第7話 向上
千年前は存在しなかった、起姿解醒の第二段階。
いままで農業の勉強ばかりしていたせいで、知らなかった。
これは常識なのだろうか?
しかし、そもそも現代では起姿解醒自体がそれほど知られていない可能性だってある。そのなかでの第二段階などというのは‥‥‥。
「チィ!!」
起姿解醒「ブラッドルーツ」第二段階
──使用──
白い煙のようなものがあふれ出した。それは大量の半透明のノミである。このノミに触れれば血を操られてしまう。
しかし、第二段階になったこのノミは何かが違う。
「きづいたか。魔力の動きにも反応するんだ。起姿解醒、やってみて。頭がバーンだぜ」
「そんな力があるならなぜ最初から使わなんだ‥‥‥」
「使うほどの相手だって思ってなかったもの。まさか初代魔王様を殺してもいいなんてこと、あるんなんて思わなかった」
「‥‥‥‥‥‥」
こんな能力、バンガの頃だったら──つまり、前世だったら、なんてことはなかった。
ビムガが右手をひらひら揺らしながら笑った。
その右手には術陣と呼ばれる幾何学模様が刻まれている。
模様がかわってる。変わってるか?
たぶん変わってる。なんか変わってる気がする。
変わってるってことでいいや。
「そりゃあ千年も経ってりゃそうなるか‥‥‥」
これからどうするか、と考える。
塔の中にはもう魔族もいないだろうことはわかった。魔族は長にひっついて回るから。それも良しとしてケイムの前に出たのだろう、とわかってみる。
これからどうしてみる?
自分の命に関わるのはまぁいいとして、帰りでフレイに迷惑をかけるのはあまりうれしくない。アウィには恩がある。仇で返すのは好きではない。人間全員そうかもしれないけれど。
魔法を使ってもダメ、動いてもダメ。
どのくらい血をなくしてしまったのか、がわからない。
先ほど作られたあの剣にどのくらい使われたのか?
いまのところ若干不調かもしれないというくらいだけれど、あんまり安っぽい動きはできない。
「待つか」
「なにを?」
「助け」
ビムガが笑う。
「魔王バンガがおたすけを求めました!」
「求めたけど‥‥‥?」
「おもしろい!」
「言うほど面白いか‥‥‥?」
脳内で物質が分泌されて、ハイになってるのだろう。
それにしても第二段階‥‥‥いやな要素である。
魔術の進化が「強くなるだけ」なのはあまり好きではない。ケイムの中のの魔王バンガとしての意識がそう思わせてるのだろう。
いってしまえば、前世のケイムは魔術の頂点。
それなりにプライドを持って魔術を使っていたような気がする。
あまり記憶が定かでないのは、肉体がケイムであるからだろうか。
魂自体が「ケイム・アガルシー」でも「魔王バンガ」でもなく、「ケイム・アガルシーとして生まれかわった魔王バンガ」であるために、いろいろとめんどうくさいことになってしまっている。
ため息が出る。




