所変わって
所変わって中山市渋谷区。国子が正直の帰りを待っていると来客があった。
「まーちゃんじゃない・・・」
国子は残念そうに玄関のドアを開けると正直の姉の三浦登子と渋谷姚子と池澤夏子がいた。国子はこの三人がどうも苦手だった(弟嫁の立場なので当然だが)。
「まーちゃんはいる?」
「正直はまだ帰っていないのですが・・・」
「もしかして西松の誰かのところに行くといっていなかった?」
「何もおっしゃっていなかったのですがもしかして例の件ですか?」
「既に国子さんの耳にも届いていたとは・・・」
「いや、宗家の嫁として知らなきゃまずいでしょう」
「とりあえずあがって下さい」
「それで西家と東豊家と中山家がお義父様をそそのかしていると?」
「はい、まだ他にもあるようで」
「私が聞いているのは錦家なんですか・・・」
錦家は純恵の母の実家である。
「錦家!あの大叔母(純恵の祖母)ならありうる!」
「うーん・・・私、昨日圭子と和美(ともに純恵の叔母)に会ったけど特に変わった所は無かったわ」
「まさか圭子ちゃんと和美ちゃんが加担しているというの?!私は信じないからね!そんなこと」
「いや、そういうことじゃなくて圭子と和美は何も知らなさそうということで・・・」
「私が黒田純恵から聞いた話だと純恵のお母様は錦家内では知ってはいけない立場になっていて知らないふりをしていて、また純恵はこの事に罪を感じているらしくて・・・」
「陽子さんが知らないふりをしているなら妹の圭子ちゃんや和美ちゃんも知らないふりをしているかも知れないわ。しかし娘ならいざ知らず外孫の純恵ちゃんにまで罪の意識を植え付けるなんて酷すぎる!」
「まあムキにならなくても・・・」
その時、ようやく正直が帰宅した。
「あれ?姉ちゃんたちどうしたんんだ?」
「(まさかまーちゃんは知らない?)」
4人は一番知っているべき正直が知らなさそうなので不安になったのだった。
渋谷姚子(24)・・・西松侯爵と夫人の次女。渋谷伯爵家に嫁ぐ。
池澤夏子(22)・・・西松侯爵と夫人の三女。池澤子爵家に嫁ぐ。
西松圭子(24)・・・錦家の西松男爵の四女。純恵の叔母。
西松和美(18)・・・錦家の西松男爵の五女。純恵の叔母。