第19話 合流
「‥‥‥はい‥‥‥」
声がした。
キツキはそのほうを向いて、ケイムが立ち上がったのを確認する。
頭は完全に潰されていたはずなのに、なおっている。
「霊体から戻ったので肉体も巻き戻ったか」
化け物が言う。
「あの世で母と何を話したか」
「生きろと言われたよ」
「そうか」
起姿解醒「光業」
──使用──
その瞬間、拳が飛んだ。錬金術で複製された拳である。その拳は霊体をとらえる。それは何故か。治癒魔術である。太古の昔、治癒魔術がうまれたのは不死性を持った魔物を殺すためである。不死性を持った魔物──つまりアンデッドのなかには霊体のものもいた。それを討ち滅ぼすための治癒魔術。ケイムはそれを躱し、黒い神皮を纏った拳を化け物の顔面に食らわせる。
「ズルいことをしようと思う。おまえを取り込んで、俺はバンガに戻る。親の責任を果たす。生きる。生きる。俺は一生苦しんで、一生みじめに生きていく。お前の分まで死ぬまで生きる」
混じり気のない青の瞳。
「そうか」
拳から流れた反転された治癒魔法で、その化け物は崩壊した。
そこに残った骨の破片をつかみ上げると、すべて飲み込んだ。
体内で情報が消化されていく。魔力回路が開いていき、魔術が変化する。魔王術になった。
「じゃあ、行こう」
ところかわって、ハレイ領。到着したフレイは白い神皮の魔王を見つけると、「漁火光柱」を発動させ、光の柱で貫こうとするも、防御結界が守っているらしく、光柱は粒子になって霧散した。
「現代勇者! いいね、魔王と勇者が揃っちゃった感じだ。ならあとはただひたすら戦争だね。僕もバンガ様にならって魔族を作ってみたんだ。現代で大暴れしちゃってる魔族は全員僕の作ったものなんだけれど、君たちは倒せるかな?」
フレイは少女を見る。同年代か少し下だが、戦闘要員ではないらしい。そもそも戦わせる訳にはいかない。
遠方に派遣していた魔族も全てここに集められたらしく、満員電車のようなギュウギュウ感に「限度ってもんがあるでしょ」と舌打ちをつきつつ剣を抜いて斬り裂いた。
火球がとんで、フレイを襲う。魔族を蹴り上げ盾にしながら背後から飛び掛ってきたものを斬り付ける。
ボンガはそれを眺めながら、「あらあら」と笑みを浮かべていた。
「先代勇者であればこのくらいの魔族一秒ですべて狩り尽くしていたよ。んね! お嬢さん」
「‥‥‥‥‥‥」
生かされている。
シミュは、ボンガが魔族の意識を操ってプレイの方に向かっていくように仕向けていることを細目で分析しつつ、フレイを見た。
剣の振りが甘い。妙に技ぶってないで、もっと叩きつけるように斬り付けてもいいのに。自分なら、自分なら‥‥‥。
「いいね、そのお顔。あっでも、もう飽きたから殺すね」
「来たよ」
「来た?」
「来た」
「何が?」
「おたすけ」
地面から二本の腕が突き出し、土をかき分けるように押し広がった。そこから現れたのは、無論ケイムである。どうやらドラムから穴を掘って直線で突撃してきたらしい。
「道中ダイヤモンドの原石たくさんあったから拾ってきちゃった。それで遅れた。ごめんちゃい」
「ふざけんなよお前」
「すいません、すいません。いまちょっと頭パッパラパーになってて。一瞬良くなったんですけどまた大バカタレになっちゃって」
騒ぎを聞きつけた魔王討伐隊と元軍人ということで義足をつけたケイムの父スクイエもやってきた。スクイエは「ケイム!?」と驚きながら、突き上げる拳のうえに立つ息子を見上げた。
「勇者の遺骨を持ってこようとも思ったけれど、やめたんだ」
「どうして?」
「アウィ、君をこれ以上戦わせたくない。君は逃げてもいい」
「あの子はどうなるの。私たちの時より若くて弱いよ」
「俺たちは、悪い大人だ」




