第21話 今生
魔術と魔術ぶつかり合いだった。
その下では、魔王同士が殴り合っている。魔力が飛び散った火花が振り注ぐ戦場で、ボンガが吹き飛んだ。腕を巻き込み、血しぶきを上げながら。バンガは呼吸を正しながら、白い神皮を目で追った。どうやら「身体強化」あたりを使っているのだろう、先ほどより動きが早い。
バンガに一瞬生まれた死角から剣が飛び出した。
バンガは身をよじりそれを回避すると、剣身を殴り折って掴むと、ボンガの頭部に突き刺した。ボンガはギッと短く悲鳴をあげながら、頭突きをして、バンガの頭部に剣身の端を突き刺した。
頭部から血を垂れ流しにしながら蹴り飛ばす。
「ウゥ、ウゥ」
「俺の過ちだ。愛するべきだった。あんな世界でも、人が生きているということの意味を理解するべきだった。俺にはそれができなかった。情緒が幼かった。だから君を生み出してしまった。俺のたった一つの願いは、どうか人を愛してくれますように、と‥‥‥君に言うべきだった」
「ハァ、ハァ‥‥‥人間を、ハァ、愛せと‥‥‥!? 力もないくせに‥‥‥ハァ、ウウッ‥‥‥悪の心に支配されてェ‥‥‥泣きじゃくるしかのうのないあんな弱いものを愛せと!?」
「弱いから手をつなぎ合うんだ。手を繋ぎ合えるから尊いんだ」
「理解不能だね。‥‥‥なんで、その口からその言葉が出せるの」
ボンガは魔物を召喚してみせた。バンガはまったく同じ魔物を召喚し、対消滅させる。近づいていき、殴る。
ボンガの白い口部分のシャッターが赤く染まる。
ゆっくりと、ゆっくりと死が近づいてくる。
バンガは終わらせなければならないと思っていた。やってはならないことをした親に倣ってやってはならないことをした子供を終わらせなければならない。必死で生きたろうに。
ただひとつ、まちがえたばかりに。間違いは、バンガの下に生まれたこと。はっきりいってバンガってクズだからボンガも被害者っちゃ被害者だよ。
「君は俺には勝てない。だって俺は強すぎるんだから」
「じゃあ僕、勝てないじゃん」
「ああ、勝てない」
「どうすりゃいいんだよ‥‥‥」
「ごめん、死んでくれ」
「ふざけんなよカス。‥‥‥ああ死ぬね。でもただでは死なないね。世界を作り直しちゃう。あんたにとって『生きる』が『この世界で』なら、この世界ごと否定しちゃうんだよ。わかる?」
「こめん、わからない」
「あんたは今生の記憶を持ったまま一からやり直していただきます。ごめんだけど、二度と正気ではいられません。アハン、ごめんなさい。一矢報います。ちなみにこの魔術は発動までに十分かかるんです。で、事前に発動させているので‥‥‥そろそろ発動します」
「そうか。がんばったな」




