西松市だよ
西松直孝、17歳。西松一族である西松緑子の私生児として西松市に生まれる。
緑子は女手一つで直孝たちを育てていたが西松市随一の超高級クラブのホステスでもあったので経済的に不自由はなくいわゆる億ションをキャッシュで購入するほどだった。
そして緑子の子供の父親は・・・西松侯爵であった。
その昔侯爵が西松に来たとき、西松一族の娘として緑子は接待したのだったがその晩、緑子は侯爵が泊まる部屋に呼び出されたのだった。
翌年、侯爵が再び西松に来たとき乳児を抱いた緑子がいたのだった。
しかし侯爵は驚く様子はなく緑子は逆に戸惑ったが再び部屋に呼び出されたのだった。
数年後、緑子は意を決して西松子爵の上京に同行したのだった。2人の幼児を連れて。
しかし正妻がいる以上緑子は侯爵邸に入るのはためらったのだった。
そして緑子は同族の母娘を紹介される。
そして娘の顔を見るなり緑子は驚く。何と緑子の子供と顔がにているのだった。
そして自分と同じ立場の母子が沢山いることを緑子は察するのだった。
緑子は西松女子大学卒業後大手企業の西松支店に父親の名前を書いて入社した典型的なコネ令嬢であったが未婚のまま妊娠してしまったため逃げるように会社を辞めて実家からも出て出産したがさすがに生活が苦しくなったため夜の商売に足を踏み入れたのだった。
緑子は侯爵に会うことに成功したが場所はラブホテル。その後西松に戻った緑子は9か月後に3人目を出産することになったのだった。
直孝はある人物の元を訪ねる。その人物は西松元昭子爵である。ところが
「あいにく元昭はまだ帰ってきていないのです。」
と元昭の母堂は直孝に謝ったのだ。どうやら飛行機が遅れているらしい。自分から呼び出しておいて何事かと直孝は憤慨したのだった。
母堂は直孝にお茶を出しながら、
「私も今日初めて聞いたのでよくわからないのですが例の件でしょう」
「そうです」
「それで元昭を中山から呼び出したのですが・・・」
「ですが?」
「このことは私たちが考えるより遥かに根の深い問題で」
「はい、それで夏休みに入ったらひとまず上京して調べようと思います」
「それで私も上京したいのですがあいにく介護があるので西松を離れられないので元昭やあなた様に調査をお願いします。」
「わかりました。」
「ところで緑子さんはこの事をご存知で?」
「いえ、母は知らないと思います。おそらく姉や妹も知らないでしょう。」
その時、元昭が帰ってきた。
「昭ちゃん、待ってたぞ」
直孝はそういったあと、急に表情を変えた。
「千鶴子さんと直孝さんが同じ場所にいるのはまずいわ・・・」
元昭の妻千鶴子は侯爵の正妻の娘で直孝は侯爵の妾の息子。しかも二人は同じ年。母堂は後悔したが後の祭りだった。
子爵邸に真夏のはずなのに冷たい空気が流れる。母堂は次にどう動けばいいのか必死に考えた。
西松緑子(おそらく40代)・・・西松一族の出身で西松侯爵に召されて直孝など一男二女を産む。
故西松子爵夫人(40代)・・・別の西松子爵家出身で故子爵に嫁ぎ元昭などを産む。
西松千鶴子(17)・・・西松侯爵と夫人の娘で正直の同母姉。3年前国子が嫁いでくる直前に元昭に嫁ぐ。