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第13話

無理矢理感がするかもしれませんが、どうぞ。

「結構登って来たが、まだ出てこねえな」



そう呟く流零は現在物盗り妖怪を退治するため、藍と不知火を連れてその妖怪が現れるという山の道を進んでいた。


今のところは道中で動物一匹視界に入ってこない。



「だが、少し前から強い妖力を感じる。近くにはいるようだぞ」


「とりあえず用心しながら行きましょう」



流零の後ろについてくる形で、藍と不知火はそれぞれ周囲を警戒しながら進む。


そろそろ下り道になるところまで来た時、三人の足が止まる。



「流零」


「分かってる。どうやら奴さんのお出ましみたいだぜ」



流零が言い終わるやいなや、それは山の木々の中から現れた。


まるで雲のようだが筋肉質な体、口元には立派な髭が蓄えられている。そして何より一番目を引くのはその体の大きさである。


3m以上は確実にある巨体が三人の前に立ちはだかり、こちらを睨み付けながら見下ろしている。



「お前達、命が惜しければ食料か金目の物を置いていけ」



低く重みのある声が辺りに響く。この見た目と声で脅されたら、確かに一般人であれば皆要求に応じてしまうだろう。


しかしこれでビビるような流零達ではない。



「悪いがそいつは呑めねえ話だな。俺達はお前を退治しに来た……と言っても出来れば穏便に済ませたいんだがな」


「なんだと?」



自分を見上げながら堂々と言い放つ流零に、怪訝な表情をする妖怪。



「お前は物は盗っても殺しはしてねえらしいな。だからそんなお前を見込んで頼む!人間達を困らせるのはもうやめてくれ!」



真剣な眼差しで語る流零、対する妖怪も真剣そのものだ。



「……それは出来ん。こちらにも事情というものがある。さあ、物を渡す気がないならば力ずくでいただくぞ!」


「ちぃっ、結局こうなっちまうのかよ!」



流零の説得もむなしく、妖怪は大きな腕を伸ばして襲いかかって来た。


三人はバラバラに飛んで妖怪の腕を回避する。



「藍!不知火!俺に任せろ!」


「分かった!」


「気を付けて下さい!兄貴!」



了承の言葉を聞くと流零はすぐさま妖怪との距離を詰める。


妖怪はその巨体の割には素早い動きで剛腕を繰り出してくるものの、流零はその攻撃を難なく避けていく。



「うおおおお!」


「ぬう!?」



流零は煌龍を引き抜くと、繰り出して無防備になった妖怪の左腕を切断する。


苦悶の表情を浮かべる妖怪。この機を逃すまいと流零は続けて頭を狙う。



「もらっ……何!?」



だが次の瞬間、妖怪の目から妖力の光線が放たれる。


間一髪で避ける流零だったが体勢を崩してしまい、そこへ妖怪の右の拳が降って地面に押し潰されてしまう。



「「流零(兄貴)!?」」



藍と不知火の叫びが聞こえた直後、地面を押さえつけている妖怪の拳が上がる。


そこには目立った傷もなく、片手で妖怪の拳を押し返す流零がいた。



「無事だったか……」


「まったく、心配させないで下さいよ」



流零の無事を確認すると藍と不知火は安堵の表情見せる。



「まさか目から攻撃が来るとは驚いたぜ。だが俺を倒すには不十分だ!」



流零は煌龍を振り上げると妖怪の右腕も斬り落とそうとする。



「待って!!」



突然の声を聞いた流零は、煌龍を妖怪の腕に当たる寸前で止める。


その場にいる全員が声が聞こえた場所に視線を注ぐ中、声の主は山の木々の間からその姿を現した。



「お前は……」


「一輪!?何故出てきた!?」



声の主の正体は流零が町で出会った少女だった。


妖怪はひどく慌てた様子で、彼が口走った『一輪』とは恐らく少女の名前なのだろう。



「もういいのよ雲山。これ以上戦っても結果は見えているわ。私は雲山に死んで欲しくないもの」


「むう……」



悲しい表情をする一輪の言葉に、妖怪『雲山』は苦い顔をすると俯いてしまった。



「私達にはもう戦う意志はありません。勝手を承知でお願いします!どうか、もう雲山に攻撃しないで下さい!」



土下座して懇願する一輪の姿を見ると、流零は無言で煌龍を鞘に戻して一輪の元へ歩いていく。



「顔上げな。これ以上お前らには手出ししねえから安心しろ」


「っ!ありがとうございます!」



土下座を続けていた一輪に穏やかな口調で言葉をかけると、喜びでいっぱいの表情で礼を言うのだった。



「そういやお前ら、なんで物盗りなんかやってたんだ?普通妖怪なら人間を襲って食ったりするのによ」


「それは私も聞きたいな。それに彼女の妖力がそこの雲山という妖怪に比べて、やけに小さいのも気になる」


「詳しく教えてもらってもいいですか?」



思い出したように疑問をぶつける流零。いつの間にか近くに来ていた藍と不知火も詳しく知りたいようだ。



「分かりました。では私が雲山と出会った頃から話しましょう」



彼女、雲居一輪はかつては普通の人間だったらしい。

だがある時、自分が住んでいる場所の近くで見越し入道という妖怪が出るという話を彼女は聞いた。


元々度胸のある性格だった彼女は恐れることなく見越し入道の元へ行くと、見事退治したのだった。


退治された入道は彼女の度胸に感服し、一生彼女を守ると決意した。その入道こそが雲山である。


彼女は妖怪に襲われる心配はなくなったが、代わりに人間からは避けられるようになってしまった。


そうして各地を転々としている内にいつしか彼女は妖怪となったのだ。


だが妖怪になってもやはり元は人間。人間を襲って食べることなど彼女には出来なかった。


だからといって雲山と一緒では普通にお金を稼ぐことが出来ない。そこで彼女は食料や金目の物を奪うことで生活をつないできたのだ。



「そういうことだったのか」


「元人間か……不知火のように直接力を取り込んだ訳ではないから、妖力があまり強くないんだな」


「妖怪になった経緯は違いますけど、なんだか親近感が湧いてきますね」



説明を聞き終わり、納得した様子の三人。


少しの間を空けると、流零は決心したような顔で一輪と雲山を見る。



「お前ら、俺達と一緒に来い」


「「「「え?」」」」



流零以外の全員の声が重なり、キョトンとした表情に変わる。



「いいんですか?あなた方に同行しても」


「ああ、お前らにこれ以上盗賊みたいな真似させるわけにはいかねえからな」


「でも兄貴、オイラ達のお金は大丈夫なんですか?」



話を進める流零に素朴な疑問をぶつける不知火。



「そんなもん、お前の食費を減らせばいいだけだ」


「ちょっ!?ひどいです兄貴!」


「胃袋を縮小するいい機会じゃないか。」


「姉御まで!」



流零と藍の二人からの無情な宣告に慌てふためき、これからの食事に絶望しそうな不知火。


その傍ではコントのようなやり取りを見て、一輪と雲山が笑いを必死にこらえていた。



「フフッ、ではお言葉に甘えさせていただきます。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、これからよろしくお願いします」


「儂からもよろしく頼む」



笑いが少し残っているものの丁寧に挨拶をする一輪と雲山。ちなみに斬られた雲山の腕は既に治りかけている。入道は傷の治りが早いのだろうか?



「おっと、そういやまだ名乗ってなかったな。俺は流零、よろしくな」


「私は藍だ。女同士仲良くしよう」


「お、オイラは不知火です。よろしく」



流零と藍が笑顔で迎える中、不知火はさっきのを引きずっているのか笑顔が少しぎこちない。


何はともあれ一行に新たな仲間が加わり、旅が再開されるのだった。

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