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第11話

今回は作るのに時間がかかりましたがクオリティはあまり変わっていません。


なんてこったい。

とある竹林の中。普段は至って静かな場所なのだが、今日は騒がしくなっていた。



「待てコラァァァァ!!」


「待たないよ〜!」



短い黒髪に兎耳を生やした少女が竹林を駆け抜けていき、それを一人の男が追いかけていた。



「いい加減にしやがれ!このクソガキャァァァァ!!」


「アハハ、捕まえられるなら捕まえてみろ〜!」



少女を追いかける男、流零は鬼のような形相で走っている。一方の少女は捕まらない自信があるようで、相手を小馬鹿にするような笑みを浮かべながら逃げている。


事の発端は少し時間を遡る。



不知火を仲間に加えた一行は旅を進めていた。



「は、腹が減った。兄貴〜、飯にしましょうよ〜」


「何言ってんだ。朝にあんだけ食ったくせによ」



まだ昼にもなっていないというのに、不知火はもう腹が減ったと言い出す。


その様子を見た流零は呆れ顔でぼやく。



「腹が減ったもんは減ったんですって。このとおり!お願いします!」


「その辺の草でも食ってろ」



土下座をしてお願いするも一蹴され、不知火はしょんぼりとした表情で再び立って歩き出す。


少しすると三人は左右に分かれた道に差し掛かる。何とはなしに左に進んでいく三人。


道を進んだ先には開けた場所と大きな竹林があった。


「竹林か、中で迷うと面倒だから一旦引き返そう」


「いや、面白そうだからちょっとぐらい入って探索してみようぜ。いざとなったら飛べばいいんだからよ」


「そうです姉御!それに美味い筍とかが採れるかもしれません!」



引き返して違う道に行こうとする藍。だが流零は好奇心いっぱいでワクワクしており、飯のことしか頭にない不知火は涎を出しながら竹林に入ろうというのだ。


違う意味で目を輝かせている二人に、藍は子どもかお前らはと思いながらどうすべきか悩む。



「はあ、分かった。ちょっとだけだぞ」


「そうこなくっちゃな」


「よーし!食料調達だぁぁぁぁ!」



大きなため息をついた藍は結局二人の我が儘を受け入れた。手のかかる子どもを持つ母親というのはこんな気分なのだろう。


ともあれ竹林に入ることにした三人は中へ入って行くのだった。



「うわー、其処ら中に竹が生えてますよ」


「竹林なんだから当たり前だろ。だが、これは少しでも気ぃ抜いたらすぐに迷っちまうな」


「やはり深入りはしない方がいいな。探索はこの近辺で済ませよう」



三人が目にした物は乱立する凄まじい数の竹だった。下手に奥まで入れば迷うのは必至だろう。


竹林の内部に驚きを覚えながら三人が歩みを進める。次の瞬間だった!



「うお!?」


「な!?」


「うわ!?」



突然地面が沈み、三人はそのまま落ちていく。それは深さが2mぐらいはある落とし穴だった。



「なんなんだよ、いきなり落とし穴とかよ!」


「誰が作ったかは知らないが、悪戯にしては少し度が過ぎるぞ!」



落とし穴に怒りを覚える流零と藍、すると二人の下からうめき声が聞こえてくる。



「あ、兄貴ぃ……姉御ぉ……。重いですぅ」



ハッと下を見るとそこには二人に座られて下敷き状態になっている不知火がいた。


とても苦しそうな不知火を見て二人はすぐに退く。



「はぁ……はぁ……息が出来なくなるかと思いましたよ」


「す、すまないな」


「お前もまた見事に下敷きになったな。逆に凄いぜ」



必死に呼吸を整える不知火に藍は苦笑混じりに謝罪し、流零は呆れた様子である。



「やったー!引っ掛かった、引っ掛かったー!」



三人が話していると突然落とし穴の外から嬉しそうな声が聞こえてきた。


なんだ?と三人が思っていると足音が近付いてきて、一人の少女が穴の中を覗きこんできた。


その少女は白っぽい着物を身に付けた黒のショートヘアーで、頭に兎の耳が生えていた。



「お、今回は三人も引っ掛かってる!また腕が上がったかな?」



三人を一度に引っ掛けられてかなりご満悦の少女。言葉から察するに、彼女がこの落とし穴を仕掛けた張本人で間違いないようだ。



「おい!てめえ、こんな真似しやがって。ふざけんじゃねえぞ!」


「こんな単純な仕掛けに引っ掛かった間抜けに怒られても怖くないね」



流零は少女に対して怒りを露にするが、全く怖がる素振りを見せない。それどころか、やれやれといった風に完全にバカにした態度を取っている。



「じゃあ私はこれで失礼するね。さよなら〜間抜けさん達」


「この野郎、逃がすか!」


「私も行くぞ!」


「オイラも!」



満足したらしい少女は踵を返すとそのまま走っていく。しかし怒りの治まらない流零達が黙って帰すはずもない。落とし穴から脱出するとすぐに少女を追いかける。



「あらら、追ってきたか。それじゃあ私の作った罠を存分に味わってもらおうかな」



後ろを見て流零達が追ってくるのを確認した少女は悪っぽい笑みを浮かべると、竹を避けながら速度を落とすことなく走っていく。



「くそっ!思ったより逃げ足の速え奴だ」


「それに、私達はこんな竹が乱立している場所に慣れていない。捕まえるのは手間がかかりそうだな」


「でもやられたまま帰るなんて冗談じゃないですよ!絶対に捕まえ……うわあ!?」



少女の足の速さと慣れない竹林という場所に苦戦する三人。すると突然不知火の足元が崩れて、落とし穴に落ちてしまう。



「不知火!?」


「止まるな藍!ここで見失ったら完全に逃げられちまう!」


「くっ!?……すまない不知火!」



不知火を助けに戻ろうとする藍だったが流零に止められてしまう。苦虫を潰した表情になり、少し間を置くとまた少女を追って走るのだった。


一方落ちた不知火は……



「む、虫!?虫がいっぱ……ぎゃあぁぁぁぁ!!気色悪いぃぃぃぃ!!」



落とし穴の中で大量のムカデ・蜘蛛、その他諸々の虫に群がられていた。



その頃、流零と藍はまだ少女との距離を詰められずにいた。



「あのガキ、体力も結構あるんだな。畜生め!」


「伊達にあんな悪戯を仕掛けている訳ではないということか。それよりもこのままでは……おっと!?」



まだ少女を捕まえられないでいることに苛立って悪態をつく流零。


藍はこの状況をどうにか出来ないかと考える。その時、今度は藍の足元が崩れるが藍は完全に崩れきる前に横に跳んで回避する。



「同じ罠にそう何度も引っ掛か……なっ!?」


「藍!?」



落とし穴を回避した藍だったが、避けた場所にも落とし穴が仕掛けられていた。



「こ、これは鳥もち!?こんなものまで仕掛けているなんて!」



落とし穴に仕掛けられていたのは鳥もち。体にベタベタとくっついて身動きが取れなくなってしまった。



「流零!私に構わず行くんだ!逃げられるぞ!」


「分かった!すぐに戻る!」



ここで時間をかけていては逃げられてしまうと判断した藍は、落とし穴の中から叫ぶ。


流零は藍の声を聞くとすぐに目線を少女へ戻して走り出す。



ここで場面は冒頭へと戻る。


流零は未だに走るのを邪魔する竹林に苦戦していた。



「ちっ!この竹さえ無けりゃとっくに追いついてるのによ!……そうか、竹をうまく使えば!」



何か閃いた様子の流零。自然と口元に笑みが浮かぶ。



「そろそろ諦めたらどうなの?」


「諦める?冗談言うんじゃねえ。俺は借りはきっちり返さねえと気が済まねえんだよ!」



依然として余裕の少女に対して流零は台詞を言い終わると同時に、一発の霊力弾を撃つが少女の横を通り過ぎてしまう。

「どこ狙ってるのさ。外れだよ」


「いいや、これでいい」



ニヤニヤしながらバカにしてくる少女だが、流零は目的を達成したようである。



「何を言って……フギャッ!!」



流零の態度に疑問を抱く少女であったが、次の瞬間顔に激痛が走り意識が遠のいていった。


少女の顔に当たったのは竹である。さっき流零の撃った霊力弾によって折られた竹が見事に直撃したのだ。



「さて、こいつをどうしてやろうか。……その前に二人を助けに行くか」



仰向けに倒れて気絶している少女を担ぐと、流零は落とし穴にいるだろう仲間の元に向かう。頭の中で少女へのお仕置きを考えながら……。




少女が捕まってから二時間程が経過した。


竹林の入り口に流零達三人と正座させられた少女の姿があった。少女の頭には三つの大きなたんこぶがあり、若干涙目になっている。



「もうこんなことすんなよクソガキ」


「クソガキじゃない!私には因幡てゐって名前があるんだ!」



淡々とした口調の流零に少女……てゐは声を荒げて抗議する。



「分かった分かった。そんじゃ俺達はもう行くぜ、てゐ」


「勝手に行けばいいでしょ!ふん!」



出会った当初とは立場が逆転した二人。余裕たっぷりの流零にてゐは不機嫌な様子でそっぽを向くのだった。



「なんだか、ただ疲れただけのような気がするな」


「結局飯も食えませんでしたし。はあ」


「たまにはこういうこともあるもんだ。辛気臭え顔してねえで行くぞ」



竹林から離れて旅を再開する三人。流零は愚痴をこぼす二人を励ましながら歩みを進めるのだった。


一方竹林に戻ったてゐは罠の後始末をしていた。



「くそ〜、次はもっと凄いの作ってギャフンと言わせてやるんだから!」



どうやらちっとも懲りていないようである。

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