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笑ってた方が前に進める気がするよ。うん、そんな気がする。


最近シャワー浴びて風呂入ろうとしたら、ゴキブリが足元にいてびっくりしすぎて風呂に頭からダイブしました。

どうも、ご無沙汰メダショウでございます。

みなさんシャワー浴びる時は気をつけてくださいね。あなたの…、足元に…、ゴキ…。

そんな訳で半年以上空けての更新となりました。不定期更新にもほどがあるわほんとに、というみなさんのツッコミを今真摯に受け止めております、多分。


それでなんですが、あれほどもう少しで終わります次話で終わりますと言われたこの『女子更衣室覗き盗撮事件』ですが、この回じゃ終わりません!!

次話解決になります、多分。

もうそろそろ終わらせたいですね。まだまだ書きたい話結構あるんですよ実は。梅雨には雨降ったり夏には幽霊やら海やら、秋には体育祭文化祭、冬には冬休み元旦コタツ、そして修学旅行。あのアホ4人組にはやらせたいことが実はたくさんあったりするんですよ。そしてキャラのほうもまだあと6人とか7人とか8人ほど出そうかなーと思ってたりします。


まぁアレですね、更新頑張ります。ちなみに今回意味のわからないワールドが一部ありますが受け流してください。

えーそんなわけで第二十話です。


どぞー




第二十話




「うまっ!!! とかげの唐揚げうまうまっ!!! うまうまうまっ!!! ……。」


「えぇーっ!? カっちゃんほんとにぃ!!??」


「うまうまっ!!!」とせわしくはしゃぎながら口をもぐもぐと動かすカズに顔が引きつる。引きつるどころか、身体全体をカズから少し離す。なんか…、気持ち悪い。ちょろっとカズの口から出たとかげの尻尾がさらに気持ち悪さを倍増させる。

店員さんによって運ばれてきた『とかげの唐揚げ』は、オレが思っていた以上に……エグい。料理が上手なカシクラ先輩だから、もっとこう、良い感じにフライされて衣が全体に綺麗なキツネ色を咲かせていると思っていたのだが…。出てきたとかげの唐揚げは、何故か『頭』だけ衣を付けずフライされていた。それはもうエグいエグい。なんかもう、あれですよ、…目が怖すぎる。

カズが一つ食べて残るとかげの唐揚げはあと二匹。


「ねぇねぇカっちゃん、ボクも食べていいかなぁー?」


「いいよー」


「やったぁ」


子供のような無邪気な笑顔を見せながら、頭以外キツネ色のとかげの尻尾を掴んで食べようとするマコに、オレはとっさに止めにかかった。


「待てマコっ、その物体Xから手を離すんだっ」


「えぇー何タっちゃん? タっちゃんも食べたいのぉ? はいどーぞぉ」


「…ぎゃあっ」


自分の口へと向かうとかげの尻尾を掴んだ、女子のものと普通に間違えてしまいそうなほど細くて綺麗なその手を、進路変更してオレの口へとマコは突然近づけてきた。近づくとかげの頭、そしてそのギョロっとした目が怖すぎてオレは小さく悲鳴を上げ、とかげを条件反射で手の平で吹っ飛ばした。


「あっ」


宙を舞うとかげの唐揚げが、まさかのいいタイミングで欠伸をしていたテルの口の中にスポッと入ってしまった。それを見て短く声が出た。

突然口に何かが入ってきて、一瞬ビックリしたようで目を見開いたテルだったが、何故かそのままとかげの唐揚げを食べ始めた。


「うぉいっ、大丈夫かよテル?」


「…………」


返事はない。目を閉じ、まるで何十年も寝かしたワインをじっくり味わうかのように食べるテル。

大丈夫かこれ? とかげだぞおい。いやいやそりゃあ国によっては食べるよ、とかげだって食べちゃうよ。でもあれじゃん、ここ日本じゃん、日の丸じゃん、侍じゃん、ちょんまげじゃん。


「テっちゃん、どうなのぉ? おいしぃー? パリパリしてるぅ? 薄味になってるぅ? ボク、濃い方が好きなんだぁー」


やたらとしつこいマコを後目にテルはゆっくりと目を開けた。そして、こう言い放った。


「……うまい」


「マジかよっ!!!」


あの気持ち悪い物体Xが「うまい」だと…!? あの味にうるさかったような気がするテルが「うまい」だと…!!?? そ、そんなわけが…。


「じゃー最後の一匹はボクが食べよぉー」


「ちょっと待った!!!」


最後の一匹となったとかげの唐揚げを頭からかぶり突こうとするマコに即座にストップ。

気になる。気になるぞ、とかげの唐揚げ…。

あの気持ち悪いビジュアル、テルの舌を唸らせる程の味、オレの頭の中はいつの間にかとかげの唐揚げで一杯だった。


「やっぱりちょっとだけくれないか?」


ちょっとだけ食べたくなった。


「うんいいよぉ、…はいっ」


オレの我が儘にマコは文句一つ言わず、とかげの唐揚げを千切ってくれた、が。オレの手の平にちょこんと置かれたのは、まさかの「頭」の部分…。


「…え? え!? 何であえての頭チョイス!!?? 何で衣ついてない所チョイスぅぅぅっ!!??」


「頭には栄養が詰まってるんだよぉ、タっちゃん頭悪いから食べといた方がいいよぉー」


「……お、おふ」


約300のダメージを受けた。アッパーかと思ったら鳩尾に来たそんな感じの衝撃。結構致命傷。天然とはこの事を言うのだろう…。


「あ、ありがとなマコ」


「いえいえー、どういたしましてだよタっちゃん」


役に立てたとニコニコ笑うマコ。しかしオレの顔は苦笑い。だが、マコの笑顔を見てると自然と顔が同じ様に笑顔になっていく。笑顔を誘う笑顔。

その笑顔のまま、頭無しのとかげを「いただきまーすぅ」とマコは口に頬張った。


「…じ、じゃあオレも頂こうかな」


口に放り込む前にもう一度ヤツを凝視する。…グロい。ただただその一言。

気のせいかもしれないが、フライされて動かないはずの目が、動いてこちらを向いている気がする。負けじと凝視。


「タクやーん、食べないのかえ? だったらおれにちょうだい。もう一度あの大草原へ行きたいんだー」


手の平のとかげの唐揚げを凝視するだけで一向に食べようとしないオレに、しびれを切らしたカズが声を掛けてきた。


「は? 大草原って何だよ?」


「タクやんそれはだね、食べてみたらわかーるよ」


「何だそれ」


大草原? タイソ○・ゲイ?

どちらにしろ、やたらとドヤ顔で言ってくるカズが普通にウザイ。特に「わかーるよ」の部分のドヤ顔は相当なもん。


「まぁそれじゃ、……頂きます」


ドヤドヤしているカズをほっといて、オレはついにとかげの頭を口に放り投げた。そして一噛みした次の瞬間、口全体に言葉では表せないような味が広がってきた。それには一瞬驚き、「んぁはっ!?」と変な声が出た。とりあえず不味くはない。

問題はここからだった。三噛みほどしたところで、突然頭の中がふわーっと。それはもうふわー。ふわー。ふわー。ふわー……。





あははっ

あははははっ


うふふっ

うふふふふっ


待てよアンジェリカー


うふふ

捕まえてみなさい

アレサンドロ


あはははっ

じゃあ本気だすぞー


うふふ

いらっしゃい


あははっ


うふふっ


あははははっ


うふふふふっ


あははははっ


うふふふふっ


あはは…





「……はっ!!!」


オレはいつの間にか閉じていた目をバッと開く。そして、辺りを見渡す。

うん、間違いない。ここは九志羅駅から歩いて5分のファミレス『Benny's』だ。

…どうなってやがる。

オレの頭の中にある記憶ではほんの数秒だけだが、カズの言っていた『大草原』をオレは走っていた。オレの前には顔は見えないが女の人が一人同じように走っていた。そしてここが意味わからないのだが、何故かオレはその女の人とイチャイチャしていた。


「いやいやいや待て待てっ」


この意味不の状況にとりあえずツッコむことにした。


「え!? なんだ!? なに今の良い感じの大草原!? なに今の良い感じのイチャイチャっ!!??」


「ほっほっほっ。そなたも行ってきたかね、あの大草原へ」


「どこのRPGの村人Cの言葉だよそれっ」


「ほっほっほっ。そなたもいってきたかね、あの大草原へ」


「…………」


突然老人風の口調で喋り始めたカズに続けてツッコむ……のを二回目からやめた。どうせRPGのように同じ言葉が返ってくる。

確かに行ったよ、大草原に。いやもう行ったっていうか、むしろあれは逝ったよ。

まだ微かに残るとかげの唐揚げの味。凄すぎる。まさか幻覚を見せるとは。てか、幻覚見せる食べ物なんて出していいのかこれっ!?


「タっちゃーん」


「あっおう、どうしたマコ?」


とかげの唐揚げを食べてオレと同じ様に幻覚を多分だが見ていたマコがやっとそれから覚めたようだ。

なんか目がトローンとしてる。可愛い。


「なんかねぇー、とかげ食べたらねぇー、なんかねぇー」


「うん、どした?」


喋り方がおかしいぞ。目と同じ様に喋り方までトローンとしてやがる。とろけるチーズ並みのとろけ具合。


「んとねぇー、女の人が沢山いてねぇー、それでねぇー、…えへへっ、沢山チューされたぁー」


「「なんだとぉ!?」」


聞き捨てならない言葉がマコの口からトローンと出てきた。もちろんカズと声が被った。


「おれ、とかげ取ってくるっ!!!」


「はやっ!!!」


風のように、いやそれ以上のスピードでファミレスを駆け抜けていくカズ。


「カズっ!!! オレのもよろしくっ!!!」


「任せろっ!!! 100匹くらい捕まえてくるっ!!!」


カズはそう言い残し、ファミレスから光のごとく去っていった。その背中は今までに見たことないほどいきいきとしていた。



「ほんと、アイツの原動力ってどうしようもないな」



カズの消えたファミレスの玄関を見ながらボソッと呟くように言ったオレの言葉に、皆首を「うんうん」と迷わず縦に振ったのは言うまでもない。




  *




「やっぱフラポテうまいわー」


さすがカシクラ先輩。揚げ具合、塩加減、トッピングの自家製ケチャップとマヨネーズ、全てにおいて絶妙、最高ランクのフライドポテト。それをむしゃむしゃと口に次々と放り投げながら一言呟く。


「君たちはいつもあんな感じなのか?」


「……ん? あっ、先生いたんですか」


ファミレスに来てから全く喋ったりしないもんだから、いつの間にか…、というよりとかげの唐揚げに存在を持ってかれて、オレの中で伊藤先生は「無」になっていた。


「失礼だな佐伯。ずっとここにいただろうが」


はいはいサーセン。


「まぁそんなことはどうでもいい」


いいんかい。


「君たち、いつもこんな暇してるなら、うちの水泳部に来ないか?」


「お断ります」


オレは即答した。部活はしないと決めている。それはこの高校に入ったときに決めた。

縛られるのは嫌いだ。オレはオレ。オレが生きてる限り、この時間をどう過ごすかはオレが決める事。部活はごめんだ。


「まぁまぁそう言うな。結構楽しいぞ、プールで泳ぐのは。泳いでる時のあの感じ、いいもんだぞ」


「いや先生、マジでいいですって」


「そーだよせんせぇー、ボクたちは部活しないよぉー」


水泳部顧問だけあって、水泳の話は目を少し光らせてグイグイと来る伊藤先生。それにも動じず、オレは断る。とかげの唐揚げによる幻覚がやっと薄れて、いつもの喋りに戻ったマコもオレに続く。断固拒否。


「仮入部、いや見学だけでもいいから。なっ、どうだ? 青春したくないか? なっなっ」


やべー。全力でめんどくせー。


「なぁ水島、部活は楽しいよな」


「…え? あっはい…、楽しいです、よ」


「ほらな」


ほらなと言われてもな。やらんもんはやらん。

ケータイをずっと見ていた友美ちゃんは一瞬返事が遅れた、からの途切れ途切れの言葉。

友美ちゃんの見ていたケータイの画面には、多分だがテルからのメールが映し出されていると思う。友美ちゃんの顔を見ればわかる。

本来友美ちゃんに直接言えばいい内容なのだが、聞かれては「困るヤツ」が何故か一緒に来たため、メールでの連絡になった。

てか何で友美ちゃんのメルアド知ってるんだよ!!! オレ知らないのに、いつ聞いたんだよ!!??

そのイケメンメガネを見る。ちょうど何かを言おうと口を開いたところのようだ。そして…。


「伊藤先生、めんどくさいです」


おいーっ!!!!!! おまっ、ストレート過ぎるだろーっ!!!!!!! もっとこう、ふわっとさー、曲げることは出来ないのかねー、君はー。


流石に怒るかと思ったが、伊藤先生はあははと笑ってから、「それはすまない」と一言そう言うだけだった。やはり大人か。最近出て来ないどこかの学校の保健の先生はブチギレるだろうけど…。


「それよりも先生、何でここにいるんですか?」


テルが問う。

「何でファミレスにいるんですか?」という感じではなく、「何でこの世界にいるんですか?」と言うような、鋭い問い。

あれは若干怒ってる…のか?


「あぁ今日水島が学校を休んだから、ちょっとお見舞いに行こうと」


友美ちゃんが今日学校を休んだのは知っている。昨日駅まで送っていった時、「明日学校休むかも知れません」と目に涙を溜めてそれを零さまいと唇を噛みしめながら、そう言っていた…。


「それで水島の家に向かう途中、何故か私服姿の水島が歩いていてな」


わざとらしく友美ちゃんを見ながら追い討ちをかけるかのように伊藤先生は言う。その言動がいちいち(かん)に触る。テルが怒るのも無理はない。


「す、すいません…」


「いや大丈夫だ。毎日部活終わった後も残って練習してたんだ。今日ぐらい休みなさい」


「……はぃ」


何なんだよ。今度はやたらと優しい声出しやがって。ほんとにこの人が犯人か、疑いたくなる。癇に触れない。クソやろう、こっちの調子が狂うだろうが。


本当に分からなくなってきた。


本当に伊藤先生が犯人なのか。学校以外の外部の犯行も考え、テルに言ってみたが一蹴された。

去年の夏、クジ高七不思議の調査のため深夜の学校に潜入。潜入したはいいが、その次の日、大騒ぎ。靴を履いたまま廊下や教室を歩き回ったもんだから、学校中4種類の靴の足跡だらけ。

そんなアホな事もあり生徒会と教師達による『学校警備』についての話し合いが行われた。その結果、学校敷地周りに監視カメラ数台、深夜警備員増員とやたらと厳重になった。何で畑の真ん中にあるような田舎学校にそこまでしなくてはいけないのかよくわからないが、つまりは外部からの犯行は無理。


「なるほど、それでそのままここまでついてきたという事ですか?」


「その通りだ東田」


コーヒーを一口含み、そのまま何かを考えるかのようにテルは口を閉じた。そこでテルと先生の会話は終了。そして、誰もしゃべらず沈も――


「友美ちゃんの私服可愛いねぇー」


くを避けるように、マコがすぐさま口を開いた。ちょっと訂正すると、『避けるように』ではなくただ思った事をすぐ口にしただけだろう。沈黙なんて多分だがマコは考えてない。

友美ちゃんの私服は、清潔感漂う白のワンピースにまだちょっと肌寒いためニットガーディガンを羽織り、足元には控えめなヒール。

私服が基本ジーンズにパーカーという『シンプルイズザベスト』を貫く俺にはファッションなんてのは全くわからない。でもそんな俺が見ても、友美ちゃんの私服は確かに可愛いし、めちゃくちゃ似合ってる。なんか柚葉がよく読んでるファッション雑誌に載ってそう。


「あっ本当ですか? ありがとうございます!」


ずっと下を見ていた顔をやっと上げた友美ちゃんは、少し笑っていた。不覚にもドキッとした。やっぱり笑ってたほうがいいな、女の子は。どうやら友美ちゃんはファッションが好きらしい。



「どーんっ!!! タクやーんっ!!! とかげ捕ってきたどーっ!!!」


俺が友美ちゃんの顔に釘付けになっていると、ファミレス玄関からとかげを捕りに行ったアホの声が聞こえてきた。


「マジかカズっ!!! でかしたっ!!!」


そして、その声に瞬時に反応するアホなオレ。

満面の笑みを浮かべスキップしながらこちらに向かってくるカズは、どこかのジャングルまで探しに行ったのかと聞きたくなるぐらい、服には泥や砂が付いていて、所々に葉っぱが乗ってやがる。


「そんで、何匹捕まえてきたんだ?」


「なんとですねー、今回の収穫はですねー、……こちらですっ!!!」


カズの泥と葉っぱのついた右手から、ポンッとテーブルに置かれたのは…。


「……えーっと、…高城数哉さん」


「はい何でしょう? 佐伯拓斗さん」


「こちらは…?」


「えー何タクやん、知らないの? これはとかげの尻尾だよ」


「それぐらいわかるわいっ」


「とかげ捕まえてきた」って言うからめちゃくちゃ期待したのに、カズの手から出てきたのはとかげのあの千切れた後もチョロチョロ動く尻尾。今はもう動いてないが。

なんかもうだいたい想像つくもん。必死に捕まえようとしたけど、尻尾を掴んだら切れちゃったてへぺろ、的な感じだろどうせ。


「タクやんは何が不満なのさー。おれが一生懸命捕まえて来たのにー」


「あーごめん。ありがとなカズ」


全身泥と葉っぱにまみれてまで捕まえてきてくれたのに…。オレは素直にカズにお礼を言った。


「でもねタクやん、尻尾1つしかないから1人しか食べれないよ」


「そうじゃんっ!!! ………。」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「よ、よしっ、誰がこの尻尾を食べるか、ジャンケンしよう」


「いやいやいや、おかしい。なんかおかしいよタクやん。捕ってきたのおれだよ? おれが食べるのが普通じゃないの?」


まぁ確かに。

誰がこのとかげの尻尾を食すのか。本人も言っているように本来なら捕ってきたカズが食べるのが当たり前だ。

しかし…、あのー…、アレだよ。何て言うのかな…、マコの行ったあのハーレムワールドに行きたいじゃんっ!!! ちゅっちゃされたいじゃんっ!!!! エロエロされたいじゃんっ!!!!! だから、カズが捕ってきたとかそんなもんは―――


「知らんっ!!!」


「えーっ!!! おかしいおかしいっ!!! だからタクやんおかしいってぇ!!!」


「オレが食べるーっ!!!」


「じゃあボクも食べるぅーっ!!!」


な、何てことだ。マコまで入ってきやがった。ライバルが一人増。


「…………」


「…………」


「…………」


沈黙が走る。エアコンの風が髪を撫でる。この状況…、早い者勝ちか…。


「…………」


「…………」


「…………」


「先手必勝ぉー!!!」


突然カズがテーブルの真ん中に置かれたとかげの尻尾へ手を伸ばす。

くそっ、反応が遅れた!だが、


「させるかーっ!!!」


オレは瞬時に残り少なくなったフラポテを1つ掴み、尻尾に向かって投げた。フラポテはオレが狙った通り尻尾に当たり、それを弾く。その直後にカズの手が到着。何故か尻尾と入れ替わりで残ったフラポテを掴んで、その手を天高々と上げた。


「よっしょあー!!! 尻尾とったどー!!! ってこれフラポテじゃーんっ!!!」


あっ、アホだ。


「今だっ!」


この一瞬のスキにオレは弾かれた尻尾へ手を伸ばす。が、その尻尾はマコの目の前に流れていた。そして、もうマコの手に…。


「やったぁー!この尻尾ボクが食べるぅー」


くそっ、いや待て落ち着け。冷静に。クールダウン。…あっ、そうだ。


「マコそこにGがいるぞ」


マコの足元を指差す。まぁそこには何も無いんだけどね。確かマコはゴキブリが大嫌いなはず。


「うにゃあぁーっ!!!」


あっ、可愛い。


「よしっ!」


オレの嘘にびっくりしたマコは可愛らしい声を上げながら尻尾をひょいっと空中に投げ捨て、隣にいたテルに抱きついた。やっぱりゴキブリ嫌いだったか。にやり。と言いつつ、オレもゴキブリは大嫌いだったりする。

マコに投げ捨てられたことによって、またしても宙を舞う尻尾。今度はその尻尾はファミレスの玄関付近にまで飛んでいった。

オレがすぐに玄関まで走り始める、と同時にカズも走り始める。この勝負…、スピードの早い方が勝つ!!!

他のお客さんのオレ達2人の本気の走りにびっくりする顔を拝めながら走る走る。後ろから「こらっ店内を走るな!」という先生の声が背中に当たるがそんなもん知らん。走る走る。

よしっ、オレの方が早い!オレの勝ちだー!!! …と思った直後、オレは急ブレーキをした。


「いてっ」


後ろを走っていたカズがオレの背中に当たる。短い声がカズの口から出てきた。


「んだよタクやん、いきなり止まるなよなー。尻尾おれが食べちゃうぞ」


「待てっ、動くなカズ!」


オレを追い越し、尻尾に向かおうとしたカズを止める。今動くのはマズい…。


「何タクやん、そんなに尻尾食べたいの? じゃあ今日は譲…」


カズが言葉の途中で黙る。やっと気づいたか。


「なるほどタクやん…」


「気づいたかカズ…」


「さぁどうしよう?」


「この場面で最強の敵が来てしまったか」


オレ達2人の目の前には…、尻尾を口に加えた猫が一匹、威風堂々とお座りをしてこちらを見ていた…。

この猫は店長が家で飼っている愛猫で、仕事の時は連れてきてファミレスに放し飼いしているのだ。仕事場で…、増してや飲食店で放し飼いとはどういうことやねんと思うだろうが、この猫ほんとにいい子で、お客さんの料理とかキッチンの物は全く食べないし、むしろこの店の看板猫として九志羅町では有名な話である。しかし、何故かこの猫、オレ達4人を嫌っている。さっきは普通にフラポテ食べていたが、この猫がいるとゆったりと食べてられない。ちょっと目を離すといつの間にかテーブルに上り、食い散らかして行くのだ。他のお客さんのやつは食べないのに…。会計の時も気は抜けない。お札を出して店員さんに渡そうとすると、シュッと風のように走り去りお札を持って行ってしまうのだ。そして、オレ達の手が届かないところに登り、むしゃむしゃそれを見下すように食べるのだ…。まぁとりあえずこの猫が来たということは、今最大のピンチにある。ちなみに猫の名前はアッシュ。


「カズ、とりあえず休戦だ。今はヤツから尻尾を取り返すのが先だ」


「りょーかいしたタクやん」


「よし、逃げないように少しずつ前に進もう」


「りょーかいした沢庵」


「……あれ? 今カズ沢庵って言った?」


「……イッテナイヨ」


「いや言っただろ!た・く・あ・ん、ってはっきり聞こえたぞ!」


「……イ、イッテナイヨ」


「てめぇオレが一番言われたくないこと言いやがったなー!」


オレはカチンときてカズの胸倉を掴んだ。それにびっくりして、アッシュがさささっと逃げていってしまった…。


「「あ、あぁー…」」


「タクやんのせいだぞ!」


「はぁ!カズのせいだろうが!」


「よし、とりあえずアッシュを追いかけよう!」


「わかった!って話逸らすなよなカズ!」


とか文句を言いながらも、アッシュを追いかけるオレ。今はアッシュが先だ。しかし一足遅かった…。オレ達の手の届かない所へすでに登られていたのだ。上からオレ達を見下すアッシュ。ムカつくこの猫!


「くそっ、ここまでか!」


「諦めるのはまだ早いよタクあ…やん!」


「カズお前はオレを本気怒らせたいのか? …まぁいいや、何か作戦あんのか?」


オレがそう聞くと、カズは「ちょっと待ってて」と言って、キッチンの中に入っていった。っておいカズ!お前店員でもないのに普通に入っていくなよ!

戻ってきたカズはあるものを持ってきた。…うん、…なんか、…うん。


「テテテテッテテー、きゃ」


「脚立だろ?」


「ちょいタクやん!最後まで言わせてよ!ドラ○もんの声マネやろうとしたのに~」


「脚立」と言おうとしたカズに割って入った。うん、お決まりかなと思って。てか絶対その脚立、この店のやつだろおい! 持ってきていいのか? あっキッチンの方見たらカシクラ先輩グーサインしてたー。


「いちいちうるさいわい。お前そんなもんであのモンスターが捕まえられると思うか?」


「じゃあタクやんなんか良い作戦あんのかよー?」


「よし、その作戦で行こう!」


人は柔軟性のある考えを持って、生きていかなければならないのだ。と、近所のおばちゃんが言ってた気がすると思ったけどやっぱ言ってないや。


「じゃあ脚立かけるよー」


「カズ静かにだぞっ、アッシュが逃げるからな。よし、静かにーそーっともうちょっと右…左…あー右右…ひだっ右右、よしよしそこ!オーケー脚立設置完了!」


「タクやんうるさい」


「ごめんごめん(笑)」


さっきの仕返しにちょっとうるさくしてみたが、流石にうるさすぎたか。まぁとりあえず脚立オーケー。


「よしタクやん、おれ行ってくるよ」


「おう、任せた」


「任された!」


少しずつ一段ずつ脚立を登っていくカズ。アッシュも登ってくるカズを上から相変わらず見下した目で見ている。

静かにー…。ちょっとでも音たてたらアッシュが尻尾食べちまう。


「もう少し…」


もう少しで一番上だ。届く。今まで届かなかったアッシュの領域へ今…、カズの手が…。


「はっっっくしょんっ!!!」


ぱくっ。


「にゃあ」


「「あっ」」


お決まりのカズのくちゃみで、見事アッシュに尻尾を食べられてしまった。

じゃあ皆でお決まりの言葉を言おう!せーの!



「「あー!!! 尻尾がー!!!」」



オレとカズの悲鳴が店内に響く…。むなしく響く…。




  *




「君たち店内ではもっと静かにしなさい!」


「「へーい…」」


なんか先生の声が聞こえる。めんどくさいのでとりあえず適当に返事しといた。

あー尻尾が…。あんなに頑張ったのに…。もうダメHPゼロ。やる気ゼロ。何もかもゼーロー。


「でもなんか、面白かったですよ」


ん?なんだ?天使の声が聞こえるぞ…。


「漫才みてるみたいで、いつの間にか笑ってました」


そう言って友美ちゃんはニコッと今日一番の笑顔を見せる。

うぉー友美エンジェル!友美エンジェル万歳!


「いやぁーそれほどでもあるよ~」


「カズテレるなテレるな、……やっぱそれほどでもあるかな~」


「タっちゃんもテレちゃってるじゃーん!」


「あははは、やっぱり面白いです」


そう笑う友美ちゃんの笑顔はすごく、えーっとなんていうか、綺麗だ。単純に惹かれる。ぐいぐいと。

風間を見るともう友美ちゃんの笑顔に見入っている。もうまばたきもせずにずーっと見てる。乾燥するぞ乾燥。あー若干充血し始めてるじゃんか。


「それじゃあ水島も元気そうだし、私はここで御暇(おいとま)するかな。部活に戻らなければならないもんでね」


そう言って先生は立ち上がり、一つ伸びをした。そして、立ったまま続けて話始めた。


「ファミレスにたむろするのはいいが、勉強しろよ。特に佐伯と高城はな。中間テストちょっと難しいからなー」


「「うげー…」」


先生はそう言い残し、ファミレスの玄関へ向かう。が――


「先生、ちょっと待ってください」


さっきまでコーヒー飲みながらずーっと読書していたテルが、ついに本を閉じ、そして先生を呼び止めた。


「ん? どうした東田?」


「部活って楽しいですか?」


「あー楽しいぞ!特に水泳はハマるぞー。あのプールに飛び込んだ時のあの感覚最高だぞ!身体を鍛えるのにプールは最高の場所…」


テルがそんな事聞くからまた先生話始めちゃったよ。あーめんどくさい。

しかし、次のテルの一言でさらにめんどくさいことになる…。


「じゃあ先生、見学します」


「…は? テル何言って……」


「よし、水泳部見学するぞ」


「いやいやテルやん……」


「先生、俺達4人とこの一年生見学します」


「テっちゃんちょっと……」


「よし、そうと決まればプール行くぞ」


いやいやちょっと待て、聞き違いか?これは新手の聞き違いなのか?まさか見学なんて…。オレはもう一度テルに聞くことにした。


「テル、今なんて?」


「だから、水泳部、見学するぞ」




「「「…け、見学ぅー!!??」」」




店内にまたしてもオレ達の悲鳴が響き渡った。





読んでいただきありがとうございます。どうだったでしょうか?

いやー安定のぐだぐださ(笑)

もうさすがに解決しないとな。

話書いてると小ネタというかギャグを入れたくなるんですよ。むしろいつの間にか入れてます。


そんなこんなで今回こーなりました。

事件については全く話進んでないです。その代わり皆が好きな猫をキャラとして出しました。名前はアッシュです。私の好きなバンドの曲名からいただきました。ちなみにわかる人いるのかな?


次回解決します!

むしろさせます!!


それではまた次回会いましょう。



ではー




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