開始するので、遠距離射撃はかなり有効なのだ。観戦していた生徒が伸びた二人を運び出し、第二試合───俺の順番が廻ってきた。相手は女子二人(一人はボブカット、もう一人が茶髪のセミロング)。別にフェミニストではないが、ちょっと気が引ける。隣(といっても三メートルほど離れているが)に佇むルーシーは、無表情で何も言わない。無視である。壁が再び形成され、準備が整う。

体育教師が手を挙げ、振り下ろした。

「───始め!」

合図と同時に放たれたのは、水の塊。それと同時に急接近してくるボブカット。速い!

「がっ……!」

水弾は避けたが、ボブカットの体当たりはもろにくらった。ぶっ飛ばされる俺。フィールド外から笑い声が聞こえた。床に背中を打ちつけられ、息が詰まる。そこに殺到した水弾。

俺は反射───無意識のうちに、パチンッ、と指を鳴らした。


私───上原一葉は、目の前で行われている第二試合から、思わず目を逸らしたくなった。

友達であるルーシーの試合だが、私が注視しているのは彼女ではなく、そのペア───今日知り合ったばかりの鬼頭夕雨だ。

開始直後に夕雨に撃ち込まれる水弾。ルーシーはただそれを眺めていた。助けようという気は無いみたいだ。

彼は横ステップで水弾を避けたが、もう一人が恐るべき速さで飛び込み、隙だらけの彼を体当たりでふっ飛ばした。

「きゃっ」

その光景に悲鳴が漏れてしまった。恥ずかしさに辺りを見回すが、皆こちらには反応していない。笑い声に紛れて聞こえなかったようだ。私もフィールドに視線を戻す。

「あっ……」

夕雨君にかなりの大きさの水弾がいくつも放たれていた。これじゃあ死んじゃう───!

先生も危険と見たのだろう。止めようと防御壁を作動させようとしているが───間に合わない!

私は目を離せなかった。景色がスローモーションで進んでいく。夕雨君の表情が見えた。彼は水弾を見据えながら───獰猛な笑みを浮かべていた。

水弾達が轟音を立てて、夕雨君に吸い込まれた。飛び散る水飛沫に彼の姿が隠れる。どうなったの───っ!?

「なっ……っ!」

「あれは……」

状況が理解出来たのは、視界が晴れて十秒後だった。

「夕雨君……」

彼は、生きていた。それもかなりぴんぴんしている。ルーシーが目を見開いているのがわかる。何故なら彼は───紅い液体に包まれていた。

「あれは……結界?」

「いや、召喚系だろう」

「血みたいだな」

私は彼も保持者だということを、今更ながら思い知った。


「(ギリギリセーフ……)」

俺は自分の喚び出した血の中で、安堵の溜め息を吐いた。この血の中では俺だけが自由。だから水ぐらいなら自分を包み込むことで防ぐことが出来る。

ボブカットが得体の知れないものを前にした様に警戒心剥き出しでこちらを睨んでくる。そんなに警戒しなくてもいいよ?ただの血だし。一旦神威を解除する。

「ルーシー」

とりあえず、お仕置きの準備の為にチームメートを呼んだ。ボブカット同様、得体の知れないものを見る目を向けていた彼女は、今度は無視せずに「ナニ?」とだけ返してきた。

「ちょっと危ないから、近く来て」

言うと、彼女の瞳に好奇心の光がチラリと見えた。

「わかったわ」

素っ気なく応えつつも従ってくれ、俺のすぐ隣に並んできた。

「ちょっと失礼」

そして俺は、彼女の腕を掴んだ。

「なっ……!」

びっくりして振り払おうとするも、俺の握力に顔をしかめただけで終わった。茶髪セミロングは何かされると悟ったのか、特大の水弾を撃ち込んできた。だから無駄だっての。

「それじゃいっきまーす」

俺は指を打ち鳴らした。


「なっ……!」

「嘘だろ」

「あれがレベル1だってのかよ……っ!」

私はフィールド一杯に現れた液体に、目を奪われた。夕雨君が指を鳴らした瞬間に現れたそれは、相手の女の子達は息が出来ないようで、喉を押さえてパニックに陥っている。ルーシーは驚いているものの平気なようだ。

「駄目だ、危ない!」

先生の切迫した声が響く。そうだよこれじゃあ二人とも溺死しちゃう!先生が端末を操作した。透明な壁が床に吸い込まれていく。これで助かると安堵した私は、変わらずに水位を保ち続ける液体に絶望した。不意に夕雨君と目が合った。つまらなそうに目尻を下げた彼の口が動く。

───あぁ、もう終わりか。

そう呟いたように見えた。彼が私から視線を外すと、途端に液体が消え去った。床に投げ出された少女達を気遣いつつも、私は夕雨君から目が離せなかった。


「ユーウ」

「何だい?お嬢さん」

俺のお仕置きで精神的にも肉体的にもショックを受けた女子二名が、医療局(病院みたいなもの)に搬送されたことによって、体育の授業が急遽中止された。

よって、俺達は早めの昼休みを迎えていた。

二人を半殺しにした俺が何故放置されてるのかは知らん。覚悟してたんだが。

と、そこにな声をかけてきたのだがルーシー。さっきまでの無関心とは打って変わった態度だ。

「お昼、一緒にどう?」

ほんとにどうしたの?こいつ。……まぁ、心当たりが無いこともない。

「別にいいが。どういう風の吹き回しだ?」

「どうでもいいでしょ。───あぁ、カズハも一緒に」

というわけで、丁度トイレから戻ってきた上原一葉も交えての昼食会が開催される運びとなった。


ここ特区の学校は、そこらへんの私立高校よりも設備がいい。というか設備規格が日本の大学をモチーフにしているらしく、設備は結構満ち足りている。なので、勿論ちゃんと学食もある。

六人掛けテーブルを四人で堂々と占有し、各々が購入したメニューを並べて卓を囲む。しかも男は俺一人。ラブコメの気配がしそうだがしない。流石俺。

「じゃなくて」

「ん?」

きつねうどんを啜るのを中断し、胃の痛い沈黙を破った俺に反応したのは、残念ながら一葉だけだった。

「……何でお前がいんの?」

俺の指差す先───テーブルの対角線上に座して黙々とサンドイッチを食べていた美沙都は、ようやく俺に顔を向けた。

「黙りなさい受刑者」

「意味もわからず使うな。殺すぞ」

一葉が「殺すぞ」と言った瞬間にビクッ!と縮み上がった。

「や、すまん」

怖がらせたようなので、とりあえず謝っておく。

「さっきクラスメート二人を殺しかけてるんだから、冗談でも悪いですよ」

ルーシーも不快感を感じたのか、眉尻を下げてこちらを睨んできた。

「じゃあ冗談ってことにしとくわ」

ガタッ。

正面に座る一葉が、蒼い顔でこちらを見ていた。いや、そんな怖がんなくても……ほんとに冗談だからね?なんかマジすいません。とりあえず小さく手を合わせておいた。

「貴方の殺人予告は置いとくとして」

美沙都はサンドイッチの消化を再開しながら、話を続ける。こらっ、おぎょーぎわるいでちゅよ~。

「公安局からの連絡よ。貴方を監視させる人が決定したの」

「こらこら。一葉ちゃんがおいてけぼりだぞ?」

いきなり込み入った話に突入したので、俺は冗談めかしつつたしなめた。実際、一葉は突然出てきた危険ワードに目を回している。ほんとに何でわざわざここに来たの?

「私のことは心配しないんだ」

「黙らっしゃい」

公安局と聞いた時点でニヤニヤしてるお前は明らかにそちら側だろうが。

美沙都がわざとらしい咳払いをひとつして、サンドイッチを置いた。最初から置けよ。

「話を戻すわ。彼───鬼頭夕雨について。先程の授業を見れば、貴女達もわかったでしょう?彼は異質───危険人物だって」

「本人がいる前でその言い草はどうなのよ」

まぁ自覚はあるよ?自分が結構危ない思考回路してることぐらい。あくまで人から言われ続けてわかったことだけど。

「その前に。何でユーウがそんな扱いなの?危険な奴ならいくらでもいると思うけどな」

「それは私も知らないわ」

「えーっ」

不満の声を漏らすルーシー。随分親しげだなこいつら。この二人は数少ないレベル6同士(レベル6は東校だけでも三人しかいない)だから、以前から親交はあったのだろう。

「で、とりあえず俺の監視って誰?」

楽しいお喋りを邪魔して悪いが、訊きたいことはそんなことじゃないのである。

「ん。……彼女」

サンドイッチの最後の一口を咀嚼しながら、指差した先には───

「えっ……私?」

上原一葉がいた。

「いや、いやいやいや」

俺は首をぶんぶん振った。この人公安局員とちゃうでしょ?しかも新入生だろう?俺が「嘘だろてめぇ」と肩を竦めても、美沙都の指は一葉を指したままだ。……え?マジで?

「何でですか?」

うん。一葉ちゃんの疑問も当然だろう。美沙都は端的に答えた。

「神威性質よ」

「神威性質っていうのは、読んで字の如く神威の性質。主に強化系、元素系、召喚系があって、その中でも殺傷度や応用度に応じて分類されるんだよ」

ルーシーちゃんが身を乗り出して注釈を加えてくる。丁寧な解説ありがとうございます。

それにしてもルーシーちゃんのキャラがわからない。レベルで人を判断する人間なのは確かだが。

「で、その神威性質ってのがどうしたんよ」

具体的に、一葉がどういう神威を持っててどういった理由で監視役に抜擢されたのかを説明してもらわなければ。俺の要望だけではないだろう。他二人の視線を受けて、美沙都が人差し指を立てて解説スタイルに入った。

「彼女の神威『分身』は召喚系の能力。召喚系は発動プロセスが謎とされているのだけど、それだけに強力で、希少な神威体系よ。彼女の分身は伝達、拘束、その他多くの多様性のある神威よ。だから適任なの」

「私の神威ってそんなに便利なんだ~」

流石新入生。自分の神威のことすらロクにわかってない。俺は熟知してるぞ?ほんとに自分のだけだけど。

「で、監視についてなんだけど。まずは───」

「えっ?ちょっと、ちょっと待ってください!」

話をずかずか進めようとする美沙都を、一葉が必死で食い止めていた。

「……なに?」

不機嫌そうに返す美沙都。あの、ビビってる一葉が可哀想なんだけど。

「まさか、出来ないなんて言わないわよね?これは局長直々の命令なのよ」

局長ってあの担任のことだよね。あの人そんなにすごいの?まぁ教師なら学校での権力も強いのか。いや、でも局長だしな。う~ん……わからん。名前も知らんし。

「なっ、なんか断れないっぽい……」

「公安局に目をつけられたなら、従うしかないわ」

ルーシーが言外に諦めろと告げた。

「じ、じゃあ……はい。従います」

一葉ちゃん。とにかく可哀想である。

「じゃあ、放課後に公安局まで来て」

美沙都はそう告げて、颯爽と立ち去った。

それを見送りながら、まさか知り合いに監視されるとはなぁ……と、なんとも言えない気分を味わった。


クラスメートのほぼ全員から得体の知れない危険人物扱いされた俺は、レベル1いびりにも遭わず、無事放課後を迎えた。

聞くところによると、レベル1はこの東校にも十人そこらしかいないらしい。それらはクラスメートからパシリ扱いされたり、ストレス発散のサンドバッグにされたりと、奴隷みたいな扱いを受けているらしい。そういう意味では、早めに騒動を起こしておいて正解だったかもしれない。

携帯端末片手に帰寮した俺は、扉にIDを翳す寸前で微かな息遣いが聞こえることに気付いた。しかも目の前の扉を隔てた向こう───部屋の中から。

「(……泥棒か?)」

一瞬そんなことを思ったが、すぐに打ち消した。

昼間の話を思い出し、例の監視だろうと当てをつけた。よし、そうとわかれば気にすることは無い。

俺は鍵を開け、ひんやりと冷たいノブを回した。

「ただいまぁ~」

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